俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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第二十九話 身嗜み

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 話が終わり直ぐさま現場に向かうという砂府さん達を見送るべく俺達はアパートの廊下に立っている。
「大丈夫だとは思うが、何かあったら直ぐに連絡しろよ」
 砂府さんはくどいくらいに時雨さんに念を押していく。
「はい。でもボクだって一応リードとはいえ旋律士ですよ」
 時雨さんは自信満々の顔で言う。
「いたっ」
「ひよっこが生意気言うな。全くそれが心配なんだよ」
 砂府さんは時雨さんのおでこにデコピンをし、時雨さんは涙目で睨み返す。
 何か兄妹のじゃれ合いを見せられたようで、この二人思った以上に仲がいいんだな。
 ちらっと鵡見さんを見るが、彼女も微笑ましいものを見るような目をしている。別に嫉妬している様子は無いところを見ると、本当に兄妹のように仲が良く、男女の関係は無しと思っていいようだ。
ふうっ、前埜だけでも大変なのにこれ以上ライバルが増えなく良かった。それでも好感度ランキングで三位以下は確定したわけで、喜べないけどな。
「おい、果無」
「何か」
 何となく流されて見送りに来た俺に声が掛かるとは思わなかった。
「お前はなんか陰気くさくて胡散臭い野郎だが」
 ムカッ、余計なお世話だ。こっちこそ、お前みたいなズカズカ人に遠慮しない人が生理的に嫌いだよ。それでも表には出さない、長年染みこませたいい人の仮面が笑顔を保たせる。
「意外といいストッパーになるかもな。時雨の手綱をしっかり握れよ」
 砂府は俺の肩を力強く叩く。
「まっ直ぐに解決してやるから気楽にしていろ」
「それじゃ失礼しますね」
 砂府達は去って行き、俺と大友さん時雨さんの三人が残される。
 大分時間を食ったな。遅れを取り戻さないと講義に遅れてしまう。護衛も大事かも知れないが俺にとっては講義も大事。俺みたいな奴は、成績学歴といった武装が無くては社会で生きていけない。全く面白可笑しく生きて、それでも俺よりいい人生が送れる奴らが羨ましいぜ。
「時雨」
「何?」
「時雨はどうするんだ? 一旦学校に行くのか?」
「ううん、このまま護衛に付くつもりだけど」
「その格好でか?」
「何かおかしい?」
「大学にその格好で行ったらおかしいだろ」
 時雨さんの格好はどう見ても高校指定の制服、こんな女子高校生だと主張する格好、大学ではマニアックすぎる。
「大丈夫だよ。この格好だと大抵の場所で怪しまれないで済むんだ」
 どうしてそこまで自信満々で胸を張れるんだ? 
 常識的に制服より地味な私服の方が目立たないだろ。ただ単に怪しい女子高生をみんな敬遠して遠巻きにしていただけじゃ無いのか? 
 もしかして怪しい女子高生の噂を前埜が揉み消しているとか?
「そうか?」
「何っボクの服装に文句があるの。それなら言わせて貰うけど、無精髭」
 時雨さんが可愛い指で俺の顎を指差した。
「うっ」
「寝癖」
 今度は頭を指差す。
「うっ」
 無精髭に気を取られていたが確かに起きてから髪を整えてないな。
「もう、最低限身嗜みは整えてよね。さっきだって、砂府さん達の前で恥ずかしかったんだから。これじゃ一緒に歩けないよ」
「これはしょうが無いんだ。急に・・・」
「言い訳しない」
 ピシャッと言われた。
「分かった。俺は一旦家に帰るから大学で再合流しよう」
 朝飯を抜けば何とか間に合うだろ。
「そんな暇無い。ここで整える」
「いや、髭剃りもないし」
「大友さん」
 時雨さんは大友さんに呼びかける。
「何ですか?」
「最寄りのコンビニはどこ?」
 俺はこの後パシリの如くダッシュでコンビニに行かされ、髭剃りを買うのであった。
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