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第二十三話 全国デビュー
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俺はダッシュで個室から飛び出した。
ここはユガミが生み出した世界だが化粧室を模倣もしている。ならあるはずと探せば、外に出る為の窓があった。あのガラスを叩き割って外に出たら、現実世界の外に出られるのだろうか、試してみたいが今は後回し。
更に首を回せば清掃道具をしまっておく用具室があった。直ぐさま用具室に入ると、あるある道具が揃っている。中途半端じゃ無い模倣に感謝した。
蛇口には清掃用のホースが取り付けられており、ホースの先にはノズルがちゃんと付いている。棚には洗剤が置かれ、壁にはモップやらバキュームやら立てかけてある。
俺は蛇口を全開に開けるとホースの先とモップを持って時雨さんの元へ走って、個室に飛び込むと時雨さんは目を見開いて驚いた顔を俺に向けてくれた。俺が時雨さんを見捨てたと思っていたな。その考えにちょっと意趣返しを込めて、俺は時雨さんの太股と太股の間にホースを持ったままツッコンだ。
「きゃあ、何するのさっ」
時雨さんは顔を真っ赤にして怒ってくる。いいね、諦められるより怒られた方がいい。
俺はホースの栓を開き便器の中に大量の水を流し込む。トイレを詰まらせるなんて簡単なこと、流せる以上に流し込めばいい。
「恥ずかしがっている暇があったら太股を絞めてホースが抜けないようにしろっ」
俺は手を離して時雨さんの股間から手を引き抜くと、そのまま時雨さんの手を取って引っ張る。更に残った片手で持っていたモップをガンガン便器に叩きつけた。
たかが陶器、衝撃には弱いはず。
「戻ってきてくれたんだね」
「何を意外そうに言っている。俺が時雨を見捨てるわけないだろ」
「なんで、そんなこと言い切れるのさ」
時雨さんは理解できないとばかりにしんそく不思議そうな顔を俺に向けた。
「だって俺は時雨の彼氏だぜ」
嫌な奴になって、卑怯な手を使って。
心が俺に向いてなかろうと。
彼女になってくれたのなら。
彼氏になったのなら。
全力で守る。守ってみせる。
「君は馬鹿なんだね」
時雨さんはそれはそれは可愛く笑ってくれた。
それだけで世界が彩られ俺の力は溢れる。
「おらおらおおらおらおあおあろああおおらーーーーーーーーーーーーーーーー」
バッキンとモップの柄が折れた。
だからどうした、舐めるな便器。
「くたばれや」
俺は便器にヤクザキックを叩き込んでやった。
ゴキッと根元から何か鈍い音がして、一瞬だが時雨さんを加える力が弱まった。
このチャンス、この一瞬、逃してたまるか。
俺は時雨さんを、力の限り引っ張った。
ごぼっ。
と何か逆流する音がして、時雨さんは便器からすっぽ抜けた。その勢いのままに床に背中を打ってしまったが、時雨さんは俺の胸の中何処も打ってない、ならば良し。多少呼吸をすると胸が軋むがここは我慢のしどころ最後の見せ場。俺は時雨さんを抱え立ち上がった。そして時雨さんを残して一歩後ろに下がった。その際にチラッとだが白く柔らかそうに引き締まっている双丘が目に入ってしまった。
「変態」
時雨さんは俺の視線を感じることが出来るのか、ぽつりと言う。慌てて視線を上げて俺は言う。
「よし。時雨、後はお前の仕事だ旋律を奏でろ」
色々あったが、また時雨さんお美しい旋律の舞いが見れる代償と思えば安いものだ。
「ご免」
何か前を向いたままの時雨さんから蚊の消えるような声が聞こえた。
「へっ?」
「旋律具が無い」
「はい?」
「しょうがないじゃない。今日は仕事で来たわけじゃ無いんだから。家において来ちゃったのっ」
まあ、そうだよな。音叉は兎も角、小太刀なんか女子校生が普通持って歩かないよな。警察に捕まる。
「だったら、俺に任せろ」
逆に考えろ、今日は時雨さんに俺の有用性をアピールできるチャンスデイ。好きになって貰えないとしても、側に置いておけば役には立つ奴と最低でも思われたい。
「えっどうする気?」
俺は直ぐさま用具室に駆け込み、そこに置いてあった洗剤やら雑巾やらを両手一杯に抱えた。そして、直ぐさま便器に向かっていく。
便器は今のところ手足が生えて動き出したりはしていない。完全な待ちトラップで、便器に座らなければ何も出来ないのかもしれない。このまま助けが来るのを待つのが一番手堅いのかもしれないが、それじゃアピール出来ないし何より俺の腹の虫が治まらない。
よくもあの美しい時雨さんを最も汚らしく惨めに殺そうとしたな。俺じゃ倒せないかも知れないが、一矢報いてやらないとこれから彼氏と胸を張って名乗れない。
相手は怪異でも便器であることには変わらない。だったら便器が嫌がることを力の限りしてやるぜ。
俺は洗剤の容器や雑巾をどぼどぼ便器の中に放り込んでやった。そしてラバーカップでぐいぐい押し込んでやる。
ごぽっ。
何やら配管から逆流する音が響く。
効いてる効いてる。もっとやれ。もっとしてやる。
更にぐいぐい押し込んでやる。
「ねえ、何か辞めた方がいいじゃない」
時雨さんが心配そうに止めてくるが、何かこっちは時雨さんの敵討ちとばかりにハイになっていて構うもんかとどんどんぐいぐい押し込んでやる。
ごぽごぽおぽぽぽぽぽぽおぽ。
逆流する音と共に空間が歪んだ。
「なっなんだ」
「だから言ったのに~」
「ちっ」
俺は何があっても時雨さんから離れまいと抱きついた。
「ちょっと」
時雨さんが顔を赤くして抗議する声と共に、ひときわ大きく空間が軋んだ。
目眩を振り払って目を開ければ其処はさっきの化粧室。周りを女性達に囲まれ、俺は下半身を丸出しにした時雨さんに抱きついている。
「きゃあーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「変態よ、変態。さっきの変態よ」
「見て、少女が悪戯されているわ」
まずい、これは言い訳のしようが無い。
俺に疚しいことなど無い。しかしこの状況、捕まれば、状況で有罪となる。どんなに真実を説明しても関係ない、状況で決まる。そうでなければ痴漢冤罪など起きない。
「時雨さん、後は任せた」
三十六計逃げるにしかず。どうにもならないときは逃げるしか無い。
俺は二階の化粧室の窓から逃亡した。
二階の窓から外に出て、雨樋やら庇やら利用して地上に無事降りて、そこからはただ走るのみ。走っては知り抜いて、足が付くのを恐れて電車すら利用しないでアパートに帰ってきたとには、全身汗でぐっしょりだった。
シャワーを浴びて一息ついてテレビを見れば、昼間のことがニュースになっていた。
「全国デビューだな」
不名誉極まりない全国デビューを果たして、もう何も考えたくないと不貞寝した。
後日、トイレの怪異は時雨さんが準備万全で挑んで退治したそうだ。
ここはユガミが生み出した世界だが化粧室を模倣もしている。ならあるはずと探せば、外に出る為の窓があった。あのガラスを叩き割って外に出たら、現実世界の外に出られるのだろうか、試してみたいが今は後回し。
更に首を回せば清掃道具をしまっておく用具室があった。直ぐさま用具室に入ると、あるある道具が揃っている。中途半端じゃ無い模倣に感謝した。
蛇口には清掃用のホースが取り付けられており、ホースの先にはノズルがちゃんと付いている。棚には洗剤が置かれ、壁にはモップやらバキュームやら立てかけてある。
俺は蛇口を全開に開けるとホースの先とモップを持って時雨さんの元へ走って、個室に飛び込むと時雨さんは目を見開いて驚いた顔を俺に向けてくれた。俺が時雨さんを見捨てたと思っていたな。その考えにちょっと意趣返しを込めて、俺は時雨さんの太股と太股の間にホースを持ったままツッコンだ。
「きゃあ、何するのさっ」
時雨さんは顔を真っ赤にして怒ってくる。いいね、諦められるより怒られた方がいい。
俺はホースの栓を開き便器の中に大量の水を流し込む。トイレを詰まらせるなんて簡単なこと、流せる以上に流し込めばいい。
「恥ずかしがっている暇があったら太股を絞めてホースが抜けないようにしろっ」
俺は手を離して時雨さんの股間から手を引き抜くと、そのまま時雨さんの手を取って引っ張る。更に残った片手で持っていたモップをガンガン便器に叩きつけた。
たかが陶器、衝撃には弱いはず。
「戻ってきてくれたんだね」
「何を意外そうに言っている。俺が時雨を見捨てるわけないだろ」
「なんで、そんなこと言い切れるのさ」
時雨さんは理解できないとばかりにしんそく不思議そうな顔を俺に向けた。
「だって俺は時雨の彼氏だぜ」
嫌な奴になって、卑怯な手を使って。
心が俺に向いてなかろうと。
彼女になってくれたのなら。
彼氏になったのなら。
全力で守る。守ってみせる。
「君は馬鹿なんだね」
時雨さんはそれはそれは可愛く笑ってくれた。
それだけで世界が彩られ俺の力は溢れる。
「おらおらおおらおらおあおあろああおおらーーーーーーーーーーーーーーーー」
バッキンとモップの柄が折れた。
だからどうした、舐めるな便器。
「くたばれや」
俺は便器にヤクザキックを叩き込んでやった。
ゴキッと根元から何か鈍い音がして、一瞬だが時雨さんを加える力が弱まった。
このチャンス、この一瞬、逃してたまるか。
俺は時雨さんを、力の限り引っ張った。
ごぼっ。
と何か逆流する音がして、時雨さんは便器からすっぽ抜けた。その勢いのままに床に背中を打ってしまったが、時雨さんは俺の胸の中何処も打ってない、ならば良し。多少呼吸をすると胸が軋むがここは我慢のしどころ最後の見せ場。俺は時雨さんを抱え立ち上がった。そして時雨さんを残して一歩後ろに下がった。その際にチラッとだが白く柔らかそうに引き締まっている双丘が目に入ってしまった。
「変態」
時雨さんは俺の視線を感じることが出来るのか、ぽつりと言う。慌てて視線を上げて俺は言う。
「よし。時雨、後はお前の仕事だ旋律を奏でろ」
色々あったが、また時雨さんお美しい旋律の舞いが見れる代償と思えば安いものだ。
「ご免」
何か前を向いたままの時雨さんから蚊の消えるような声が聞こえた。
「へっ?」
「旋律具が無い」
「はい?」
「しょうがないじゃない。今日は仕事で来たわけじゃ無いんだから。家において来ちゃったのっ」
まあ、そうだよな。音叉は兎も角、小太刀なんか女子校生が普通持って歩かないよな。警察に捕まる。
「だったら、俺に任せろ」
逆に考えろ、今日は時雨さんに俺の有用性をアピールできるチャンスデイ。好きになって貰えないとしても、側に置いておけば役には立つ奴と最低でも思われたい。
「えっどうする気?」
俺は直ぐさま用具室に駆け込み、そこに置いてあった洗剤やら雑巾やらを両手一杯に抱えた。そして、直ぐさま便器に向かっていく。
便器は今のところ手足が生えて動き出したりはしていない。完全な待ちトラップで、便器に座らなければ何も出来ないのかもしれない。このまま助けが来るのを待つのが一番手堅いのかもしれないが、それじゃアピール出来ないし何より俺の腹の虫が治まらない。
よくもあの美しい時雨さんを最も汚らしく惨めに殺そうとしたな。俺じゃ倒せないかも知れないが、一矢報いてやらないとこれから彼氏と胸を張って名乗れない。
相手は怪異でも便器であることには変わらない。だったら便器が嫌がることを力の限りしてやるぜ。
俺は洗剤の容器や雑巾をどぼどぼ便器の中に放り込んでやった。そしてラバーカップでぐいぐい押し込んでやる。
ごぽっ。
何やら配管から逆流する音が響く。
効いてる効いてる。もっとやれ。もっとしてやる。
更にぐいぐい押し込んでやる。
「ねえ、何か辞めた方がいいじゃない」
時雨さんが心配そうに止めてくるが、何かこっちは時雨さんの敵討ちとばかりにハイになっていて構うもんかとどんどんぐいぐい押し込んでやる。
ごぽごぽおぽぽぽぽぽぽおぽ。
逆流する音と共に空間が歪んだ。
「なっなんだ」
「だから言ったのに~」
「ちっ」
俺は何があっても時雨さんから離れまいと抱きついた。
「ちょっと」
時雨さんが顔を赤くして抗議する声と共に、ひときわ大きく空間が軋んだ。
目眩を振り払って目を開ければ其処はさっきの化粧室。周りを女性達に囲まれ、俺は下半身を丸出しにした時雨さんに抱きついている。
「きゃあーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「変態よ、変態。さっきの変態よ」
「見て、少女が悪戯されているわ」
まずい、これは言い訳のしようが無い。
俺に疚しいことなど無い。しかしこの状況、捕まれば、状況で有罪となる。どんなに真実を説明しても関係ない、状況で決まる。そうでなければ痴漢冤罪など起きない。
「時雨さん、後は任せた」
三十六計逃げるにしかず。どうにもならないときは逃げるしか無い。
俺は二階の化粧室の窓から逃亡した。
二階の窓から外に出て、雨樋やら庇やら利用して地上に無事降りて、そこからはただ走るのみ。走っては知り抜いて、足が付くのを恐れて電車すら利用しないでアパートに帰ってきたとには、全身汗でぐっしょりだった。
シャワーを浴びて一息ついてテレビを見れば、昼間のことがニュースになっていた。
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