愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

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新しい学園生活

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「では、行こうか。」
「はい、マーカス様。どうぞよろしくお願いいたします。」

今日、このシューゼント王国での学園生活が始まった。
緊張した面持ちの私が馬車から降りるのを優しく支えてくれるマーカス様に、思わず笑みが零れた。

一歩馬車から外へ足を踏み出した私ををエスコートして一緒に歩いてくれるマーカス様に安心感を抱いた。

周囲の生徒からはなぜか、ざわめきが起こったが、一足先に留学を終えこちらの学園生活に戻っていたマーカス様は慣れたもので、我関せずといった感じで歩を進めていた。


事前に知らせてもらっていた通り、マーカス様とは同じクラスで席も隣同士に配置されていた。

マーカス様の留学先での知り合いというだけで、クラスの皆とも徐々にだが打ち解けることが出来て安心した。

マーカス様の幼馴染でクラスメイトのザッカリー様とその婚約者のバネッサ様とは友人と呼べるほどにすぐに仲良くなった。

放課後になればマーカス様と図書館に行ったり、バネッサ様達とも一緒にカフェに行ったりと充実した毎日を送っている。

こちらのデザートで使われているクリームには、このシューゼント王国でしか収穫されないポポアという果物が使われているものが多く、これだけでもこの国に留学に来てよかったと思ってしまう。

そんな私は今日も学園後にマーカス様、バネッサ様、ザッカリー様と四人でカフェに来ている。
このカフェも最近人気のカフェで、デザートの種類が豊富なのと独創的な盛り付けに特徴がある。

そして私の今日オーダーしたデザートはポポアのクリームをふんだんに使ったもので、口に入れたとたんフワフワっと溶けるような触感の、本当に美味しいケーキだった。

あまりにも美味しすぎて、クリームが口の端についてしまったのに気が付かない私に、バネッサ様がそれとなく教えてくれた。
私がハンカチを取り出す前にマーカス様がスッとその指で拭って下さった。
そのクリームのついた指をペロッと舐めたマーカス様を見て、羞恥のあまり急に顔が熱くなってしまった。

あっ、ごめん思わず…と一言溢したマーカス様だったが、なぜか真っ赤になってその顔を掌で隠すようにうつむいて固まってしまった。

そんなマーカス様を見て、ザッカリー様はあんぐりと口を開てしまっていた。



そして、実はマーカス様は、頭脳明晰で剣術の腕も学園では敵うものがいないらしい。

剣術の訓練をするザッカリー様に差し入れを持っていくバネッサ様につきそって、私もマーカス様の差し入れをもってその訓練の様子を見学した。

間近で見るその訓練は厳しく激しいものだった。
いつもの穏やかで明るいマーカス様が汗を流して剣術の訓練に励んでいるのを見るのは、なんだか私の知らないマーカス様の一面を見ているような気がした。

マーカス様の留学中から気が付いてはいたが、女生徒からの人気はとても高く、多くの女の子たちがマーカス様に熱い声援を送っていた。

訓練が終わって、一直線に私たちのところにマーカス様とザッカリー様が走ってきた。

バネッサ様はザッカリー様の汗を拭ってあげていて、ザッカリー様はバネッサ様の持っていらした差し入れを美味しそうに味わっている。

私もマーカス様にタオルと差し入れを渡すと、とても喜んでくれた。
マーカス様は片手で汗を拭きつつ、差し入れを反対側の手で器用に食べていた。

片手で汗を拭くマーカス様が少し不憫に思えたので、一言ことわりをいれてから、私のハンカチで拭いきれていない汗を拭わせてもらうことにした。

私の申し入れに、少し固まってしまったマーカス様だったが、すぐに了承の言葉を頂いたので残っていた汗を丁寧に拭わせてもらった。

汗を拭っている間、私もマーカス様も無言になってしまって少々気まずい空気が流れてしまった。

なんだか余計なお世話だったかなと思ってしまったが、マーカス様が顔を真っ赤にしてありがとうとおっしゃってくれたのでほっとした。

そのハンカチは汚れただろうからとマーカス様に没収され、今度の週末に一緒に新しいハンカチを買いに行くことになった。
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