魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第27話 戦いの後

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「面白い人たちだったね」

「そうですか?」

 楽しそうに笑うレバレちゃんを見ながら、俺は首をかしげた。

 これで当分は無闇に襲ってくることもないだろう。

「さて、勇者も帰ったことだし天気を」

 勇者が見えなくなったことを確認してから、俺が天気を元に戻そうと空に手を伸ばした時、レバレちゃんが俺の腕に無理やり抱きついてきた。

「何するんですか。このままだと全員干からびると思うんですけど」

 魔王城周辺はただでさえ不毛な土地が広がっている。

 今の晴れが続けば今以上にカラカラに乾いてしまう。

「せっかく晴らしたのに、元に戻すなんてもったいない」

「いや、そんなこと言われても」

 そもそも俺としては、元の曇りの方が暑すぎず寒すぎずちょうどよかったのだが、レバレちゃんはそうでもないらしい。

 そういえばこの人、ドラゴンのブレスにすら動じないような、暑さに鈍感な人だった。

 同じ基準で会話していたら今以上に暑くさせられてしまうのではないか。

 仲間にとんだ伏兵が居やがったもんだ。

「あの。離してください。天気戻したいんです」
「嫌だ」
「ちょっとでいいので、ちょっとで。離してください。そもそもくっつかれたら熱いんですって」

「だって、ボクがカイセイ君の腕を離したらどうせ天気元に戻すんでしょ?」

「そうですよ。こんな暑いのは非常時だけでいいんですって」

「そんなことないよ。ボクは今の方がいいの。カイセイ君だってわかるでしょ?」

「全然わかりません」

「そんな~!」

 泣きつかれても、俺にとって快適ではないことに変わりはない。

 俺の周りだけ調整するのは日常だが、こんなどう考えても周りに影響が出ることはパトラが放っておく訳がない。いずれ怒られるなら今戻すのが吉だ。

 まあ、別に腕を伸ばさなくてもスキルは解除できるが、今は少し涼しくしたい気分だ。

 解除だけでなく調節もしたい。集中するためにはやはり何か基準が欲しくなる。

 だが。

「ほら、ボクが構ってあげるから。なんならボクの剣技を生で見せてあげるから」

 これが本当に伝説の剣聖かと疑うほどのわがままに、腕を離してもらうのは苦労しそうだ。

 仕方ない。今は緊急事態と考えて視覚で集中して。

「いった! 痛い! 急に何するんですか! あなた今自分が着てるもの忘れてるでしょ」

「……気絶しなかったか」

「しませんよ。するもんですか。聞こえてますからね」

 鎧に頭を叩きつけられ、抱きつき攻撃状態。

 なんとか耐えられたが、少し頭がクラクラする。

 調子に乗って、対象によって作動の有無が決まる落とし穴を大量に作ったのも影響してるかもしれない。

「いいですよ。レバレちゃんがその気なら。俺にだって考えがあります」

「やってみるといいさ」

 俺はすぐに辺り一体の空気を冷やし、レバレちゃんを氷漬けにした。

「レバレちゃんはそこで反省しててください」

「……」

 凍っているせいで返事はない。

 多分俺が城に戻る頃には氷が溶けているだろうが問題はない。

「さて、これでやっと天気を戻せる」

 俺は天気を自分にとってちょうどいいものに変え、魔王城に向けて歩き出した。

 しかし、何も考えずに晴らしたが、魔王城周辺でも太陽を拝めるということを知ることができたのは収穫だったな。今度何か試してみるか。



「クソが。くそ。くそ!」

 二度も僕のことをコケにするとは。

 僕たち勇者、いや元勇者パーティはカイセイたちに背を向け、行くアテもなくただ歩いていた。

 僕のスキルで武器や攻撃を増やしても全て無力化されてしまった。

「バドン様。荒れてますね」

「すまない。だが、今度こそ僕たちにできることは無くなったのではないかと思うと、ね」

「……」

 皆同じ気持ちのようだ。

 それはそうだ。今以上の武器なんてもう僕たちでは手に入れることさえ難しい。今頃、どこの村でも僕たちに対して石を投げる人間しかいないだおる。

 そんな状態で、安全に実力を高めるなど無理だと言える。

 僕たちはカイセイのサポートなしでどこまでできるか全く把握していないのだ。

「ヒルギス。何かいい案はないか?」

「そうですね……」

 考え込むヒルギス。

 すぐに思い当たるようなことでは現状を打破できないということだろう。

 それくらいわかっている。僕が思いつくようなことではもうカイセイ討伐、魔王討伐どころか、明日も生きているかわからない。

 今は金があっても何も買えない。

 今の僕たちを相手してくれるのは、王の影響の及ばないようなところ、いや、これ以上考えるのはよそう。

「私たちが生きていけるのは、近くに村がなく、それでいて狩りで生きていけるような場所かと」

「だよな」

 食料を採って生活する。

 不可能じゃないだろうが、やり慣れていないことだし不安だ。

 いっそ敗北を認めて魔王城の捕虜にでもなった方がいいんじゃ。

 いやいや、そんなことは断じて許さない。誰も、僕だって。

「考えはまとまったか? 俺は腹減ったな。なんでもいいが、まずはメシにしないか? このままじゃモンスターに倒されておしまいだろ」

「それもそうか。ここらで腹を満たせるところはっと」

「その必要はない」

「誰!」

 どこからともなく聞こえてきた声に、僕の仲間たちは警戒するように身構えた。

「ふふふ。そうか、ワシのこと知らぬか。まあ、無理もない。初対面ならな」

 こつぜんと姿を現したのは老齢の人物。

 白髪に白髭を蓄えたご老体。

 普通の老人なら村を出たりはしないだろう。が、僕はこの人のことを知っている。この人ならば、モンスターにやられる心配はない。

「必要ないとはどういったことでしょうか」

「メシ奢ってくれるのか?」

「いや、そんなことするはずない。今のこの人がそんなことするはず」

「わかっているようじゃないかバドン」

 驚く仲間たちが僕を見る。

 そう、僕はこの人の知り合いだ。

「この人は僕の祖父だ」
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