魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第24話 勇者との再戦の予感

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「な……この反応は……」

 俺がレバレちゃんとの勝負に勝った後、突然、俺のレーダーに反応があった。

 誰かが魔王城に近づいて来ている。

 いや、誰かではなく、これは。

「どしたのどしたの?」

「近いですって」

「えー。だって寒いんだもーん。いいじゃんちょっとぐらい。減るもんじゃないし」

「俺の近くにいても風邪ひきますよ」

「ひかないよ剣聖だから」

 いや、剣聖だから風邪ひかないってなんだ? そういうスキルがあるのか?

 ってそうじゃない。レーダーに集中するため、引き剥がそうとするが、レバレちゃんは一向に離れようとしない。

 俺に抱きついてもいいことなんてないと思うが、どかないなら仕方ない。ひとまず俺も冷えるし部屋の温度を上げておこう。

 変なところ意固地だからな。見られたらなんて言われるか知らないが、無理に引き剥がすのに時間使うのも面倒だ。

「あの。これで俺にくっついてなくてもいいと思うんですけど」

「抱いてた方があったかいー」

「わかりましたよ」

「やったー」

 レバレちゃんってこんなにわがままだったか?

 よくわからんが、レーダーの反応もそこまで急じゃないし、いいか。

「急にどうしたんですか」

「……ボクより圧倒的に強いなんて、ドキドキしちゃうじゃん。魔王様と仲良くするから邪魔しようと思ったけど、こんな気持ちになるなんて」

「なんですか? 近くてもボソボソ言われたら聞こえないんですけど」

「いいでしょ別にー」

 まあ、スーもノーの二人も急に頬擦りしてきたし、魔王城ではこれくらいあいさつ程度のものなんだろう。

 俺もこれに慣れていかないといけないのか。

 壁作ってた時に来た悪魔とかもしてくるのか?

 本当に慣れるのか?

「青ざめてるけど大丈夫?」

「だ、大丈夫大丈夫」

「そう? で、何がどうしたの? 反応がどうとかって言ってたけど」

「え? ああ。レーダーの方ですか? 多分勇者たちが魔王城に接近してきてるんです」

「本当!?」

「はい」

「じゃ、急いで行かないと」

 勇者という言葉を聞くなり、レバレちゃんは俺から離れ部屋をキョロキョロ見回し始めた。

 なんで楽しそうなんだこの人。

「そうだった装備は全部カイセイ君に壊されちゃったんだった」

「いいって言ったからですよ?」

「本当にやるとは思わないじゃん」

 まあ、それもそうか?

 俺が悪かったのか?

「いや、どこ行くつもりですか」

「勇者を撃退に、防衛にボクが役立つって売り込みをするためにね」

「それだと俺の手伝いってことになるんじゃ」

「いずれ立場が逆転するから、期待して待ってな」

「なんの期待ですか。ってちょっと待ってくださいよ」

 勢いよく駆け出そうとするレバレちゃんの肩を掴み、俺は呼び止めた。

「何? 心配してくれてるの?」

「いや、心配とかじゃないですけど」

「大丈夫だって。ボクは剣聖なんだよ? カイセイ君には勝てなくても、その辺の勇者くらいやっつけてあげるからさ」

「や、だから」

 行ってしまった。

 全く、人の言うことを聞かないのだから。

 俺は何もレバレちゃんの実力を心配しているのではない。勇者たちがまだついていない野田。

 今の俺は、レーダーの範囲を少しずつ広げておいたおかげで、壁の外でも反応を追える。

 今の勇者たちの移動スピードなら、一日余裕をもって準備することができる。

 なら、レバレちゃんも壁まで行っても、来てないことに気づくだろうし大丈夫か。

「いやいや、待ってレバレちゃん待って!」

 絶対ダメだ。

 レーダーに反応してるのに全然来なかったら、俺が嘘言ってたと思われる。

 絶対あのレバレちゃんだ。なんか面倒臭い雑務を俺に押し付けてくる。

 なんか顔赤くしてたし、頑張って感情ぶつけてこなかっただけできっと怒ってる。

「待って、レバレちゃん。待って!」

「カイセイ? どしたの慌てて」

「ぱ、パトラ」

「レバレちゃんがどうしたの? 何かあったの?」

「あ、いや、その」

 まずい。タイミング悪く戻ってくる。

 今戻って来られると面倒だ。

 今のレバレちゃんをみられたら、パトラに対して言い逃れできない。

「どしたの? 追加情報?」

「あーっと」

 急いでレバレちゃんを隠すが、もう手をくれか。

「何それ。なんの話?」

 ひとまずセーフのようだ。

「パトラこれはその」

「なになに? 魔王様がどうしたの?」

「いいからレバレちゃんは俺の後ろにいてください」

「二人とも何してたの?」

「いや、これはなんでもないんだ」

「隠すようなこと?」

「そうじゃないんだけど」

「まあいいわ。とりあえずお部屋の中でお話ししましょ」

「はい」

 セーフじゃなかった。

「ねえ、なんで魔王様怒ってるみたいなの?」

「自分の服装を見てみるといいと思います」

 頭に疑問符を浮かべたままのレバレちゃんとともに、俺は俺の部屋に戻った。



 パトラに事情を説明したものの、俺とレバレちゃんはこっぴどく叱られた。

 やはり、幹部として恥ずべき行為だったらしく、パトラのルールを破ってしまったようだ。

「まあ、レバレちゃんもカイセイの強さをわかってくれたならよかったけど」

「わかった。ごめんなさい。魔王様」

 ものすごい形相で叱られたせいか、さすがのレバレちゃんも萎縮して、今度は不安そうに俺にくっついてきている。

 今日はなんだか喜怒哀楽の変化が激しい人だな。

「いいの。レバレちゃんがわかってくれれば。部屋も暖かったし、嘘はついてないみたいだしね」

 どうやら、レバレちゃんが叱られたってことで、この場は丸く収まったらしい。

「カイセイもわかった?」

「はい」

「それで、勇者はどうするの?」

 パトラに言われ、忘れていたことを思い出した。

 そうだ。そうだった。勇者たちが接近してきてるんだった。

「とりあえず、レバレちゃんに任せてみようと思う」

「ボクに? いいの?」

「せっかくやる気を出しててくれてるんだし、いいんじゃないかな? パトラはどう思う?」

「カイセイがそう言うならいいよ」

「ボク、今回の件を帳消しにできるように頑張るよ」

「俺も全力でサポートするから、ドラゴンの時みたいにはならないと思うよ」

「ありがとう」

「それじゃ、レバレちゃんはひとまず自分の部屋に戻って準備しよ? カイセイはカイセイでこの部屋で準備があるだろうし」

「俺は別にいいけど」

「ボクも準備ってことじゃないよ?」

「その格好で出向くわけには行かないでしょ!」

 レバレちゃんは下着姿を咎められ、すぐに部屋へ戻って行った。
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