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第一章 勇者パーティ崩壊
第29話 本物の勇者の剣
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祖父が突然取り出したのはどこかで見覚えのある剣。
「あれって」
見覚えがあるのは、何も僕だけではなかった様子だ。
「嘘ですよね?」
「おいおい。ありゃバドンが持ってた勇者の剣じゃないか?」
バーティのみんなが認識している通り、祖父が持っているのはどこからどう見ても僕の持っていた剣と同じ物だった。
まだ、抜刀されていないからわからないが刀身まで同じだろう。
少し装飾が多く、煌びやかな印象を受けるが、ほとんど僕の持っていたものと同じだ。
「ほう、これがあれと同じものだと。お前たちにはそう見えるのだな?」
「そうだ。だが、どうして二本あるんだ。勇者の剣は一本だけのはずだが」
「ふっふっふ。はっはっは」
僕の疑問に祖父は楽しそうに笑い出した。
急にボケたか? いや、どうもそんな感じじゃなさそうだ。
何か理由があって心底楽しそうに、そして僕たちを馬鹿にするように笑っている。
「何がおかしい」
「ワシがいつからお前に本物を渡したと思っていた?」
「なっ」
「あれは精巧に作られたレプリカだ。これほどのものをお前のようなひよっこに渡すわけがないだろう」
そう言うと、祖父は抜刀しする動きを見せた。
「嘘だあああああ!」
僕は怒りに身を任せ、祖父に向けて空中に浮かせていた全てに剣を射出した。
どれだけ優れた武器を持っていようと、手に持っているだけではなんの役にも立たない。構えなければ振ることもできまい。
あれだけの攻撃だ。さすがに素手で全てをいなせるわけないだろう。
「この世は魂のありよう」
「なっ! どうして後ろにいる」
僕がすぐに斬りかかるも、すでに祖父の姿はない。
「この世は魂の移ろい」
「くそっ! どういうことだ」
視認するたび切ってみるが、どの祖父に対しても僕の攻撃が効かない。
まるでそこにはいないかのように。
「もうやったってことか?」
だが僕が剣を射出した先に人の姿はない。血の一滴たりとも地面に垂れていない。
僕が確認している間も、祖父は前後左右どこからともなく現れ、話しかけてきては姿を消している。
「先ほどの戦いで量じゃ勝てないということを学んだばかりではないのか?」
「そうだが、僕の真価は物量だ。質で勝てない以上、他の手に流れて何が悪い」
「量は質があってということだ。さあ、バドンお前のレプリカを抜刀しろ。今手に持つ剣よりかは幾分マシだろう」
「……」
そうか、知らないか。
そりゃそうだ。さっきの戦いで折ったわけじゃない。
パーティ以外ならカイセイくらいしか知らないことだ。
「どうした抜かないのか? それともワシに攻撃が当たらなかったのを見ても、その剣で十分だと言いたいのか?」
「ああ」
「バドン様?」
不安そうに見つめてくる仲間たちに僕は頷きかけた。
「ワシと戦った頃から見た目の変わらぬ剣聖、どこの誰かもわからぬ規格外の人間。この二人に対しても使わずに負けたのだぞ。もしやあの二人に対しても抜く場面でないと思ったというのか?」
「そうだ。そういうことだ! 僕が自分の祖父相手に勇者の剣なんて抜くはずないだろう」
「そうか。そこまで落ちたか我が孫よ」
同情するような目で祖父は見つめてくる。
構わない。いざという時に使われるかもしれないと警戒させておいた方がいい。馬鹿正直に情報を与えてやる必要はない。
「ならば仕方ない。魂は見えるならば、導くだけが全てじゃないということをその身をもって味わうがいい」
「何を言っている?」
確かに僕は多少魂の在り方が見える。
いわゆるその人の才能が見える。誰でも才能は持っているものだ。
だが、何度思い返してみてもカイセイの才能だけは見えなかった。大小どころか存在している様子が見えなかった。だからこそ単純な興味としてカイセイを仲間にした
あとは僕は仲間として力になるだろう三人を選んだ。
だが、勇者の目に他の使い方があるとでも言うのか?
「来るぞ。何かが来る。みんな備えるんだ」
「何かって何ですか?」
「わからない。僕も自分の祖父と全力で戦うのは初めてだ。どんな攻撃を狙っているのか見当もつかない」
「それでどうやって備えろって言うんだよ」
「無理な話だな。ワシの力は備えてどうこうなるものじゃない。『ソウルブレイカー』!」
「なっ」
再び、どこからともなく現れたかと思うと、祖父は本物の勇者の剣を振るった。ところまでは見えた。
だが、それ以降祖父の動きは何も見えなかった。
時が止まったように、世界が動きを止めてしまった。
代わりに見えたのはゆっくりと自分の体が倒れていく姿。
「おい。なんで自分の体が見えてるんだ?」
正確には自分の姿しか見えなくなっていた。
体を切られ、倒れていく自分の姿。
回り込んで支えようとするも、自分の体に触ることができない。
すり抜け地面へと倒れ込んでいく。
「おい。おいおい。どういうことだよ。マジュナ! ヒルギス! ガードン!」
名前を呼んでも返事はない。
さっきまで近くにいた仲間たちの姿も見えない。
「くっ。どういうことだ。どういうことなんだ」
「幻覚か? 確かに痛みはない。だが、確実に切られた感覚はあった。ということは現実か? 人を殺そうとした人間の末路ってのはこういうものなのか。自分の死を見つめて、何もできずに死んでいく。周りには誰もいない。そして、何もできない」
もう少しで自分の体が地面にぶつかりそうだ。
何故だかわからないが、自分の体がぶつかった瞬間、自分は終わってしまう気がする。
「ふっ。カイセイ。僕に次はなかったようだ」
視界全てが奪われ、何も頭に思い浮かばなくなった。
「あれって」
見覚えがあるのは、何も僕だけではなかった様子だ。
「嘘ですよね?」
「おいおい。ありゃバドンが持ってた勇者の剣じゃないか?」
バーティのみんなが認識している通り、祖父が持っているのはどこからどう見ても僕の持っていた剣と同じ物だった。
まだ、抜刀されていないからわからないが刀身まで同じだろう。
少し装飾が多く、煌びやかな印象を受けるが、ほとんど僕の持っていたものと同じだ。
「ほう、これがあれと同じものだと。お前たちにはそう見えるのだな?」
「そうだ。だが、どうして二本あるんだ。勇者の剣は一本だけのはずだが」
「ふっふっふ。はっはっは」
僕の疑問に祖父は楽しそうに笑い出した。
急にボケたか? いや、どうもそんな感じじゃなさそうだ。
何か理由があって心底楽しそうに、そして僕たちを馬鹿にするように笑っている。
「何がおかしい」
「ワシがいつからお前に本物を渡したと思っていた?」
「なっ」
「あれは精巧に作られたレプリカだ。これほどのものをお前のようなひよっこに渡すわけがないだろう」
そう言うと、祖父は抜刀しする動きを見せた。
「嘘だあああああ!」
僕は怒りに身を任せ、祖父に向けて空中に浮かせていた全てに剣を射出した。
どれだけ優れた武器を持っていようと、手に持っているだけではなんの役にも立たない。構えなければ振ることもできまい。
あれだけの攻撃だ。さすがに素手で全てをいなせるわけないだろう。
「この世は魂のありよう」
「なっ! どうして後ろにいる」
僕がすぐに斬りかかるも、すでに祖父の姿はない。
「この世は魂の移ろい」
「くそっ! どういうことだ」
視認するたび切ってみるが、どの祖父に対しても僕の攻撃が効かない。
まるでそこにはいないかのように。
「もうやったってことか?」
だが僕が剣を射出した先に人の姿はない。血の一滴たりとも地面に垂れていない。
僕が確認している間も、祖父は前後左右どこからともなく現れ、話しかけてきては姿を消している。
「先ほどの戦いで量じゃ勝てないということを学んだばかりではないのか?」
「そうだが、僕の真価は物量だ。質で勝てない以上、他の手に流れて何が悪い」
「量は質があってということだ。さあ、バドンお前のレプリカを抜刀しろ。今手に持つ剣よりかは幾分マシだろう」
「……」
そうか、知らないか。
そりゃそうだ。さっきの戦いで折ったわけじゃない。
パーティ以外ならカイセイくらいしか知らないことだ。
「どうした抜かないのか? それともワシに攻撃が当たらなかったのを見ても、その剣で十分だと言いたいのか?」
「ああ」
「バドン様?」
不安そうに見つめてくる仲間たちに僕は頷きかけた。
「ワシと戦った頃から見た目の変わらぬ剣聖、どこの誰かもわからぬ規格外の人間。この二人に対しても使わずに負けたのだぞ。もしやあの二人に対しても抜く場面でないと思ったというのか?」
「そうだ。そういうことだ! 僕が自分の祖父相手に勇者の剣なんて抜くはずないだろう」
「そうか。そこまで落ちたか我が孫よ」
同情するような目で祖父は見つめてくる。
構わない。いざという時に使われるかもしれないと警戒させておいた方がいい。馬鹿正直に情報を与えてやる必要はない。
「ならば仕方ない。魂は見えるならば、導くだけが全てじゃないということをその身をもって味わうがいい」
「何を言っている?」
確かに僕は多少魂の在り方が見える。
いわゆるその人の才能が見える。誰でも才能は持っているものだ。
だが、何度思い返してみてもカイセイの才能だけは見えなかった。大小どころか存在している様子が見えなかった。だからこそ単純な興味としてカイセイを仲間にした
あとは僕は仲間として力になるだろう三人を選んだ。
だが、勇者の目に他の使い方があるとでも言うのか?
「来るぞ。何かが来る。みんな備えるんだ」
「何かって何ですか?」
「わからない。僕も自分の祖父と全力で戦うのは初めてだ。どんな攻撃を狙っているのか見当もつかない」
「それでどうやって備えろって言うんだよ」
「無理な話だな。ワシの力は備えてどうこうなるものじゃない。『ソウルブレイカー』!」
「なっ」
再び、どこからともなく現れたかと思うと、祖父は本物の勇者の剣を振るった。ところまでは見えた。
だが、それ以降祖父の動きは何も見えなかった。
時が止まったように、世界が動きを止めてしまった。
代わりに見えたのはゆっくりと自分の体が倒れていく姿。
「おい。なんで自分の体が見えてるんだ?」
正確には自分の姿しか見えなくなっていた。
体を切られ、倒れていく自分の姿。
回り込んで支えようとするも、自分の体に触ることができない。
すり抜け地面へと倒れ込んでいく。
「おい。おいおい。どういうことだよ。マジュナ! ヒルギス! ガードン!」
名前を呼んでも返事はない。
さっきまで近くにいた仲間たちの姿も見えない。
「くっ。どういうことだ。どういうことなんだ」
「幻覚か? 確かに痛みはない。だが、確実に切られた感覚はあった。ということは現実か? 人を殺そうとした人間の末路ってのはこういうものなのか。自分の死を見つめて、何もできずに死んでいく。周りには誰もいない。そして、何もできない」
もう少しで自分の体が地面にぶつかりそうだ。
何故だかわからないが、自分の体がぶつかった瞬間、自分は終わってしまう気がする。
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