魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第8話 悪魔の対処法

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 さて。どうしたものか。

 俺は今、目の前にいる悪魔をどう対処しようか悩んでいた。

 壁を作るのは案外簡単だったが、ここにきて大きな課題ができてしまった。

 今までの悪魔と違って、目の前にいる悪魔は倒していい相手じゃない。少し前なら敵同士だったが、もう仲間だし。

「あの。俺のこととか聞いてない?」

「聞いてないなぁ。だよなぁ?」

「ああ。なーんにも聞いてない。お前、自分のことが有名だって勘違いしてるタイプか?」

「ギャハハハハ。勇者でもなきゃ人間の名前なんて知れ渡らねぇよ」

 だよな。

 この様子だとパトラは俺のことを話していないのだろうし。

 困ったな。きっとこれからは悪魔が部下ってことになるんだろ? なら無闇に攻撃できないし。かといって説明しようにも話は聞いてくれそうにないし。

「さあて、無駄話はこれくらいにしてやっちまうか!」

 サンちゃんじゃない方が威勢のいい声を上げた時、遠くから近づいてくる足音が聞こえてきた。

「おい。無視すんな。よそ見しても大丈夫ってか?」

「いや、待て。誰か来る」

 悪魔たちは気づいていないらしい。

「魔王城から来るってことは俺たちへの増援じゃないか? 待ってていいのか? お前にとって不利だろう」

 違う。増援じゃない。この足音は。

「カイセイ。無事!?」

「パトラ」

 やっぱりだ。

 よかった。これでパトラが説明してくれれば、俺は攻撃しないで済むはずだ。

 しかし、無事って? それに、なんで俺は合図も出してないのにパトラが来たんだ?

 まさか、本当に怪我させたから叱りに来たのか?

「魔王様! 魔王様だ」

「魔王様、我々が今からこの者を倒して見せます。魔王様は下がっていてください」

「ふっふっふ。人間。終わったな。魔王様は我々の力を高めてくれるのだ」

「何っ」

 確かに力がみなぎる。

 こんなにも力が溢れてくるのに、今まで気づいていなかったなんて。

 そんなに無理なく力が出せたのか。

 いや、もしかしてペンダントをもらったからか?

「人間覚悟ー!」

 あ、ダメだ。

 パトラが説明する前に動き出した。

 それに、怪我してたサンちゃんの方が武器振り上げるじゃねぇか。

 嘘つき。

 くそ。こうなったら。できるだけ無傷で済ませるしかない。

「すまない。『クリエイトホール』! 『グラビティ』!」

「あ?」

「地面がない。落ちる!」

 俺は二匹の悪魔の足元に穴を作り、強制的に穴に落とした。

「パトラ。これには訳があるんだ」

「まあ、仕方ないよ。私も話してなかったし。うちの子たちがごめんね」

 よかった。叱られなかった。

「でも」

 パトラは俺の作った穴を覗き込んだ。

「どうかした?」

「いや、これはやりすぎじゃないかなって」

「え?」

 見ると、底が見えないほど深い穴が出来上がっていた。

 俺としては首が出るくらいの深さで調整したつもりだったのだが。今の俺はパトラがいると、いつもよりも強くなってしまうらしい。

「助けてあげてくれる?」

「も、もちろん」



「すいませんしたー!」

「いいって。俺の方こそ悪かったと思ってるからさ」

 穴から二匹の悪魔を救出し、パトラに事情を説明してもらった。

 パトラから説明を受けると、二匹、いや、もう仲間なのだし、匹は人ごとっぽいから人で数えるか。

 二人の悪魔は真っ先に俺に謝ってきた。

「いえ、これじゃ処分としては足りないくらいです。俺たちのやったことは、本来なら許されざることですから」

「そんなことないって。俺だって、ペンダントを見せればよかったのに、見えてるだろうと思って伝えなかったんだから」

「それだって、俺たちが気づいて攻撃を止めるべきでした」

 今までの態度が嘘のように、悪魔は頭を下げっぱなしだ。

 俺としては、みんな無事だったからそれでいいと思うんだけど。

「幹部になれるほどの方に俺たち、勝てるはずもないのにな」

「無謀もいいところだぜ。怒っていらっしゃるのに冷静に対応してくださるなんて」

「怒ってないけど?」

「何をおっしゃいますか。そちらの壁を見れば怒ってることは丸わかりですよ」

「壁?」

 指さされた方を見れば、そこには俺の作った嵐の壁が凄まじい勢いで荒ぶっていた。

 え、何これ。俺こんなに強くした覚えないんだけど。

「私もこんなに強くしなくてもいいと思うな」

 パトラも怯えた様子で言ってきた。

「俺は何も変えてないよ? 多分、パトラが来たからだよ。急に体に力が溢れる感じがしたし」

「私? いや、こんなに変わるかな? 本当に怒ってない?」

「怒ってないって」

 みんなビクビクしていて会話する様子じゃないし、怒ってないけど出力は下げておくか。

 これでやっと話せるかな?

「それで、パトラはなんでここに来たの? 俺、何も知らせてないよね?」

「いや、あの、それは、ほら」

 なんだろう。言いにくいことか?

 悪魔たちがヒソヒソと話しているけど、俺やっぱり魔王軍としてやってはいけないことをしてしまったのか?

「俺、やっちゃいけないことしちゃった? もしかして、壁作りで何か壊したとか?」

「ううん。そういうんじゃないの。あれよ。なんとなくできたかなー? って気になって見に来たの。でも、問題なかったね」

「これでいいならだけど」

「もうオッケーだよ。これ以上望めないくらい。うん」

 なんかよそよそしい気がするけど、やっぱり嘘つかれてるのか?

 ま、俺の勘は別に頼りになるスキルで補正されてないしな。考えても仕方ないか。

「じゃ、俺はどこへ行こうかな」

「もちろん魔王城に来てよ。大歓迎だよ。ほら、行くよ」

 そう言って、パトラは俺の腕に腕を絡めてきた。

 近い! なんで!?

 後の悪魔たちも悲鳴に近い声を漏らしてるけど、やっぱりこれは罰則なのか?

「あ、あの。パトラさん、魔王様。これは一体」

「これから広い魔王城を案内するんだから迷子になられたら困るでしょ? その対策よ」

「そう、ですか」

 ゼッテー違う。俺そんな子供じゃないし。

 絶対俺何かやらかしたんだ!
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