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第一章 勇者パーティ崩壊
第10話 目覚め
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体が動かせない。
俺は重い体を起こそうとしたが、全く動けなかった。しかし、昨日の疲れが残っているわけではない。だるいのではなく、何かが乗っかっているせいで動けないような感じだ。
仕方なく目を開けると、みたことのない部屋にいることがわかった。
周囲を観察し、背中から返ってくる柔らかい感触を確かめる。どうやら俺はベッドに寝かされているらしい。
「そうか。俺、魔王城に来たのに、久しぶりに楽しくやれて安心しちゃったのか」
勇者パーティにいた時は、過酷も過酷。重労働でない日はなかった。
サポートの手を抜けばいつ負けるかわからない相手。しかし、俺が全力を出せば、また周りに迷惑をかけてしまうかもしれない不安。
スキルは封印していたし、そんなことにはならないと分かっていたが、それでもいつも内心では自分の力に怯えていた。
使い道のないハズレスキルに役割をくれたパトラには感謝しても仕切れない。
だが、この状況はおかしい。
「おい。何してる。な、なんでこんなことになってるんだ」
俺の左腕には抱きついているパトラの姿があった。
どおりで動かないわけだ。
「パトラ。朝だぞ。俺は抱き枕じゃないぞ。何してんのマジで」
「カイセイが魔王軍の幹部。ふふふ」
俺が左腕を揺すってみるも、寝言を言うだけで起きる気配がない。
抱きついてきてるのが左腕なら、右腕を使えばいいと思うかもしれないが、そういうわけにもいかない。
なぜなら。
「本当に何してるの? ねえ、何してるの?」
右腕にはレバレちゃんの姿があった。
伝説の勇者のこんな姿は見たくなかった。
「あの? 朝ですよ?」
「魔王様だけには負けない」
レバレちゃんも起きない。なんで? どうすればいいんだ。
今の俺は両腕を拘束され、体を動かすこともままならない。
寝ている二人相手なら、乱暴にスキルを使えばどかすことはできると思うが、そんなことしてタダで済むとは思えない。
パトラは上司だし、レバレちゃんは先輩だ。
俺が体を動かしても起きないところを見ると、抵抗して起こそうとするのは無理かもしれない。
「マジかよ」
俺は仕方なく二人の寝顔でも観察することにした。
「んんー!」
やっと伸びをしたかと思うとパトラが俺の腕から離れた。
生活リズムが似ているのか、反対側ではレバレちゃんが同じように動いている。
「カイセイおはよう」
「ああ。おはよう」
「起きてた?」
「起きてたよ」
まだ眠そうにしながらパトラが聞いてくる。
レバレちゃんはまだ寝ぼけているのか、ぼーっと何もないところを見つめている。
「あのさ。パトラ油断しすぎじゃない?」
「なんで?」
「なんでって」
キョトンとした表情で首を傾げてパトラは見つめ返してきた。
本当に状況を理解してないのか?
「俺が裏切るとか考えないの?」
「カイセイは裏切らないよ。だって魔王軍に入ったでしょ?」
「そうだけど、口だけだったかもしれないだろ?」
「んー。にしても裏切らないって。だってカイセイってそういう人でしょ? 恩には恩を返して、罰には報いを受けさせるっていう」
「俺はそんな人間じゃ」
「そんな人間だよ。だって、今私は生きてるし、勇者パーティをクビにされて、魔王軍に入ったわけでしょ?」
「まあ」
「大丈夫だって。むしろ、私は信頼してるんだよ? そういうところは自覚してほしいなあ」
まあ、信頼されていることは嬉しいし、恩はパトラに対しての方が大きい。
勇者たちには感謝しているが、仲間を自分の名声のためだけに殺すのは理解できない。
「信頼はわかったけど、信頼しすぎじゃない?」
「またそうやって」
「じゃなくて、俺だってお」
「だー! カイセイ君。カイセイ君!」
「なんですか。レバレちゃん。俺、今パトラと話してるところなんですけど」
急に大きな声を出してレバレちゃんが俺の背中を叩いてきた。
「元気?」
「まあ、元気ですけど」
「それはよかった」
レバレちゃんはそうしてホッと息を吐き出した。
え、それだけ?
「今確認することですか?」
「そりゃそうだよ。だって、ここまでカイセイ君を運んで介抱したのはボクたちなんだから」
「あ、ありがとうございます」
「うんうん。まあ、元気になったならよかったよ。急に倒れるもんだから、心配したんだからね」
「心配かけました」
確かに、俺の方こそ不用心だったか。
人間なのに魔王城で眠りこけるなんて。
今は魔王軍なんだし、気にしなくていい、か。
「魔王様なんかずっと不安そうにしてたんだよ? カイセイ君が生きてるとわかった時のあの顔は、カイセイ君にも見せたかったなー」
「レバレちゃん。今その話はいいでしょ」
「いやー。本当に魔王様ったらカイセイ君のことになると人が変わったようで、普段の厳しい姿が嘘のようだよ」
「だから関係ないでしょ」
「パトラ厳しいの?」
「カイセイまで」
ため息をつくパトラ。
「いや、どうな」
「そうだ。カイセイにはまだ案内する場所があったんだ」
「部屋の配置はもういいよ。そのうち覚えるから。それよりパトラの厳しさについて聞かせてよ」
レバレちゃんのいじりが相当嫌なのか早速話を進めようとするパトラ。
「ここは本当なら昨日のうちに行っておくべき場所だったんだから、行くわよ」
「え、この格好で? 全員寝巻きみたいなもんだけど」
「いいのよ。別に」
「魔王の威厳みたいなのは?」
「ん」
どうやら一応外面を気にはしているらしい。
まあ、そりゃ寝巻き姿の魔王様の姿を見たら心配になるだろうしな。
「最低限着替えたら向かうわよ」
「わかった」
俺は自室に案内され、行くべきどこかへの準備を始めた。
「昨日行くべきって、そんなことあるのか?」
俺は重い体を起こそうとしたが、全く動けなかった。しかし、昨日の疲れが残っているわけではない。だるいのではなく、何かが乗っかっているせいで動けないような感じだ。
仕方なく目を開けると、みたことのない部屋にいることがわかった。
周囲を観察し、背中から返ってくる柔らかい感触を確かめる。どうやら俺はベッドに寝かされているらしい。
「そうか。俺、魔王城に来たのに、久しぶりに楽しくやれて安心しちゃったのか」
勇者パーティにいた時は、過酷も過酷。重労働でない日はなかった。
サポートの手を抜けばいつ負けるかわからない相手。しかし、俺が全力を出せば、また周りに迷惑をかけてしまうかもしれない不安。
スキルは封印していたし、そんなことにはならないと分かっていたが、それでもいつも内心では自分の力に怯えていた。
使い道のないハズレスキルに役割をくれたパトラには感謝しても仕切れない。
だが、この状況はおかしい。
「おい。何してる。な、なんでこんなことになってるんだ」
俺の左腕には抱きついているパトラの姿があった。
どおりで動かないわけだ。
「パトラ。朝だぞ。俺は抱き枕じゃないぞ。何してんのマジで」
「カイセイが魔王軍の幹部。ふふふ」
俺が左腕を揺すってみるも、寝言を言うだけで起きる気配がない。
抱きついてきてるのが左腕なら、右腕を使えばいいと思うかもしれないが、そういうわけにもいかない。
なぜなら。
「本当に何してるの? ねえ、何してるの?」
右腕にはレバレちゃんの姿があった。
伝説の勇者のこんな姿は見たくなかった。
「あの? 朝ですよ?」
「魔王様だけには負けない」
レバレちゃんも起きない。なんで? どうすればいいんだ。
今の俺は両腕を拘束され、体を動かすこともままならない。
寝ている二人相手なら、乱暴にスキルを使えばどかすことはできると思うが、そんなことしてタダで済むとは思えない。
パトラは上司だし、レバレちゃんは先輩だ。
俺が体を動かしても起きないところを見ると、抵抗して起こそうとするのは無理かもしれない。
「マジかよ」
俺は仕方なく二人の寝顔でも観察することにした。
「んんー!」
やっと伸びをしたかと思うとパトラが俺の腕から離れた。
生活リズムが似ているのか、反対側ではレバレちゃんが同じように動いている。
「カイセイおはよう」
「ああ。おはよう」
「起きてた?」
「起きてたよ」
まだ眠そうにしながらパトラが聞いてくる。
レバレちゃんはまだ寝ぼけているのか、ぼーっと何もないところを見つめている。
「あのさ。パトラ油断しすぎじゃない?」
「なんで?」
「なんでって」
キョトンとした表情で首を傾げてパトラは見つめ返してきた。
本当に状況を理解してないのか?
「俺が裏切るとか考えないの?」
「カイセイは裏切らないよ。だって魔王軍に入ったでしょ?」
「そうだけど、口だけだったかもしれないだろ?」
「んー。にしても裏切らないって。だってカイセイってそういう人でしょ? 恩には恩を返して、罰には報いを受けさせるっていう」
「俺はそんな人間じゃ」
「そんな人間だよ。だって、今私は生きてるし、勇者パーティをクビにされて、魔王軍に入ったわけでしょ?」
「まあ」
「大丈夫だって。むしろ、私は信頼してるんだよ? そういうところは自覚してほしいなあ」
まあ、信頼されていることは嬉しいし、恩はパトラに対しての方が大きい。
勇者たちには感謝しているが、仲間を自分の名声のためだけに殺すのは理解できない。
「信頼はわかったけど、信頼しすぎじゃない?」
「またそうやって」
「じゃなくて、俺だってお」
「だー! カイセイ君。カイセイ君!」
「なんですか。レバレちゃん。俺、今パトラと話してるところなんですけど」
急に大きな声を出してレバレちゃんが俺の背中を叩いてきた。
「元気?」
「まあ、元気ですけど」
「それはよかった」
レバレちゃんはそうしてホッと息を吐き出した。
え、それだけ?
「今確認することですか?」
「そりゃそうだよ。だって、ここまでカイセイ君を運んで介抱したのはボクたちなんだから」
「あ、ありがとうございます」
「うんうん。まあ、元気になったならよかったよ。急に倒れるもんだから、心配したんだからね」
「心配かけました」
確かに、俺の方こそ不用心だったか。
人間なのに魔王城で眠りこけるなんて。
今は魔王軍なんだし、気にしなくていい、か。
「魔王様なんかずっと不安そうにしてたんだよ? カイセイ君が生きてるとわかった時のあの顔は、カイセイ君にも見せたかったなー」
「レバレちゃん。今その話はいいでしょ」
「いやー。本当に魔王様ったらカイセイ君のことになると人が変わったようで、普段の厳しい姿が嘘のようだよ」
「だから関係ないでしょ」
「パトラ厳しいの?」
「カイセイまで」
ため息をつくパトラ。
「いや、どうな」
「そうだ。カイセイにはまだ案内する場所があったんだ」
「部屋の配置はもういいよ。そのうち覚えるから。それよりパトラの厳しさについて聞かせてよ」
レバレちゃんのいじりが相当嫌なのか早速話を進めようとするパトラ。
「ここは本当なら昨日のうちに行っておくべき場所だったんだから、行くわよ」
「え、この格好で? 全員寝巻きみたいなもんだけど」
「いいのよ。別に」
「魔王の威厳みたいなのは?」
「ん」
どうやら一応外面を気にはしているらしい。
まあ、そりゃ寝巻き姿の魔王様の姿を見たら心配になるだろうしな。
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