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第四章 一難去ってまた一難

1話

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グレンが執事にいたずらをされてから、マルクはさらに過保護になった。

「いい、今後一切、使用人と話すの禁止ね。命令はいいけど会話はダメ」

「え、まじかよ」

「うん、本気」

使用人も一掃され、若い女や男はいなくなった。
代わりに老人や中年が選ばれたようで、一気に屋敷の中の平均年齢が上がった。

「まぁ庭に行ったり、屋敷の中を好きに歩き回るのは許す」

「ならよかった…鍛錬したいしな」

「鍛錬なんて必要ないのに…ずっとこの家にいるんだから…」

「え?何か言ったか?」

「んー、何でもないー」

屋敷の中を歩いたり、庭で鍛錬することを許されたものの、人と関わることは制限された。
また外部の人間との接触は一切、禁止された。

「はい、いただきます」

「いただきます」

口にする食べ物にも規制が加わった。
一度、異物が入っていないかマルクが調べてからでないと食べられなくなったのだ。

マルクが屋敷にいないときはやむおえないが。

「なぁ食べ物くらい大丈夫だよ…」

「そういってこの前、媚薬と睡眠薬盛られたの誰?」

「うっ…」

先日の執事の一件はグレンだけでなく、マルクにも衝撃を与えていたように思えていた。
少なくとも、グレンは無意識にさらにマルクを頼るようになっていたのだ。



しかし先日の執事の件を含めてこれらは全てマルクの思惑通りであることをグレンだけが知らない。

実はあの日、マルクが執事に命じて二人で一芝居打ったのだ。
マルクはグレンが監禁されている状態になれてしまい、自分への依存を忘れてしまうことを恐れた。

「結果的に今までよりも僕に依存してくれればいいからさ」

書斎でお茶を飲みながら執事であるガイヤに告げる。

「それはようございました」

「おまえには損な役回りをさせたね」

「いえいえ、お気になさらず。しかしあそこまでなさるとは…」

マルクにベットに拘束されたとき、シナリオになかったので彼は驚いたのだった。

「ごめんごめん、なんかグレンに触れているのを見たらつい…」

「まぁ殺されなくて良かったですよ」

ガイヤは冗談交じりに答えると書斎を後にした。

「さぁてと、次はどうしようかなぁ」

マルクはにやりとお茶を啜る。






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