今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。

梅雨の人

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愛しい人

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冬の寒さが残るその日、ついにエルザと新王太子ダグラスの挙式の日を迎えた。 

エルザがダニエルの求婚を受け入れたその日から、たったの半年の出来事だったが国内外から多数の祝福の声が寄せられた。 

その日は朝早くから準備のため磨かれていたエルザは、この数年で自分に起きたことを思い返していた。 

まさか、ルーカスに浮気されて第二妃とされた挙句、白い結婚で家に戻った自分が聖女の力を覚醒し、今度はダニエルに望まれ王太子妃として王家に再び嫁ぐことになるとは…。 

思い返してみればあっという間の出来事だった。 

その全てが幸せな時間だったとは言い切れず、しかし、いつもダグラスが自分の傍に寄り添ってくれたのを思い返したエルザは思わず頬を緩めた。 

そして、やっと準備が整ったエルザの元にダグラスが訪ねてきた。 


「エルザ…私の愛する人。 

これから再び君に王家に嫁ぎ、王太子妃として大変な苦労をさせてしまう私の我儘を許してほしい…。 

君は、誰よりも美しくて、優しくて、身分など分け隔てなく思いやりを持ち、賢く、私の心をいつも熱くそして癒してくれる素晴らしい女性だ…。私がエルザの素晴らしいところを語りつくしたら式が終わってしまうので、今はこれだけ伝えさせてもうけれども。 

エルザ、私の唯一の愛しい人。君がこれから立ち向かうであろう困難に一緒に私も立ち向かうと誓う。 

そして、君と私の幸せな時間をこれからもずっと一緒に分かち合っていきたい。 

この日を私と迎えてくれてありがとう…エル…絶対に君を幸せにして見せるよ。 

だから必ず、私の元に後で来るんだよ?」 

「ええ…ダグ…私の愛しい人…あなたのところに必ず参りますから待っていてください…」 

我慢が出来ずに、メイクも着替えも完了していたエルザを抱きしめそうになったダグラスは、とっさの所で周囲から鬼の形相で引き留められ苦笑をもらした。 

しかし、二人の幸せそうな様子に周囲の者達は瞳を潤ませ、二人の末永い幸せを心から願ったのだった。
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