魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第30話 勇者の反応消滅

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「反応が、消えた……?」

「何の反応が消えたのー?」

「何の反応が消えたのですか?」

「え、いやぁ。あはは」

 笑って誤魔化してみたものの、二人は頭がガンガンするほど俺のことを揺さぶってくる。この揺さぶり具合からして、話すまで二人とも解放してくれなさそうだ。

 今の俺は勇者パーティを追い返して、魔王城に戻ってきたところだ。

 特にアテもなく歩いていたのだが、スーとノーの二人に見つかり何をしていたのか詰問されていた。

 どうやら、戦闘狂はレバレちゃんだけじゃなかったようで、二人とも勇者と戦ってみたかったらしい。

 そんな二人だ。詳しいことを話したらまた行きたいとか言い出すんだろう。簡単に予想できる。

「何なのー? スー気になるのー」

「ノーもです。ノーも気になるのです」

「わかった。わかったから、揺らさないで」

 なんとか二人をなだめると俺は咳払いをした。

「勇者の反応が消えた。それで近くに一つ知らない反応があるんだ。突然現れたんだけど、魔王城の外で地面に住んでるモンスターとか知らない?」

「知らないの」

「知らないです」

「いないよなそんなの。地下に住んでるのがいても、ここの地下に住んでるだろうし」

 じゃ、誰だ?

「確認しに行くの」

「ノーもそうした方がいいと思うです」

「だよな」

 俺だってそう思う。俺たちと戦ったとは言え、その辺の雑魚相手にやられるような勇者じゃないことは知っている。俺だって勇者パーティの一員だったこともあるんだ。勇者の実力くらい知っている。

 だが、なら誰にやられた? 勇者を倒すということは人間じゃないはず。

 いや、考えても仕方ない。行ってわかるなら行ってみるのが早い。

 俺の与えられた役割は防衛だからな。強敵なら倒しておこう。

「スー、ノー二人ともついてきてくれるか?」

「もちろんなの」

「当たり前です」

 俺は二人をかかえ、突如現れた謎の反応ギリギリまでテレポートした。



 勇者と絶妙に似た反応。

 ゆっくり歩いて近づくと、突然現れた人物の雰囲気がどことなく勇者に似ているのがわかった。

 余計謎が深まる。家族とかならむしろ助けるんじゃないか、普通。

「先ほどの小僧じゃないか。何しに来た」

 気づかれた。かなり大声で話しかけているようだが、まだ見えるような距離じゃないはず。

「もういるの?」

「まだ何も見えないのです」

 そりゃそうだ。俺だってスキルを使って様子を探っていた段階なのだから、目で見えるわけがない。

 もし見えているなら、千里眼でも持っているのかもしれない。

「じっとしてても意味ないぞ。もっと近づけばいいだろう」

「バレてるらしい。一気に行くぞ」

「わかったの」

「わかったです」

 再度二人をかかえて、俺は高速移動で勇者のそっくりさんまで近づいた。

 しかし、先ほどの小僧と言ったか? 俺の知り合いか?

 地面に足をつけ反応の人物に目を向けるも、そこにいたのは見たことのない老人だった。

「さしずめ、元仲間の敵討ちか。魔王軍に寝返っておきながら、いやに仲間思いなんだな」

「敵討ち?」

 いや、そんなつもりはない。偵察だ。本当にやられたのかすら確認していないのだから。

 俺はまず、老人の言葉を受けて周囲を見回した。

 そこには力なく倒れた勇者パーティの姿があった。

「な、んで。本当にやられたのか。人間相手に。どうして」

「どうして? ああ、そうか。ここ最近の人類での動向を知らないのか、それならワシが教えてあげよう。ここにいる四人は指名手配されている。そしてワシは直接殺すよう王から指令を出された。それだけのことさ。理由はわかろう」

 俺を殺そうとしたからか。それでいて俺が死ななかったから、バレてしまったのか。

 勇者でありながら勇者としてやってはいけないことをした。だから、指名手配され殺しの指令まで出された。

 俺だって殺されかけたんだ。憎い。憎かった。だが、大切な日常を汚されるくらいなら、自分で殺してやろうとは思わなかった。

 だが、殺された? 元仲間が? こんなよくわからない爺さんに?

 危険だ。守らなきゃ。また奪われるかもしれない。粉々に、木っ端微塵に。

「カイセイどうかしたの?」

「どうかしたんですか?」

 俺は右手を老人に向けたところで、ハッと我に返った。

 俺の体を勢いよく揺らしながら、スーとノーが心配そうに俺を見上げてきた。

「ありがとう。なんでもない。なんでもないから」

「カイセイはその顔が一番なの」

「ノーもそう思うです」

 笑顔のことかな? それとも苦笑いのことかな?

 まあ、敵を前にいて笑顔でいるってのもおかしな話だ。全く面白いちびっ子たちだな。

 だが、起きたことは受け入れないといけない。やられたものは仕方ない。

 強敵であることに変わりはないし、実力を知らない以上、老人相手とはいえ手加減もできそうにない。

「魔王城のこんな近くで人を殺したってことは、俺たちを警戒させてもよかったってことですよね?」

「そんなことより、お前、やはり人間じゃないな?」

「何言ってるんですか急に」

「その反応。お前は人間なのか?」

「本当に何言ってるんですか?」

 なんだかよくわからないことを言い出している。

 俺を別の誰かと勘違いしてるのか?

 それとも、二人に聞いてるのか? まあ、スーとノーは悪魔のはずだし、また別の答えになるはずだが。

「まあいい。やっすい挑発に乗らないということはお前は人間なのだろう。ワシが相手してやる。だが、こんな危ないところに老人一人でやってくるわけがないだろう」

「父さん。私にも戦えというのですか?」

 声がすると突然、どこからともなく、顔が宙に浮かび上がってきた。
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