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第一章 勇者パーティ崩壊
第34話 霧の魔竜との戦い
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音が近い。
ドラゴンの咆哮も聞こえてくる。
これはもう戦いは始まっているのか。
「アルチさん!」
俺が洞窟の奥まで辿り着くと、そこでは板に乗り、宙に浮くアルチさんの姿。そして、そのアルチさんに翻弄されるドラゴンの姿があった。
「遅いよカイセイ。もう風が止みそうだよ。霧も濃くなってきたし追加お願い」
「え……」
「追加だよ追加」
「は、え?」
いや、誰? テンションが変わりすぎじゃないか?
「ほらはーやーく! 移動まで順調だったんだからいけるでしょ。風の追加。さっきのよりすごいのあるんでしょ? 壁に使ってるようなやつ。アレにしてよ」
「いやあれは」
「いいから!」
アルチさんのテンションがおかしいが、霧が濃くなってきているのは事実なようだ。
吹き飛ばした直後は鮮明だったドラゴンの反応も徐々にわからなくなってきている。
霧でも隠しきれない大きな反応ということはわかるが、近くにいるのにドラゴンとは思えない弱い反応しか感知できない。
なるほど、ヒントになるとはこういうことか。
このまま霧と一体化されては相手できなくなる。
「わかった。『デストロイディザスター』!」
俺はなんとか壁と同じ嵐を洞窟最奥に作り出した。
ひとまず全体を眺めてみると、少し頭が冷えてくる。
なんなんだあれ。板に乗ってたし、話し方違ったし、見た目は同じだけど本当にさっきまでのアルチさんか?
「いいじゃん。最高じゃん! いい風! いい風! これだよこれ。魔王様の言う通りだ。ワタシが求めたのはこれだよ」
目にも止まらぬ速さで矢を放ち、攻撃を加えていくアルチさん。
俺はその姿を黙って見ていることにした。攻撃に参加すれば巻き添えをくらいそうだ。
そもそも、嵐によるダメージに加え、アルチさんの攻撃でドラゴンがみるみるうちに弱っている。俺の出る幕はこれ以上なさそうだ。
よく見ると、嵐により鱗の剥がれたところをしっかりと矢で射抜いていることがわかる。
「これで決まり! 『スプレッドシュート』!」
一度に何発もの矢が放たれると、ドラゴンは力尽きたように地面に倒れ込んだ。
霧の発生もなくなり、ドラゴンの反応も徐々に弱まっていく。
レーダーに集中し反応を確かめる精度を上げると、弱まるドラゴンの反応もしっかりと掴める。
今の実力だと練習は必要かもしれないが、出たり消えたりは霧の魔竜と同じような対処でなんとかなるかもしれない。
「イエーイ! カイセイ!」
急に手を上げて笑顔で近づいてきたアルチさん。
なんだ。なんの儀式だ?
「ノリ悪いなー。ハイタッチでしょ?」
「あ、ああ。ハイタッチ」
そうだ。戦闘は終わったんだった。
俺は片手を上げ、アルチさんに手を叩かれた。
そして、アルチさんはすぐに肩を組んでくると、笑顔で俺のことを見た。
「いいじゃん。カイセイ! カイセイさ。ワタシの専属幹部にならない? いわばパートナー? 報酬は弾むからさ。こんなにいい風、自然じゃ起こせないよ。カイセイが専属で起こしてくれたら、ワタシいつでも乗れるじゃん。戦闘でもベストパートナーっぽいし、よくない?」
「え、いや、俺は」
「まー考えといてよ。すぐに答えは出ないだろうしさ。でも、ワタシ幹部の中でも実力には自信があるから。少なくともスピード勝負じゃ誰にも負けないよ」
まあ、確かに素のスピードも、俺の作り出す環境の中でのスピードも群を抜いていた。
ただ、他の人には別で得意な環境があり、別で得意な戦い方がある。
一概に比較はできないんじゃないかな。
「あ、あの」
俺が話しかけようとした時、アルチさんは急に肩組みを止めると、俺から距離を取り顔を隠して縮こまった。
戻った、のか?
「あの」
「……ごめ、なさい」
「はい?」
「ごめんなさい。急にくっついたりしてうざかったですよね。いつもやってしまうんです。テンションが上がるとああなるんです」
ああって、ドラゴンと戦ってた時のやつか?
「いや、うざくないですよ。そんなに気にしないでください。それに、専属だなんだってのはアルチさんが初めてじゃないので」
「ほ、本当ですか?」
「本当ですよ。勝手に色々言うのは魔王軍の宿命みたいなものなんじゃないんですか?」
知らないけど。というかこれフォローになってないよな。毎回そんなテンションだから、急な変化には驚いたが、俺としては別にもう慣れっこだ。
受けるかどうかと聞かれれば微妙だが。
俺の言葉をどう受け取ったのかわからないが、アルチさんは立ち上がると俺のことをまっすぐ見つめてきた。
「自分。頑張りますので、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
ダークエルフって聞いて、もっととっつくにくい人なのかと思ったが、アルチさんはそうでもないんだな。
基本真面目で礼儀正しいというか。
ま、人間にも色々な性格の人がいるしそういうことなんだろう。
にしても、俺に頑張るって言ってきたのはどう言うことなんだろう。
「自分は先ほど見せたように、カイセイさんが起こしてくれた風や、自然の風に乗って攻撃するのが得意なんです。もちろん遠くからの狙撃もできます。自分の力が必要な時はいつでも言ってください」
「なるほど。わかった」
そういうことね。今後協力関係になった時のためのよろしくってことか。
俺もお返しに自分の能力について軽く説明した。
何から何まで話してもわかってもらえるものじゃないし、器用にできる手近なところの操作について話した。
「俺からもよろしく」
「はい。よろしくお願いします。できれば、その」
「何ですか?」
「何かあった時は、じ、自分を呼んでもらえると嬉しいです!」
急に大きな声を出してアルチさんは言った。
助っ人としてってことか。
まあ、出番があればきっと頼むだろう。
「わかった。俺もアルチさんに頼れる時は頼ろうと思うよ」
「はい。じゃんじゃん頼ってください。ふふ」
人助けが好きなのか。嬉しそうなアルチさんを見ていると俺まで嬉しくなってくる。
しかし、これで霧の魔竜がいなくなり道に迷う人も減るはずだ。
ヒントも得られたし、いい戦いだった。
「あれ、アルチさんって服装まで変えてましたっけ?」
いつの間にやらアルチさんは掴みどころのない服から、丈夫そうな服へと変わっていた。
実体化に伴ってか、最低限隠すべきところだけ隠すような形に変わっているが、一体どんな素材でできているんだ。
よっぽと恥ずかしいのか、アルチさんは急にしゃがみ込んだ。
「服は見ないで!」
アルチさんは怒鳴られてしまった。
ドラゴンの咆哮も聞こえてくる。
これはもう戦いは始まっているのか。
「アルチさん!」
俺が洞窟の奥まで辿り着くと、そこでは板に乗り、宙に浮くアルチさんの姿。そして、そのアルチさんに翻弄されるドラゴンの姿があった。
「遅いよカイセイ。もう風が止みそうだよ。霧も濃くなってきたし追加お願い」
「え……」
「追加だよ追加」
「は、え?」
いや、誰? テンションが変わりすぎじゃないか?
「ほらはーやーく! 移動まで順調だったんだからいけるでしょ。風の追加。さっきのよりすごいのあるんでしょ? 壁に使ってるようなやつ。アレにしてよ」
「いやあれは」
「いいから!」
アルチさんのテンションがおかしいが、霧が濃くなってきているのは事実なようだ。
吹き飛ばした直後は鮮明だったドラゴンの反応も徐々にわからなくなってきている。
霧でも隠しきれない大きな反応ということはわかるが、近くにいるのにドラゴンとは思えない弱い反応しか感知できない。
なるほど、ヒントになるとはこういうことか。
このまま霧と一体化されては相手できなくなる。
「わかった。『デストロイディザスター』!」
俺はなんとか壁と同じ嵐を洞窟最奥に作り出した。
ひとまず全体を眺めてみると、少し頭が冷えてくる。
なんなんだあれ。板に乗ってたし、話し方違ったし、見た目は同じだけど本当にさっきまでのアルチさんか?
「いいじゃん。最高じゃん! いい風! いい風! これだよこれ。魔王様の言う通りだ。ワタシが求めたのはこれだよ」
目にも止まらぬ速さで矢を放ち、攻撃を加えていくアルチさん。
俺はその姿を黙って見ていることにした。攻撃に参加すれば巻き添えをくらいそうだ。
そもそも、嵐によるダメージに加え、アルチさんの攻撃でドラゴンがみるみるうちに弱っている。俺の出る幕はこれ以上なさそうだ。
よく見ると、嵐により鱗の剥がれたところをしっかりと矢で射抜いていることがわかる。
「これで決まり! 『スプレッドシュート』!」
一度に何発もの矢が放たれると、ドラゴンは力尽きたように地面に倒れ込んだ。
霧の発生もなくなり、ドラゴンの反応も徐々に弱まっていく。
レーダーに集中し反応を確かめる精度を上げると、弱まるドラゴンの反応もしっかりと掴める。
今の実力だと練習は必要かもしれないが、出たり消えたりは霧の魔竜と同じような対処でなんとかなるかもしれない。
「イエーイ! カイセイ!」
急に手を上げて笑顔で近づいてきたアルチさん。
なんだ。なんの儀式だ?
「ノリ悪いなー。ハイタッチでしょ?」
「あ、ああ。ハイタッチ」
そうだ。戦闘は終わったんだった。
俺は片手を上げ、アルチさんに手を叩かれた。
そして、アルチさんはすぐに肩を組んでくると、笑顔で俺のことを見た。
「いいじゃん。カイセイ! カイセイさ。ワタシの専属幹部にならない? いわばパートナー? 報酬は弾むからさ。こんなにいい風、自然じゃ起こせないよ。カイセイが専属で起こしてくれたら、ワタシいつでも乗れるじゃん。戦闘でもベストパートナーっぽいし、よくない?」
「え、いや、俺は」
「まー考えといてよ。すぐに答えは出ないだろうしさ。でも、ワタシ幹部の中でも実力には自信があるから。少なくともスピード勝負じゃ誰にも負けないよ」
まあ、確かに素のスピードも、俺の作り出す環境の中でのスピードも群を抜いていた。
ただ、他の人には別で得意な環境があり、別で得意な戦い方がある。
一概に比較はできないんじゃないかな。
「あ、あの」
俺が話しかけようとした時、アルチさんは急に肩組みを止めると、俺から距離を取り顔を隠して縮こまった。
戻った、のか?
「あの」
「……ごめ、なさい」
「はい?」
「ごめんなさい。急にくっついたりしてうざかったですよね。いつもやってしまうんです。テンションが上がるとああなるんです」
ああって、ドラゴンと戦ってた時のやつか?
「いや、うざくないですよ。そんなに気にしないでください。それに、専属だなんだってのはアルチさんが初めてじゃないので」
「ほ、本当ですか?」
「本当ですよ。勝手に色々言うのは魔王軍の宿命みたいなものなんじゃないんですか?」
知らないけど。というかこれフォローになってないよな。毎回そんなテンションだから、急な変化には驚いたが、俺としては別にもう慣れっこだ。
受けるかどうかと聞かれれば微妙だが。
俺の言葉をどう受け取ったのかわからないが、アルチさんは立ち上がると俺のことをまっすぐ見つめてきた。
「自分。頑張りますので、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
ダークエルフって聞いて、もっととっつくにくい人なのかと思ったが、アルチさんはそうでもないんだな。
基本真面目で礼儀正しいというか。
ま、人間にも色々な性格の人がいるしそういうことなんだろう。
にしても、俺に頑張るって言ってきたのはどう言うことなんだろう。
「自分は先ほど見せたように、カイセイさんが起こしてくれた風や、自然の風に乗って攻撃するのが得意なんです。もちろん遠くからの狙撃もできます。自分の力が必要な時はいつでも言ってください」
「なるほど。わかった」
そういうことね。今後協力関係になった時のためのよろしくってことか。
俺もお返しに自分の能力について軽く説明した。
何から何まで話してもわかってもらえるものじゃないし、器用にできる手近なところの操作について話した。
「俺からもよろしく」
「はい。よろしくお願いします。できれば、その」
「何ですか?」
「何かあった時は、じ、自分を呼んでもらえると嬉しいです!」
急に大きな声を出してアルチさんは言った。
助っ人としてってことか。
まあ、出番があればきっと頼むだろう。
「わかった。俺もアルチさんに頼れる時は頼ろうと思うよ」
「はい。じゃんじゃん頼ってください。ふふ」
人助けが好きなのか。嬉しそうなアルチさんを見ていると俺まで嬉しくなってくる。
しかし、これで霧の魔竜がいなくなり道に迷う人も減るはずだ。
ヒントも得られたし、いい戦いだった。
「あれ、アルチさんって服装まで変えてましたっけ?」
いつの間にやらアルチさんは掴みどころのない服から、丈夫そうな服へと変わっていた。
実体化に伴ってか、最低限隠すべきところだけ隠すような形に変わっているが、一体どんな素材でできているんだ。
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