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第一章 勇者パーティ崩壊
第31話 首だけの息子と勇者を倒したらしい老人
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「キモっ!」
「出会って早々キモいとは失礼なやつだな」
青筋を浮かべながら、顔だけだった男は徐々に体まで現した。
老人だけでなくもう一人の男。何にしてもたった二人で勇者たち四人を倒したわけだ。
しかし、勇者たち以外の反応は男が出てくるまで一つだけだった。
急に現れたこの男は一体どこから来たというのだ?
「カイセイは下がってるの」
「ここはノーたちに任せるのです」
「そんな小娘にワシの相手をさせるというのか? カイセイとやら」
「何かおかしなことでも?」
「まあいい。遊んでやる」
俺は前線で戦うタイプとして雇われてないし、おじいさんの指摘はまさしくその通りなのだが、このまま突っ込ませていいものか。
「あいつらはすぐに飛んでくるはずだ。お前はワシのことは構わず、そこに倒れてる奴らを拾って帰れ」
「どういうことですか? 父さん。父さんはどうするつもりですか」
「こいつを抜くんだ。善戦できるだろ」
「近くにいたらむしろ邪魔ということですね。わかりました。ご武運を」
「ああ。お前も無事帰れよ」
何やらぶつぶつ話しているが、俺には丸聞こえだ。それにしても拾って帰るってどういうことだ?
口ぶりからすると勇者のことらしいが、殺した相手を持ち帰る趣味なのか?
なんとも理解しがたい。
それに親子らしいが、暗殺者一家ということなのか?
「さあ、かかってこいよガキども。ワシが相手してやる」
「ノー。行くの!」
「わかったです。スー」
二人が飛び出したのを見て、戦いが始まってしまったことを悟った。
「ああもう! 勝手に行くなっての。『ブリザードプリズン』!」
スキル発動と同時に、辺り一体を猛吹雪が包み込み、視界はほとんど白で塗りつぶされる。
俺の出した吹雪のおかげで、近くに何があるか手に取るようにわかる。だが、息子の方はやはり、どこからともなく出たり消えたりしている。
これは息子の方のスキルなのか?
しかし、一体何をしているんだ。
「ふん。小娘を二人とも突っ込ませていたということは、お前さん、前線に出ながら戦いは不得手と見た」
「その通りですけど、ってあれ?」
確かに声がした方を見たが、誰もいない。
俺のスキルによる反応の方も、もう既に別の場所に老人がいることを示している。
「戦いが不得手なら近くに一人ぐらい戦えるものを置いておくべきだとは思わないか?」
「いえ全然」
「なぜこっちを向いている! 『ソウルブレイカー』!」
いつの間にか抜刀されたゴテゴテした装飾の剣が俺めがけて振り下ろされた。
「『クリスタルブレード』! あっぶな。不意打ちは卑怯じゃんって。暗殺者ってそういうものか」
「誰が暗殺者か!」
なんで怒ってるのかわからないが、ヒヤッとした。
とっさに手元に武器を作り出したからよかったが、当たっていたらなんかヤバそうな雰囲気だった。
なんだったんだ今の。
「ワシの攻撃を防ぐとはな。そもそも防げない攻撃なのだが、やはり、その年で実力はワシを上回っているということか」
「はあ」
この人はもしかして会話が成立しないタイプの人かな?
今更かもしれないが、全て大きな独り言なのかもしれない。
「この勇者の剣で放たれるソウルブレイカーを防ぐとは、ワシの戦った相手だとけんせ」
「カイセイ、こっちにいたの?」
「カイセイは下がっていてほしいです」
「俺はずっと下がってたよ。二人が勝手にどっか行っちゃうから敵が来たんでしょ?」
「人を迷子みたいに言ってほしくないの」
「そうです。カイセイは後衛なのです」
「俺を放置したら敵が来るでしょってことなんだけど」
不服そうに二人とも頬を膨らませてしまった。
一応二人のために全面雪景色にしてあげたんだけどな。
まあ、俺の方が大人気なかったか。なんて思っていると、何に気づいたか二人は急に睨み合いを始めた。
「カイセイの近くにいるのはスーなの!」
「いいえ、カイセイに近くにいるのはノーです!」
「聞け! 老人の話はありがたく思って最後まで聞け! このわかもんが! 教育がなってないぞ!」
「敵同士なのにダラダラ会話しても仕方なくないですか?」
「今はスーが話してるの!」
「ノーも話してるところです!」
「うぬぬ」
いや、話したいならこんなことで図星にならないでほしい。
この人、本当に勇者パーティを壊滅させるほどの実力者なのか? 実力者だからこそおどけているのか?
ひとまず、嵐の鎧を装備して、動きを止めてスーとノーにとどめを刺してもらおう。
「『テンペストアーマー』! さあ、二人にとどめは任せたよ。かっこよくお願いね」
「まあ、カイセイが言うなら仕方ないの。カイセイを守るのがどっちかは後で決めるの」
「そうですね。カイセイの頼みじゃ断れないです。つかず離れずがどっちかは後で決めるのです」
「いや、そんなこと決めなくていいと思うけど」
「もう決着のつもりか。まだ一度攻撃を防いだだけじゃないか」
はあ、もう。本当に空気の読めないおじいさんだな。
「気づいてないんですか? ここは吹雪の牢獄だって。『ブリザードチェイン』」
「何っ」
老人が手に持っていただろう剣が、地面にぶつかる音が聞こえてくる。
今の老人は氷の鎖で身動きが取れなくなっている。
「さあ、二人とも出番だよ。一気にやってしまえ」
「行くの!」
「わかったです!」
勢いよく老人に斬りかかろうとする二人。
だが、老人は身動き取れず絶望的な状況であるにも関わらず、全く抵抗の色が見られない。
既にやることは終わったでも言いたげに、じっと攻撃を待っているように見える。
いや、それとも勝ちを確信しているのか。
「「『クロス・ブレード』!」」
「ふっ」
老人はスーとノーが飛び上がったタイミングで怪しく笑った。
「危ない!」
何が起こるかわからなかったが、俺は老人を取り囲むように何重もの壁を作り上げた。
「『サザンクロスビッグバン』!!!」
スキルを叫ぶ声が壁の中で響くと、突然大爆発のような轟音が辺り一体に響いた。
勢いは中で殺したはずだが、音やその余波が辺りまで轟いてきた。
離れているはずが、俺の立っているところまで暴風が吹き、一番近くにいたスーとノーは吹き飛ばされた。
とっさに作り出した壁では防御力が足りず、全てを防ぎ切ることはできなかったようだ。
「あのじいさん。一体何したってんだ?」
「出会って早々キモいとは失礼なやつだな」
青筋を浮かべながら、顔だけだった男は徐々に体まで現した。
老人だけでなくもう一人の男。何にしてもたった二人で勇者たち四人を倒したわけだ。
しかし、勇者たち以外の反応は男が出てくるまで一つだけだった。
急に現れたこの男は一体どこから来たというのだ?
「カイセイは下がってるの」
「ここはノーたちに任せるのです」
「そんな小娘にワシの相手をさせるというのか? カイセイとやら」
「何かおかしなことでも?」
「まあいい。遊んでやる」
俺は前線で戦うタイプとして雇われてないし、おじいさんの指摘はまさしくその通りなのだが、このまま突っ込ませていいものか。
「あいつらはすぐに飛んでくるはずだ。お前はワシのことは構わず、そこに倒れてる奴らを拾って帰れ」
「どういうことですか? 父さん。父さんはどうするつもりですか」
「こいつを抜くんだ。善戦できるだろ」
「近くにいたらむしろ邪魔ということですね。わかりました。ご武運を」
「ああ。お前も無事帰れよ」
何やらぶつぶつ話しているが、俺には丸聞こえだ。それにしても拾って帰るってどういうことだ?
口ぶりからすると勇者のことらしいが、殺した相手を持ち帰る趣味なのか?
なんとも理解しがたい。
それに親子らしいが、暗殺者一家ということなのか?
「さあ、かかってこいよガキども。ワシが相手してやる」
「ノー。行くの!」
「わかったです。スー」
二人が飛び出したのを見て、戦いが始まってしまったことを悟った。
「ああもう! 勝手に行くなっての。『ブリザードプリズン』!」
スキル発動と同時に、辺り一体を猛吹雪が包み込み、視界はほとんど白で塗りつぶされる。
俺の出した吹雪のおかげで、近くに何があるか手に取るようにわかる。だが、息子の方はやはり、どこからともなく出たり消えたりしている。
これは息子の方のスキルなのか?
しかし、一体何をしているんだ。
「ふん。小娘を二人とも突っ込ませていたということは、お前さん、前線に出ながら戦いは不得手と見た」
「その通りですけど、ってあれ?」
確かに声がした方を見たが、誰もいない。
俺のスキルによる反応の方も、もう既に別の場所に老人がいることを示している。
「戦いが不得手なら近くに一人ぐらい戦えるものを置いておくべきだとは思わないか?」
「いえ全然」
「なぜこっちを向いている! 『ソウルブレイカー』!」
いつの間にか抜刀されたゴテゴテした装飾の剣が俺めがけて振り下ろされた。
「『クリスタルブレード』! あっぶな。不意打ちは卑怯じゃんって。暗殺者ってそういうものか」
「誰が暗殺者か!」
なんで怒ってるのかわからないが、ヒヤッとした。
とっさに手元に武器を作り出したからよかったが、当たっていたらなんかヤバそうな雰囲気だった。
なんだったんだ今の。
「ワシの攻撃を防ぐとはな。そもそも防げない攻撃なのだが、やはり、その年で実力はワシを上回っているということか」
「はあ」
この人はもしかして会話が成立しないタイプの人かな?
今更かもしれないが、全て大きな独り言なのかもしれない。
「この勇者の剣で放たれるソウルブレイカーを防ぐとは、ワシの戦った相手だとけんせ」
「カイセイ、こっちにいたの?」
「カイセイは下がっていてほしいです」
「俺はずっと下がってたよ。二人が勝手にどっか行っちゃうから敵が来たんでしょ?」
「人を迷子みたいに言ってほしくないの」
「そうです。カイセイは後衛なのです」
「俺を放置したら敵が来るでしょってことなんだけど」
不服そうに二人とも頬を膨らませてしまった。
一応二人のために全面雪景色にしてあげたんだけどな。
まあ、俺の方が大人気なかったか。なんて思っていると、何に気づいたか二人は急に睨み合いを始めた。
「カイセイの近くにいるのはスーなの!」
「いいえ、カイセイに近くにいるのはノーです!」
「聞け! 老人の話はありがたく思って最後まで聞け! このわかもんが! 教育がなってないぞ!」
「敵同士なのにダラダラ会話しても仕方なくないですか?」
「今はスーが話してるの!」
「ノーも話してるところです!」
「うぬぬ」
いや、話したいならこんなことで図星にならないでほしい。
この人、本当に勇者パーティを壊滅させるほどの実力者なのか? 実力者だからこそおどけているのか?
ひとまず、嵐の鎧を装備して、動きを止めてスーとノーにとどめを刺してもらおう。
「『テンペストアーマー』! さあ、二人にとどめは任せたよ。かっこよくお願いね」
「まあ、カイセイが言うなら仕方ないの。カイセイを守るのがどっちかは後で決めるの」
「そうですね。カイセイの頼みじゃ断れないです。つかず離れずがどっちかは後で決めるのです」
「いや、そんなこと決めなくていいと思うけど」
「もう決着のつもりか。まだ一度攻撃を防いだだけじゃないか」
はあ、もう。本当に空気の読めないおじいさんだな。
「気づいてないんですか? ここは吹雪の牢獄だって。『ブリザードチェイン』」
「何っ」
老人が手に持っていただろう剣が、地面にぶつかる音が聞こえてくる。
今の老人は氷の鎖で身動きが取れなくなっている。
「さあ、二人とも出番だよ。一気にやってしまえ」
「行くの!」
「わかったです!」
勢いよく老人に斬りかかろうとする二人。
だが、老人は身動き取れず絶望的な状況であるにも関わらず、全く抵抗の色が見られない。
既にやることは終わったでも言いたげに、じっと攻撃を待っているように見える。
いや、それとも勝ちを確信しているのか。
「「『クロス・ブレード』!」」
「ふっ」
老人はスーとノーが飛び上がったタイミングで怪しく笑った。
「危ない!」
何が起こるかわからなかったが、俺は老人を取り囲むように何重もの壁を作り上げた。
「『サザンクロスビッグバン』!!!」
スキルを叫ぶ声が壁の中で響くと、突然大爆発のような轟音が辺り一体に響いた。
勢いは中で殺したはずだが、音やその余波が辺りまで轟いてきた。
離れているはずが、俺の立っているところまで暴風が吹き、一番近くにいたスーとノーは吹き飛ばされた。
とっさに作り出した壁では防御力が足りず、全てを防ぎ切ることはできなかったようだ。
「あのじいさん。一体何したってんだ?」
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