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第一章 勇者パーティ崩壊
第12話 壁を攻撃する者たち
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誰かが来たことを察知して、俺は慌てて俺が作った壁のところまで移動した。
俺はテレポートはできないため、スキルで加速をつけた駆け足だ。
もしもの時のために、パトラとレバレちゃんには城内で待機しててもらい、俺は一人で壁まで移動した。
「これなんですかね?」
「わからん。こんなものができたことなど、歴史上これまでなかったはずだ」
この声は、先遣隊の皆さん?
勇者パーティである俺たちがどこかへ向かう際に、先に行って情報を集めてくださった方々だ。
俺はこの人たちの集めた情報から、事前に封印していたスキルの中で使えるものを使い、勇者パーティをサポートしていた。
どうしてこの人たちがこんなところに?
まさか、勇者たちがダンジョンで魔王討伐を可能にするアイテムでも見つけたのか?
「石程度では何も効いている様子がありませんね」
「それはそうだろうな。こんな壁、他の場所でも見たことも聞いたこともないからな」
「音からすると粉々に砕かれているようですが」
「近づかない方がいいのだろう」
石を投げていたのはこの人たちだったのか。
何されてるかまでは感触が小さすぎてわからなかったが、そういうことか。
なら、今の所誰も傷ついていないはず。
しかし、道具を見つけたにしても早すぎる。
魔王城近くは時間が分かりにくい天候とは言え、準備を整えられるような時間はなかったはずだ。
「隊長。戻りました」
「どうだった」
「これは嵐のようでありながら、魔王城をぐるりと囲んでいるものと思われます」
「そうか。一体なぜこんなものが発生したんだ」
それは俺が作ったからです。
なんて言い出せない。
勇者たちは許せずとも、この人たちはまだ俺に危害を加えていないはずだ。
よし少しだけ、会話して帰ってもらおう。
「あの」
「ん。何やつ!」
「あー。すみません。怪しいものじゃないです」
出て行こうと思ったけどダメだ。今はパトラも近くにいないし、力じゃ俺は勝てない気がする。
手を上げて壁の中に戻り、壁から顔だけ出すようにしておくことにした。
「怪しいものじゃない。って、カイセイ様ではないですか。そんなところで何を、って大丈夫なんですか? カイセイ様の体が」
「ああ。大丈夫大丈夫。でも、皆さんは触らない方がいいと思います。俺はその」
「なるほど。そうか。勇者のバドンさんやパーティの皆さんが見当たらないところを見ると、サポーターであるカイセイ様が捕虜として魔王城に閉じ込められているわけですね」
「あ、いや」
「いえ、隠す必要などありません。パーティには役割があります。カイセイ様はサポーターなのですから、不意をつかれれば抵抗できずに捕まってしまうこともあるでしょう」
「あの」
「そうですか。困りましたね。カイセイ様がいる以上、うかつに攻撃もできません。それに、こうして会話だけできるようにするとは魔王。なんて卑怯なんだ」
「ですから」
「わかりました。この壁はカイセイ様が逃げないように魔王が作り出したものとして報告しておきます。カイセイ様が捕虜になっていることもです。そうすれば勇者様がすぐに壁を壊して助けてくださりますよ。それまでの辛抱です。待っていてください」
「ちが」
「私たちには勇者様を呼ぶことしかできませんが、すぐに呼んで参ります。ですので、どうか。それまで耐えてください」
「カイセイ殿。我々の活躍を一番に評価してくださっていたのはカイセイ殿です。カイセイ殿がいなければ、我々はこれまで勇者パーティをサポートすることはできなかったかもしれません。この御恩、今こそ返させていただきます」
「ちょ、ま」
行ってしまった。
嘘だろ。俺の話何にも聞いてもらえなかったんだけど。
勝手に色々理由を考えて引き返してしまったんだけど。
「まあ、でも、帰ってくれたのならそれでいいか?」
いや、よくないか。勇者が来る。
俺が生きてることがバレる。
まずい。バドンは俺のことをどう報告してるんだ。
俺の処遇は一体どうなるんだ。
「……セイ。カイセイ!」
「うおっ! いきなり大声出すなよ。びっくりするだろ」
パトラの大声に、跳び上がりかけた。
まったく、魔王様は一体何してるのか。
「いきなりじゃないよ。結構ずっと呼びかけてたけど、反応ないんだもん。心配したよ?」
「ああ。それはすまない」
そうだ。俺はパトラのための魔王軍幹部、カイセイ・アークランド。今更人間界での処遇なんて気にしたって仕方ない。
「何かあったの? 怖い顔して」
不思議そうに聞いてくる。そうだよな。外を見えなくしてるのは俺なんだ。状況を説明しないと。
「パトラは俺が守る」
「え、何? どういうこと?」
顔を赤くし出したパトラ。それもそうか、魔王でありながら幹部なんかに守ると言われれば色々な感情を抱くだろう。
だが、最前線を任されたのだ。これくらい伝えなくては。
「これから勇者が来るんだ。だけど、そいつは俺がこの壁で防ぐつもりだ。もちろん、本気をぶつけたことはないからわからないけれど、一応万全の準備は整えておこうと思う」
「そう。そっか。よ、よろしくね」
「ああ。でも、できるならパトラに近くにいてほしい」
「私に? でも、壁はカイセイのスキルでしょ? 私がいたって……」
「いや、いるといないじゃ断然違うんだ。パトラが近くにいた方が力が出せるからさ」
そう。パトラの力の一つには、近くにいる魔王軍を強化する能力があるようなのだ。
その力で、俺は悪魔二人を葬りかけた。
しかし、セーブして奈落に落とすだけの力が出せるなら、勇者と戦うには十分な戦力になれるはずだ。
「わかった。カイセイの力になれるなら、私応援してるよ」
満面の笑顔でパトラは言った。
やはり、人の上に立つ人間は違うな。
こんな魔王様を俺が拘束してしまうと思うと、少し気になるところもあるが、相手は勇者だ。
必要なことだろう。
「ありがとう」
「私だって、勇者のサポートしてたカイセイの力になれるように日々努力してきたんだから」
「魔王なのに?」
「そりゃそうよ。だってカイセイは私の命の恩人みたいなものでしょ?」
「俺パトラのこと助けたっけ? 俺がスキルを暴走させた時はいなかったんじゃ」
「もう! 色々あるのよ」
「そ、そうだな」
なんだかよくわからないが、力を貸してくれるようだ。
魔王であり人間のパトラ。そして、人間で、勇者パーティをクビにされた俺。
今の勇者とどこまで渡り合えるか、今から楽しみだ。
「おーい。ボクの力は必要そう?」
「今日のところは大丈夫です」
「じゃあ、早く戻ろうよ」
レバレちゃんも来たことだし、俺は魔王城に戻って準備を進めることにした。
俺はテレポートはできないため、スキルで加速をつけた駆け足だ。
もしもの時のために、パトラとレバレちゃんには城内で待機しててもらい、俺は一人で壁まで移動した。
「これなんですかね?」
「わからん。こんなものができたことなど、歴史上これまでなかったはずだ」
この声は、先遣隊の皆さん?
勇者パーティである俺たちがどこかへ向かう際に、先に行って情報を集めてくださった方々だ。
俺はこの人たちの集めた情報から、事前に封印していたスキルの中で使えるものを使い、勇者パーティをサポートしていた。
どうしてこの人たちがこんなところに?
まさか、勇者たちがダンジョンで魔王討伐を可能にするアイテムでも見つけたのか?
「石程度では何も効いている様子がありませんね」
「それはそうだろうな。こんな壁、他の場所でも見たことも聞いたこともないからな」
「音からすると粉々に砕かれているようですが」
「近づかない方がいいのだろう」
石を投げていたのはこの人たちだったのか。
何されてるかまでは感触が小さすぎてわからなかったが、そういうことか。
なら、今の所誰も傷ついていないはず。
しかし、道具を見つけたにしても早すぎる。
魔王城近くは時間が分かりにくい天候とは言え、準備を整えられるような時間はなかったはずだ。
「隊長。戻りました」
「どうだった」
「これは嵐のようでありながら、魔王城をぐるりと囲んでいるものと思われます」
「そうか。一体なぜこんなものが発生したんだ」
それは俺が作ったからです。
なんて言い出せない。
勇者たちは許せずとも、この人たちはまだ俺に危害を加えていないはずだ。
よし少しだけ、会話して帰ってもらおう。
「あの」
「ん。何やつ!」
「あー。すみません。怪しいものじゃないです」
出て行こうと思ったけどダメだ。今はパトラも近くにいないし、力じゃ俺は勝てない気がする。
手を上げて壁の中に戻り、壁から顔だけ出すようにしておくことにした。
「怪しいものじゃない。って、カイセイ様ではないですか。そんなところで何を、って大丈夫なんですか? カイセイ様の体が」
「ああ。大丈夫大丈夫。でも、皆さんは触らない方がいいと思います。俺はその」
「なるほど。そうか。勇者のバドンさんやパーティの皆さんが見当たらないところを見ると、サポーターであるカイセイ様が捕虜として魔王城に閉じ込められているわけですね」
「あ、いや」
「いえ、隠す必要などありません。パーティには役割があります。カイセイ様はサポーターなのですから、不意をつかれれば抵抗できずに捕まってしまうこともあるでしょう」
「あの」
「そうですか。困りましたね。カイセイ様がいる以上、うかつに攻撃もできません。それに、こうして会話だけできるようにするとは魔王。なんて卑怯なんだ」
「ですから」
「わかりました。この壁はカイセイ様が逃げないように魔王が作り出したものとして報告しておきます。カイセイ様が捕虜になっていることもです。そうすれば勇者様がすぐに壁を壊して助けてくださりますよ。それまでの辛抱です。待っていてください」
「ちが」
「私たちには勇者様を呼ぶことしかできませんが、すぐに呼んで参ります。ですので、どうか。それまで耐えてください」
「カイセイ殿。我々の活躍を一番に評価してくださっていたのはカイセイ殿です。カイセイ殿がいなければ、我々はこれまで勇者パーティをサポートすることはできなかったかもしれません。この御恩、今こそ返させていただきます」
「ちょ、ま」
行ってしまった。
嘘だろ。俺の話何にも聞いてもらえなかったんだけど。
勝手に色々理由を考えて引き返してしまったんだけど。
「まあ、でも、帰ってくれたのならそれでいいか?」
いや、よくないか。勇者が来る。
俺が生きてることがバレる。
まずい。バドンは俺のことをどう報告してるんだ。
俺の処遇は一体どうなるんだ。
「……セイ。カイセイ!」
「うおっ! いきなり大声出すなよ。びっくりするだろ」
パトラの大声に、跳び上がりかけた。
まったく、魔王様は一体何してるのか。
「いきなりじゃないよ。結構ずっと呼びかけてたけど、反応ないんだもん。心配したよ?」
「ああ。それはすまない」
そうだ。俺はパトラのための魔王軍幹部、カイセイ・アークランド。今更人間界での処遇なんて気にしたって仕方ない。
「何かあったの? 怖い顔して」
不思議そうに聞いてくる。そうだよな。外を見えなくしてるのは俺なんだ。状況を説明しないと。
「パトラは俺が守る」
「え、何? どういうこと?」
顔を赤くし出したパトラ。それもそうか、魔王でありながら幹部なんかに守ると言われれば色々な感情を抱くだろう。
だが、最前線を任されたのだ。これくらい伝えなくては。
「これから勇者が来るんだ。だけど、そいつは俺がこの壁で防ぐつもりだ。もちろん、本気をぶつけたことはないからわからないけれど、一応万全の準備は整えておこうと思う」
「そう。そっか。よ、よろしくね」
「ああ。でも、できるならパトラに近くにいてほしい」
「私に? でも、壁はカイセイのスキルでしょ? 私がいたって……」
「いや、いるといないじゃ断然違うんだ。パトラが近くにいた方が力が出せるからさ」
そう。パトラの力の一つには、近くにいる魔王軍を強化する能力があるようなのだ。
その力で、俺は悪魔二人を葬りかけた。
しかし、セーブして奈落に落とすだけの力が出せるなら、勇者と戦うには十分な戦力になれるはずだ。
「わかった。カイセイの力になれるなら、私応援してるよ」
満面の笑顔でパトラは言った。
やはり、人の上に立つ人間は違うな。
こんな魔王様を俺が拘束してしまうと思うと、少し気になるところもあるが、相手は勇者だ。
必要なことだろう。
「ありがとう」
「私だって、勇者のサポートしてたカイセイの力になれるように日々努力してきたんだから」
「魔王なのに?」
「そりゃそうよ。だってカイセイは私の命の恩人みたいなものでしょ?」
「俺パトラのこと助けたっけ? 俺がスキルを暴走させた時はいなかったんじゃ」
「もう! 色々あるのよ」
「そ、そうだな」
なんだかよくわからないが、力を貸してくれるようだ。
魔王であり人間のパトラ。そして、人間で、勇者パーティをクビにされた俺。
今の勇者とどこまで渡り合えるか、今から楽しみだ。
「おーい。ボクの力は必要そう?」
「今日のところは大丈夫です」
「じゃあ、早く戻ろうよ」
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