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第十三章 新婚旅行

1話

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件のリゾート地までは送迎専用の馬車で向かうことになっていた。

「すげぇ、フカフカ」

馬車自体とても豪勢でグレンは驚いた。

「振動もあまりないし、すごいなこの馬車」

マルクも普段使用するものと比較して驚いていた。

「でも高いんじゃないのか、こんな馬車に乗れるなんて…」

「宿泊代に入ってるから大丈夫」

「じゃあ宿泊代がとてつもなく高いとか…?」

「そこが新婚旅行専用プランのいいところなんだよ。あと団長の口添えもあったからそんなに高くなく泊まれるから。グレンはそういうこと気にしないで楽しんで」

マルクがグレンに笑いかける。

「お、おぅ…」

グレンはリゾートの対価に抱きつぶされるのではないかと危惧していた。

「…なんなら旅行を機に永久にあの屋敷に監禁とか…」

グレンはブツブツと呟き始めた。

「おーい、グレンー」

しばらくはマルクの声が聞こえていなかったようである。



「到着!」

その日の夕暮れ時、馬車はリゾート地の入り口の門に到着した。

「うわ、すげぇ!!」

門を入ると一面の海。
ちょうど夕日が海に飲み込まれていく瞬間だった。
波は涙のように煌めいていた。

「グレン、楽しい?」

「え、あ、べ、別に!」

グレンは途端に子供のようにはしゃいでいたことが恥ずかしくなった。

馬車はしばらく海沿いの道を走り、やがて止まった。

「お待たせいたしました」

御者の声がして馬車の扉が開かれる。

「ようこそ、おいでくださいました」

白を基調とした豪華なホテルの入り口に恭しく何人ものホテルマンが立っており、馬車から降りた二人に頭を下げている。

「どうも」

マルクは堂々とエントランスに入っていく。

「あ、え」

グレンは慣れない様子に戸惑いながらもマルクの後を追いかけた。



「お待ちしておりました、マルク様」

「やぁ、話は通ってるよね?」

「はい、もちろんでございます」

「ならよかった」

グレンがエントランスの内装に魅入っている間に、フロントの人とマルクの二人で会話が進んでいた。

「グレン、行くよ」

「お、おぅ」

マルクが諸々の手続きを終えると、二人はホテルマンに連れられて部屋に向かうのだった。







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