魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第43話 無感情の勇者たち

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「来た」

 俺はここ最近敵感知の反応の感度を上げるため、毎日のように城外を感知していた。

 まだ、誰がどの反応かわかっているわけではないが、新しい反応がやってきたことはわかった。

 見つかった反応は三つ。バドン、マジュナ、ヒルギスの三人と似ている。

 おそらくガードンと同じ状態なのだろう。

「今日は私たちまで呼び出したけど、何かあったの?」

 俺の呼びかけに応じ、パトラを始め魔王軍の幹部が数人集まってきた。

「ああ。今日はあいつらは全員叩き潰す」

「カイセイがやる気なんて珍しいね」

「全力を出して俺が反応を追えない相手なんて、ここ最近で初めてだからな。俺の力を試すためにもちょうどいい相手だと思って」

 そして、おそらく今まで相手してきた中で一番厄介な敵だ。

 神出鬼没で反応を追えない。

 もしかしたら中にいるかもしれないと思ったが、壁の中に霧を充満させても知らない人間の反応は感知できなかった。

 こればっかりは祈るしかないが、まだやって来ていないと信じたい。

「今回は相手もパーティだと考える。そのため、相手はそれぞれでしてほしい。マジュナという魔法使いをアルチさん。ヒルギスという聖女をスーとノーの二人。そして、勇者バドンをレバレちゃんに任せたい」

「わかりました」

「スーはわかったのー」

「ノーもです」

「ボクもそれでいいけど、あれ、カイセイ君と魔王様は?」

「俺たちは別でやることがある」

「えー。ずるーい。勇者を任せるって言って他でやることがあるって。絶対そっちの方が面白いじゃん」

 まあ、そんなこと言う気がした。

 レバレちゃんだけじゃなく、他の三人も目を輝かせながらこっちを見てきている。

 みんなして戦闘狂なんだな。まあ、ずっと戦えって言ってこないだけいいか。

 何にしても、相手がどんな敵かわからない以上、むやみに任せられない。

「俺とパトラが相手をするやつは強いか弱いかわからない。スキルでどこにいるかわからないだけで、他に強みがあるのか不明だ。だから、勇者パーティの三人を三人それぞれに任せたい。この間のガードンみたいにしたいから、そういう意味で実力者のみんなにしか頼めないんだ」

「まあ、そう言われれば仕方ないです」

「スーも大人しくしとくのー」

「ノーもそうするです」

「カイセイ君が言うんだし本当なんだろうけど、その厄介なスキルってのは?」

 俺は目を伏せた。

「正直、どんなものか今もわかってません。だから、それを確かめるためにも俺が直接行かないといけないんです」

「なるほどね」

 レバレちゃんも納得してくれたようだ。

「もちろん。バックアップは全力でやる。思う存分戦ってくれればいい」

「楽しみにしてます」

「腕が鳴るのー」

「ノーもワクワクです」

「それなら文句はないかな。じゃ、気をつけてね」

「はい。行こうパトラ」

「うん」

 俺はパーティを嵐の壁で分断、スキルによってフィールドを作り出し、他のところに霧を充満させた。



 出発前、僕はアジトでランドリアさんと向き合った。

「そう言えば、ランドリアさんのスキルはどんなものなんですか?」

 僕は聞いておいた方がいいと思い口に出した。

 しかし、ランドリアさんはどうしてか、苦い顔をした。

「どうしたんですか?」

「あ、いや。少し説明が難しくてね。どんなふうに見えてるかな?」

「気づけばいたり、いなかったり。そんな感じですかね」

 僕の気づいていることと言えばその程度だ。

 正直スキルと言うには地味じゃないか?

 魔法のように派手な攻撃でもなければ、何かが生み出されるわけでもない。

 強そうに感じない。

「それで大体合ってる」

「本当ですか?」

「まあね。これでも私は冒険者だ。自分に与えられたスキルでやっていく術は心得ている。試しに攻撃してみてくれないか?」

「いいんですか?」

「構わない」

 僕が今持っているのは本物の剣だ。

 対して、ランドリアさんは手に何も持っていない。

 切ったら痛いんじゃないか?

「い、いきますよ」

「ああ」

 僕は思いっきり剣を振り抜いた。

 しかし、手応えはなかった。

「あれ」

 すでにランドリアさんは目の前から消えていた。

 そして、肩を叩かれる感覚。

「嘘だ」

「とまあ、こんな感じさ。これなら私の攻撃が一方的に通るだろ?」

「確かに、移動だけなのに凄まじいですね」

「練習の成果さ」

 なら、僕は一体何を練習してきたのだろう。

 地味で使えなさそうなスキルでも使い方次第でどうにでもなるとわかった今、僕にできることは一体なんなのだろう。

「それじゃ、ここでリラックスのために深呼吸しようか」

「戦う前に深呼吸ですか?」

「そうさ。無駄に力が入っていたら、全力なんて出せないだろう?」

「なるほど」

 ランドリアさんの言うことは毎回ためになる。

 僕は思いっきり息を吸い込むと、息を吐き出した。

 なんだろう。力が入りすぎていたのか、やけに体から力が抜ける。

 視界がくらむと言うか、世界が回っているように見える。

「アタシ、あれ。力が」

「私も、なんだか急に気分が悪く」

「マジュナ? ヒルギス?」

 二人がいきなりその場に倒れ込んだ。

 僕はなんとか、踏ん張ってその場に留まっているが、いつまで保つかわからない。

 まさか、重力操作が始まっているのか? 出てくるまでは大丈夫って話だったのに。

 それにまだアジトだぞ?

「おい。大丈夫か? おい! しっかりしろ……い! ……」

 くそ。

 ランドリアさんの声が遠のいていく。

 どうして。こんな時に。ランドリアさん。僕たちは準備しすぎたのか?

 でも、ランドリアさん。どうして笑っているんだ?

 けいかくどおり?
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