魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜

マグローK

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第一章 勇者パーティ崩壊

第45話 スー&ノーVSヒルギス

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 相変わらず不思議なのー。

 この壁はどうして通る人によってダメージがあったり、なかったりするのー?

 何度考えてもわからないのー。

「どうしたんですかスー」

「なんでもないのー」

 壁に手を突き出してひんやりとした空気を味わっていると、何かが手にぶつけられたのー。

 軽くキャッチすると、どうやら武器らしいのー。

 引っ張って確認しようとすると、全て粉々になって無くなってしまったのー。

「スー。すこい音がしなかったです?」

「気のせいなのー。とりあえず中に入ってみるのー」

 妹のノーは心配しすぎなのー。

 カイセイの仲間だったからといって、全員カイセイみたいとは限らないのー。

 カイセイが同じ場所にいなくても吹雪になっていることを不思議に思いながら、スーは壁の中に入ったのー。

 そこには、なんだかどこを見ているのかわからない女の人がいたのー。

「あれがヒルギスなのー?」

「そうじゃないです? カイセイが言っていた人です」

「寒くないのー?」

「確かに、寒くないです?」

 今から戦う相手に聞くのは変かもしれないけど、気になったのー。

 吹雪の中でスーやノーみたく特に耐性もあるようには見えないのに、薄い布を着ているだけなのー。

「……」

「話せないのー?」

「どうしたんです?」

「……神よ……に……」

 何か言ってるけど吹雪のせいでよく聞こえないのー。

 でも、質問に答えてるようには感じないのー。

「もう戦いは始まってるのー」

「そうです。容赦はしないです」

 カイセイは聖女と言っていたのー。

 スーもノーも魔王軍幹部。きっと相性は悪いのー。

「聖女だって魔法を使うには詠唱が必要なはずなのー。こんな吹雪の中じゃまともに声を出せないのー」

「その通りです。今のうちに叩くです」

 スーはノーと一緒に地面を思いっきり蹴ったのー。

 カイセイのおかげでぐんぐんと前に進んでいくのー。

 ドラゴンと戦った時よりもなんだか速く動けるのー。

 カイセイも成長してるのー?

「動きがないのはもしかして吹雪でしゃべれないのー?」

「そうかもです」

 これなら勝ったも同然なのー。

 スーもノーも慣れてるからなんともなくても、ヒルギスは無理なのー。

「話せないならお話しは後なのー」

「そうするです」

「『フラッシュ』!」

「まぶしいのー!」

「ノーも!」

 ただのめくらましなのー? それにしてはなんだか目が痛いのー。

 やっぱり聖女相手は相性が悪いのー。

 でも、カイセイのサポートのおかげか治りは早いのー。

「今度はこっちの番なのー」

「ノーたちの見せ場です」

 腱を切っても治してくれる。だから、遠慮なく動きを止めるのー。

 それでも、またフラッシュをいつ使われるかわからないのー。

 あれはどこかにいれば防げるとかそういうのじゃないのー。

 しかも、ここに防げるものはないのー。

 だからきっと、戦っている間は防ぐことができないのー。

「スーは目をつむったのー」

「ノーもです」

「……」

 驚かないのー?

 いや、目を開けさせる作戦かもしれないのー。

「いいから行くのー」

「行くです」

 こんなに吹雪が強くてはそもそも視界なんて頼りにならないのー。

 スーはそもそも視界に頼らなくても自由に動けるように、音には敏感なのー。

 ノーも同じなのー。

 だから、もうフラッシュは怖くないのー。

「一発目なのー!」

「一発目です」

「……」

 同時に切りかかってみたけど、声は聞こえないのー。

 我慢してるのー?

 やっぱり勇者パーティってのはすごいみたいなのー。

「普通の人なら泣き叫ぶところなのー」

「頑丈なんです? いや、そうじゃないはずです。多分、我慢強いんです」

「……」

 どうやって鍛えたかは秘密なのー?

 スーもノーとの特訓は秘密なのー。

 カイセイに聞かれたら答えるかもしれないのー。

 でも、今はカイセイに聞かれてないのー。

「我慢できるのも今のうちなのー」

「そうです。いつまでもじっとしていられるものじゃないです」

「『フラッシュ』!」

「だから効かないのー」

「もしかして、話し過ぎているから目を開けていると思ったんですか?」

「……」

 こっちの質問には答えないのー。

 続けて手に持つ武器を振り回している音がするけど、それも当たらないのー。

 でも、ヒルギスもスーたちが見えたないことがよくわかったのー。

「ならもう何も怖くないのー」

「二人で行くです!」

 でも、今回はトドメを刺すことが目的じゃないのー。

 ヒルギスをカイセイに届けるのが目的なのー。

 怪我はさせられても生かしておかないとダメなのー。

 だから、ブリザードスラッシュは封印なのー。

 攻撃を当てるのを諦めたのか、大の字に構えているのー。

「代わりにちくちくやるのー」

「少しの痛みは我慢できるんですよね」

 もう返事は待たないのー。

 スーはノーと一緒にヒルギスを切ったのー。

 構えても無駄なのー。

 すぐに地面に膝をついたのー。

 さすがに驚いたのか、息を吸ったように聞こえたのー。

「でも、まだ動けるのー」

「警戒は必要です」

 ヒルギスもまだ諦めていないことがわかるのー。

 だから、しっかりと応えてあげるのー。

 素早い動きに止めない攻撃で、今度は体から地面に倒れた大きな音がしたのー。

「さすがにこれだけ動きを止めらば大丈夫なのー」

「この寒い中を放置するだけでもよかった気がするです」

「それじゃ死んじゃうのー」

「それもそうです」

 スーはノーとヒルギスの手を握ったのー。

 それで、入ってきたところへ戻ってきたのー。

「お疲れ様です。えっ」

「お疲れなのー」

「お疲れ様です」

「どうかしたのー?」

「何かあったですか?」

「い、いや、なんでもない、かな」

 スーたちが戻って来た時にはもうアルチはいたのー。

 スーたちより早かったなんて、なんだか悔しいのー。

 でも、様子が変なのー。

 目を合わせてくれないのー。

 具合が悪いのー?

「大丈夫ですから」

 顔を覗き込んでも、そっぽを向かれたのー。

 スーは寂しいのー。
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