魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

文字の大きさ
32 / 48
第一章 勇者パーティ崩壊

第32話 大爆発のその後

しおりを挟む
 老人が発した急な爆発の余波で俺はしばらくその場を警戒にあたった。

 だが、爆発以上のことは何も起こらなかった。

 派手に吹き飛ばされたスーとノーを優しく地面に着地させ、俺は老人を取り囲んだ壁へと歩き出した。

「あ、ありがとなの。カイセイ。助かったの」

「いいって。気にすることじゃない」

「でも、カイセイに助けられたのです」

「だからいいって。あんなに急な攻撃は誰だってかわせるものじゃない。それに二人は勢いよく突っ込んでいたんだ。無事でよかった」

「カイセイは優しいの」

「感謝感謝です」

「ちょ。本当にいいんだって!」

 何を思ったのか、スーもノーも俺の背中に飛び乗ってきた。

 なんだかテンション高いが、戦いの後ということだろうか。

 原因は気になるが、今はそれどころじゃない。あんな爆発を使える人間だ。他にも危険な技を持っているかもしれない。

 生きているなら早めに倒しておかないと面倒なことになりそうだ。爆発だけでも、どこで爆発を起こされるかわからない。

「あれ」


「今度はどうしたの?」

「何かあったんですか?」

「いや、逆だ。あったんじゃなくて、跡形もなくなってる」

 あの壁をとっさに壊して脱出したことは考えられない。爆発で壊れただろうが、その後にまともに行動できたはずはない。老人にもダメージが入ったはずだからだ。

 それに、老人が瞬間移動した時も、息子の方と違って移動がものすごい速いだけだった。

 つまり、スキルで脱出してから爆発したとは考えにくい。

 なら、あれだけの爆発だ。おそらく自爆技の類だろう。

「あのじいさん、スーとノーを巻き込んで自爆するつもりだったのか?」

 とってもびっくりといった様子で、スーもノーも固まっている。

 まあ、あれだけの爆発をくらえば、いかに魔王軍幹部と言えど、無事では済まなかっただろう。

「間に合ってよかった」

「こ、怖かったのー」

「ノーもです。ノーも」

 いきなりどうしたのか、柄にもなく二人は首に抱きついてくる。

 まあ、見た目は子供だし、死にかけたとなれば怯えて当然か。

 老人の反応は消えたようだし、息子の方も出てくる様子はない。ここは一旦帰るか。

「もう大丈夫だから。俺が魔王城まで送ってくよ」

「本当なの?」

「本当ですか?」

「ああ」

 急に元気を取り戻した二人を背負い、俺は魔王城まで移動した。



 しかし、あのじいさんは一体全体何したかったって言うんだ?

 息子の行動も謎だったし、ひとまず全員帰ってくれたということでいいのか。

「お疲れ様。大きな音がここまで聞こえたけど、何かした?」

「いや、俺じゃない。俺じゃないが、パトラにちょっと話があるんだ」

「え、話? やだ。こんなところで? 私まだ心の準備が」

「いや、壁の外まで移動して話をしたいんだけど」

「それならいいわ。移動中で心の準備もできるだろうし」

 やはり、パトラもショックなのだろう。顔を赤くして動揺している。

 自爆による大爆発。

 全員が全員使えるものでもないだろうが、今回のようにわけのわからない連中が集団でやってきたらその限りではない。

 もっとも、本当に自爆なのかはこの目で見たわけではないためわからないが、警戒しておく価値はあろう。

 俺は壁の外、老人と戦った現場まで移動するとパトラに事情を説明した。

「な、なあんだ。そっちね。そうよね。カイセイが急に、ね。そんなわけないか」

「なんの話?」

「ううん。なんでもない。こっちの話だから」

 まだ顔を赤くして動揺している様子のパトラ。

 情報を整理するために独り言を言っているようだが、いまいちどういうことかわからない。

 しかし、不思議だ。改めて見てみると、勇者たちの死体がない。確かに戦いが始まった時にはあったはずだ。

 それに、息子の方の動向も不自然だ。なぜ一切援護しなかったんだ。

 あれだけの力があれば、不意打ちは容易だろうに。

「それで、今回の相手は警戒すべきってことね」

「ああ。今はなぜか帰ってくれたから問題にならなかったが、次来た時、どんな手を使ってくるかわからない。ゆらゆら揺らめいて出たり消えたりしていたことしか俺にもわからなかった」

「そっか。ま、みんな怪我がなかったんだし、それがいいじゃん」

「だな」

「それに、ゆらゆら揺らめくようだったってことはわかったんでしょ?」

「そうだけど、なんかのヒントになるか? 顔だけ出したり、そっから体が生えたりって」

 俺の言葉に少し考える様子のパトラ。もしかして能力に思い当たる節があるのか?

 反応が消えるような相手だ。なんでも対策を知ることができるならありがたいが。

「似たようなのに霧の魔竜ってのがこの周辺に住んでるんだ。近くを通るたびに道に迷う子が出てくるから、討伐に向かわせようかと思ってたところなんだけど、カイセイお願いできる?」

 それ完全に俺に押し付けようとしてんだろ。

 まあいいけど。防衛できないような相手のヒントになるかもしれない。行ってみる価値はあるか。

「助っ人も頼んでおくから。頼りにしてるよ?」

「わっかりました!」

 と言っても霧の魔竜か。名前の響きからして強そうだが、そんなのどうやって倒せばいいんだ?

 ま、助っ人ってのがいるらしいし、その人から聞けばいいか。

「明日にも行くって言ってたから後で紹介するね」

「おう。え、明日? 早くない?」

「まあ、こっちとしては前々から準備してたことだからね。急だけどお願い」

 上目遣いに甘えた声で頼み込まれ、俺は改めて承諾してしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

処理中です...