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巻き戻り前
幸せな時間
しおりを挟む「アイシャ、起こしてしまったか。おはよう。」
そう言って寝起きの私に優しいキスを落とすのは半年前に夫となったレオナルドだ。
貴族にしては珍しく、恋愛結婚が許された私たちは仕事も私生活も順調で、あとはいつ子供に恵まれるのかしらと毎日を幸せに過ごしていた。
母親同士が学生の頃からの友人だったこともあり、物心ついたころにはいつもレオナルド、レオナルドのお兄様のジャックお義兄様と婚約者だったジョージアナお義姉様や私のお兄様の五人でよく一緒に時間をすごしていた。
小さな時から、アイシャは俺のお嫁さんになるんだよ?と言い続けてきたレオナルドとは私が8歳になったときに本当に婚約が結ばれた。
私の物心がついた時からずっとレオナルドが傍にいてくれた。
「なんで、レオのお嫁さんになるの?」
と私が聞くと
「だって、アイシャがとても可愛くて、僕が守ってあげなきゃいけないからね。アイシャは僕のお嫁さんに絶対になるんだよ?」
と言い聞かされてきた。
幼心に、そうなのかなあと絆されてしまったのもあったが、成長するにつれていつも私の見方でいてくれて守ってくれるレオナルドに恋心を抱くのはあっという間のことだった。
3歳上のレオナルドは成長するにつれその精悍な面差しに加え、身体能力、頭脳共に群を抜いて目立つ存在だったので釣書が黙っていても送り続けられていたようだったが、私が婚約を了承する気になるまですべてを断ってくれていたらしい。
それはそれは、頑なに、絶対に私と結婚するんだと言ってきかなかったのよ、と今は亡きお義母さまが笑いながらおっしゃっていたのを思い出す。
私の母とお義母様は親友で、共に出かけて行った先で事故に会い二人とも亡くなってしまった。
急に母を失い悲しみに暮れていた私に、自分も悲しいはずのレオナルドはずっと寄り添ってくれていた。
成長するにつれて、端正な顔立ちは磨きがかかり身長も伸びて、鍛錬で強くたくましく引き締まった体を持つレオナルドはそれはもう、他の女性の視線を一心に受けていた。
婚約が決まったときはまだレオナルドは11歳だったが、それでも周囲の女の子たちは落胆の色を隠せなかった。
そして男の子達はというと、いつも私に何か言いたそうな顔をしていたがそんな時はいつもレオナルドが傍で守ってくれていた。
私達はいつも二人で一つという言葉がしっくりとくるような関係で、いつもレオナルドが私の隣にいてくれるのが自然でとても心地よかった。
婚約から9年後の私が17歳、レオナルドが20歳の時今年、めでたく夫婦になった私たちはその長い婚約期間を惜しむかのような仲の良さを発揮した。
幼いころから結婚するんだと言い続けてきたレオナルドはその喜びを爆発させてしまったようで、その浮かれように私の方が恥ずかしくなってしまったほどだ。
私達の結婚生活には愛が溢れ、仕えてくれる使用人たちもそんな私たちを温かい目で見守ってくれていた。
ずっとこんな幸せな時間が流れていくとその時の私は全く疑っていなかった。
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