魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第33話 ダークエルフの助っ人

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 紫がかった艶のある髪に、キレイな褐色の肌。とんがった耳をした女の子。それが今回の助っ人らしい。

 パトラの言ってた見た目をしてるけど、この人か?

 確か種族はダークエルフとかって言ってたような。

「すいません」

「はい。あっ、幹部の方が自分に何か用ですか?」

「ああいや、そんなに緊張しないでいいですよ。聞きたいのは名前だけなので。あなたがアルチ・フォーグナーさんですか?」

「はい。ということは、魔王様の言っていたカイセイさんはあなたですか?」

「そうです」

 どうやら合っていたようだ。

 俺はパトラの紹介で霧の魔竜討伐の助っ人アルチさんと合流した。

「改めまして、アルチ・フォーグナーです。まだまだ新人ですがよろしくお願いします」

「こちらこそ。カイセイ・アークランドです。こちらこそよろしくお願いします。さっき俺のこと幹部だって言いましたけど、アルチさんも幹部ですよね?」

「一応、ですけど」

「なら、俺の方が新人なんでこき使ってください」

「そうさせてもらいます。あなたとなら風に乗れると魔王様も行っていたので」

「パトラが?」

 風に乗れるってなんだ? よくわからないけど。

 というか、できるかどうかわからないことを勝手に約束されても困るのだが。

 なんか物凄く期待に満ちた目を向けられているが、そんなに重要なことなのか?

「ひとまず、案内お願いできますか?」

「えっ! 徒歩移動なんですか?」

「行ったことない場所までだと高速移動は事故の可能性があるので」

「そう、なんですね……」

 アルチさん、早速がっかりした様子だ。なんだ? 風に乗るって高速移動のことだったのか? それとも、今のところの反応に似合わずこの人も戦闘狂なのか?

 俺も謎は気持ち悪いし早く倒してしまいたいが、さすがにそこまでノリノリではない。

 そもそも知らない場所に高速移動して到着というのはなかなかうまくいかないのだ。

 きっと、全く別のところについてしまい、余計迷子になるのがオチだ。

 地形を把握していても、スキルを解放してからの使い方がまだ浅いせいで、慣れないことは意外とうまくいかない。ここのところは要練習ってところだ。

「それじゃあ案内しますね。ついてきてください」

「お願いします」

 いきなり走り出したアルチさんに続いて俺も後ろを走り出した。

 今まで会ってきた人の中では一番の常識人かもしれない。



 アルチさんの不思議な服装と手に持つ謎の板のせいなのか、途中で加速しないと置いていかれそうになった。

 それでもなんとか背中をとらえ続け、霧の魔竜のすみかまで辿り着くことができた。

 俺の息切れなど気にしていない様子で、アルチさんはケロッとしている。

 これはエルフだからってことも関係してるのか?

 だが、それより気になることがある。

「アルチさん。その服どうなってるんですか?」

 ものすごいヒラヒラして、実態があるのかどうか不明な、布のような何か。それを体に纏っている。

 服なのかすら俺にはわからないが、特殊な素材のおかげで移動が速かったのかもしれない。

 再現できるなら、移動の時は使えるかもしれない。

「……いで」

「はい?」

「み、見ないでください。あんまりジロジロ見られるのは、慣れてないので」

「あ、あ! すいません。そうですねよ。ごめんなさい」

 そんなにジロジロ見ていたつもりはないが、気になってじっくり見てしまっていたのだろう。

 アルチさんは照れたように頬を赤く染めている。照れ屋なのかもしれない。

 しかし、移動中、霧の魔竜の説明中は照れ屋な様子はなかったけど、俺そんなに見てたかな。

 素材についても聞き出せなかったし、スキを見て解析してみるか。

 俺が目線をそらしていると、アルチさんが突然咳払いをした。

「それじゃあカイセイさん、相手は霧の魔竜です。濃い霧を出し、自分たちの感覚を麻痺させてきます。そのせいで道に迷う人が続出しているので、魔王様から依頼が出たという話はしましたね」

「はい。聞きました」

「洞窟で迷うことはないかもしれませんが、戦闘中の感覚麻痺には注意してください」

「はい!」

「それじゃあ準備はいいですか?」

「もちろん」

「なら、行きましょう!」

 アルチさんのかけ声で俺は洞窟の中に入った。
 
 洞窟の中は以前入った南の果ての洞窟のように、ドラゴンの能力が隅々まで行き渡っていた。

 すでに濃い霧で目の前すらよく見えず、スキルを使わなければまっすぐ進めない状況だった。

「霧なら凍らせてみるとか?」

「いいえ、それだと余計に見にくくなると思います。吹き飛ばしてもらえますか? 霧払いです」

「いいですけど、その板はしっかり持ってくださいね? 気をつけますけど、飛ばされるかもしれないので」

「ああ、それならご心配なく」

 アルチさんは何故か板に乗ると俺の方を目を輝かせながら見てきた。

「えーと、それはどういう」

「自分はこれで風に乗るんです。カイセイさん。お願いします。自分は大丈夫ですから」

「はあ」

 ちょっと何言ってるのかよくわからないが、期待されてることはわかる。

 やけにテンション上がっているあたり、本当に風が好きなのかもしれない。

「『テンペストアーマー』!」

 俺も嵐の鎧を装備し、洞窟の奥と思われる方向に手を突き出した。

「それじゃあ、いきますよ? 『サイクロン』!」

 どのくらいの威力がいいかわからないが、霧を全て吹き飛ばすつもりで、俺は突風を突き出した。

 真っ白だった視界から霧が消え、普通の洞窟にいるように明かりがあれば先がわかるようになった。

「おお、確かに見える。アルチさんの言う通りだ。ってあれ? アルチさん? アルチさーん?」

 いない。もしかして、注意していたのに風によって吹き飛ばされた?

 いや、アルチさんには当たらないようにスキルを発動したはず。

 だが、反応を確認すると、ドラゴンと思われる大きな反応の方へ高速で接近するアルチさんの反応がある。

「奥へ行っていたらドラゴンと一対一だ。急ごう」

 さすがに戦闘を始めることはないだろうが、ぶつかってしまったら元も子もない。

 俺だって、アルチさんが通ったことで道筋の分かるようになっている。この洞窟の中で迷うことはない。

「待っててください」

 俺は洞窟の奥まで高速移動を開始した。
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