俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
45 / 328

第四十五話 人の本質

しおりを挟む
「さてと、貴方達とおしゃべりしている暇は無いわね」
 言った瞬間スキンコレクターは反転すると部屋の俺達がいる側と反対にある扉に向かって走り出した。
「逃がすか」
 ここで逃走!? 俺は慌ててスキンコレクターの後を追い出す。
「素人の深追いは危険よ」
「ここで彼奴を逃がすほうが危険だっ」
 俺は野牛の制止を振り切りスキンコレクターの後を追った。
 功名心に狩られたわけじゃ無い。純粋に恐怖からだ。
 彼奴は自由に外見を変えることが出来る。その上僅かながらの間とは言え時雨さん達を騙し通したんだ、演技力もあるのだろう。
 そんな奴をここで見失ったらどうなる? 
 俺は外で会う人間全てを疑い、騙し討ちに怯えて暮らすことになる。
 俺はまだいい。どうせ今も似たような生活だ。だが彼奴の狙いは時雨さんだ。あの美しい肌を諦めるわけが無い。きっと今回同様時雨さんの周りの人間から攻めてくる。
 時雨さんなら騙し討ちを躱せるかもしれないが、それは時雨さんの心を痛めつける。
 そんなことが繰り返されたら、時雨さんの美しい心も俺のように壊れてしまう。
 そんなことはさせない。
 差し違えても彼奴を倒す。
 それが釣り合わない俺が時雨さんと付き合う為の義務である。

 部屋の外に出ると一直線に続く廊下が延びていた。その伸びる先に逃げるスキンコレクターの背中が見えた。
 奴はそのまま廊下の先にある扉を開けて奥に入っていった。
 迂闊に続きたくは無いが、躊躇する猶予は無い。彼奴から目を離せば、次にはどんな顔になっているか分かったもんじゃない。
 俺も直ぐさま奥の部屋に突入していった。
「なっなんだこの部屋は!?」
 さっきの部屋も不気味だったが、この部屋は比じゃ無い。
 テニスが出来るくらいの広い部屋。
 少し肌寒いくらいの温度で湿度は適切にコントロールされている。
なのに噴き出す汗が止まらない。
高い天井から種々様々な人の皮が視線の高さくらいでハンガーで吊されていた。
ひらひら、ひらひらと空調の風に靡いている。
艶めかしい人肌が視界いっぱいに映り込んでくる。
流石の俺でも夢に出そうだ。
「人は外見。人は見た目と言うじゃない。つまり人の本質は皮膚なのよ。
 つまりここに吊された人の数だけ人の本質があるのよ」
 さっきまでの鵡見の声とは違う、もっと機械的というかデジタル的というか中性的でクリアな声が響いてくる。
「初めて聞くぜ、そんな説。
 少なくても男なら中身で勝負じゃ無いのか」
「それは負け犬の言い訳。どんなに取り繕うと人は外見。
 外見が良ければ、どんなに中身がクズでもいい女いい男を抱ける。
 どんなに立派なことを言おうとも、外見が駄目なら誰も耳を貸さない。
 つまり人間の一番の外側、皮膚こそが人の本質なのよ」
 ちきしょうどっこから声がする。この部屋音が天井からしか反響しないから位置が掴みづらい。
「否定はしないでおいてやるが、それだとお前は本質の無い奴にならないか」
「そうよその通り。だから私は本質を求めてこの姿になった」
 スキンコレクターは皮膚を掻き分け、俺の正面に堂々と姿を晒した。
 一糸纏わぬ、その姿は中性的。
 男でも女でも無く。
 中性的な美しさに輝き、俺に性欲は一切湧かない。
 人の裸を見てただ美しいと思う。
「それが本当の姿なのか?」
「本当の姿って何?
 これは私が今まで集めた皮膚の内優れた部分を解して紡いで編み込んだ究極の皮膚。
 まあ究極は言い過ぎかしら。
 本当は時雨と京の皮膚も編む込む予定だったのよ。
 画竜点睛、究極にはまだまだ。
 でもね。私を狙うクズ共を一掃するにはこれで十分」
 スキンコレクターが微笑んだ瞬間、衝撃に俺の意識は吹っ飛んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

都市街下奇譚

ホラー
とある都市。 人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。 多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか? 多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。 忌憚は忌み嫌い避けて通る事。 奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。 そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...