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偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と放映試合 その07

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《我が王、武具はどうされますか?》

「(……ドゥルさん。恐らく本来の業務をすることは、今回は無いと思ってくれ)」

《そんなっ! どうしてですか?!》


 今まで黙っていたドゥルがそう訊いて来るので答えると、何やらショックを受けたようだな。
 まぁ、存在意義を否定されるようなものだから仕方ないけど。


「(良いか、ここには絶対に壊れない神器であるギーがいるんだ。ギーの能力はあらゆる武技を模倣できるというチートだ。わざわざ召喚して使うより、効率が良いじゃないか)」

《で、ですが――》

「(ちゃんと話を聞け。確かに本来の業務はできないと言ったが、やることが全く無いとは一言も言って無いだろう。それに、そういったことも考えて、他の奴らに相談して色んなことができるようにしたんだろう?)」

《……そ、そうでした》


 一度見た彼女のその力は、武具を召喚するだけでは無かった。
 英雄王の能力、それの上位互換じゃね? と思う程だぞ。


「(えっと~、ドゥルは例のアレをやるということになったな。頼むぞ)」

《仰せのままに、我が王》

「(スーは結界の用意を、すまないが対物理、対魔法、対異常、対熱変動、対聖邪、対神の効果は切らさないでくれ)」

《うん、任せて》

「(グーは攻撃の解析、情報を(未来眼)に回してくれ。形状は負担にならない物に変更して欲しい)」

《分かったよ》


 スーは俺の周りに平常時以上に結界を展開し、グーは……何故か蝶の髪飾りになって、俺の髪に留まった(半身のデザインだ)。


「(ギーは俺の要求する武技へなってくれ。魔法の発動は自由にしてくれて構わないから、牽制もついでに頼む)」

《問題無い》

「(リーは……リーは……うん、無いな)」

《無いの!?》

「(いや、ほらさ、(実力偽装)はいつもお世話になってるけどさ……他って――)」

《(多重詠唱)も(反復行動)だって……って、あっ》


 そう、どちらも俺には無くても構わないスキルたちである。
 つまり俺は、その魔法版である<多重魔法>が発動できるのだ。
 これがあるだけで行った行動を全て、何倍にもできるしな。


「(――っというワケなんだ)」

《ほ、ほら、ドゥルちゃんみたいに私にもできることが……》

「(いや、さすがにそれは――)」

《……グスッ》


 あ、ヤバッ。どうにかせねば!
 何か、何かやることは……。


「(――っというのは冗談だからな。リーにもギーと同じように、牽制を頼みたい。ギーより専念して貰うことになるから、頑張って貰いたいんだが……)」

《……本当に?》

「(あ、あぁ、本当だぞ。俺の補助をして欲しいんだよリー。頼む、力を貸してくれ)」

《……な、なら仕方無いわ! ふふん、頼りないメルスを助けてあげる!》


 少々こめかみがピクピクしそうな発言ではあるが、おちょくったのは俺である為、今回は我慢だな。


「(そ、それじゃあ、早速始めるとしようか。ギー、よろしく頼むぞ)」

《おっけー》


 欲しい武具のイメージを伝え、姿をソレへと変えてもらう。
 水晶が自身で眩い光を放ったと思うと、そこには光り輝く剣が存在した。


「んじゃあ待たせたな。まずは剣と一緒にワルツでも楽しもうか――"舞い踊れ"」


 そう告げると、ギーは何十本にも分裂し、彼女達と死の舞踏ワルツを洒落込んでいく。
 それでも、彼女達はそれをヒョイッと躱し続け、少しずつ俺を囲む包囲陣を狭めていっている。


「はい、それじゃあ次だ。ドゥル、アレの準備を頼むぞ」

《仰せのままに、我が王》


 その瞬間、彼女たちは高速で離脱した。
 なんてことはない、彼女達は次に起き得る現象を察知して、死なない為の最適な行動を選んだのだ。
 先程の"双極"で、躱すことこそが最適解だと理解したみたいだしな。


◆   □   ◆   □   ◆


『おーっと、メルスの周囲から様々な武具が飛び出しました! アンさん、これは一体どういうことでしょうか?』

『これはドゥル様の能力です。瞬間的に大量の武具を生成することのできるそれは、条件さえ満たせば数も射程も無制限です』

『……英雄王もビックリだね』

『武装展開の最も強いイメージがメルス様の記憶の中でこれでしたので。条件は――

・メルス様の創った武具であること
・武具庫に保管されている武具であること
・同じ武具を同時に生成しないこと
・発動するスキルは一つずつであること

 ――となっています』

『スキルの部分だけはデメリットに入ってるけど……』

『えぇ、(生産神の加護)をお持ちのメルス様にとっては、他は全て毛ほども気にならないものです。自身で何かを創ることは、壊すことよりも難しいことなのですが……暇と称して大量に生産しておりますので』

『あっでも、MPの消費はあるんだよね? それも無いなら、一体どうやって発動しているの?』

『当然ながら、その能力は魔力を消費して発動します……が、無限の供給源がありますので、尽きることが無いのですよ』

『……もう誤魔化しようのないチートだね』


◆   □   ◆   □   ◆


 ドゥルの放った大量の武具は、俺の周囲に深い溝を造る程の威力であった。
 確かに、威力からすれば当然なんが……。


「(――後で元に戻さないとな)」

《も、申し訳ありません!》


 この穴、どこまで繋がってんだろうな~。
 未だにギーが彼女たちを追い掛けているのだが、俺はそんな場違いなことを考えてた。
 ……それぐらいに、溝が深かったんだよ。


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