学校にいる人たちの卑猥な日常

浅上秀

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音痴な学生の放課後練習

中編

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「えー!毎週金曜に音楽の補講やってんの!?てか音楽の補講って何やるんだよ」

里見の音楽の成績を心配してくれていた友人に補講になったことを伝えると案の定驚かれた。

「それな」

里見は紙パックのジュースをすすりながら答える。



補講初日。
里見は再び音楽室の隣の部屋のソファに腰かけていた。

「今日は楽譜の読み方を覚えてもらう」

高松は簡単な楽譜から音符やドの位置など初歩的なところを丁寧に教えてくれた。

「あ~、やばい、頭パンクしそう…」

里見は必死それを覚える。

「はは、とりあえず今日はこの辺にしておくか」

「よっしゃ!」

案外早く解放された里見は軽やかに帰っていく。
高松はそんな里見の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。



「で、どんな感じよ、個人レッスン」

昼休みに友人が里見に尋ねる。

「あ?あ~余裕余裕、あんなんすぐ終わるって」

課題もなければ、その場で覚えるだけ覚えればいい、授業よりも楽で里見は助かっていた。

「ならよかった。早く放課後遊ぼうぜ~」

友人が肩を組んできたので里見もそいつの方に手をまわす。

「おうよ」



「失礼しまーす」

一か月ともなれば慣れた様子で里見は意気揚々と部屋に入ってきた。

「今日も里見は元気だな」

「先生は元気じゃないんですか?」

カバンをどさりと置きながら里見は高松を見る。
顔色も声色も表情もいつも通りに見える。

「あぁ、少しだけ、な」

「ふーん、じゃあさっさと終わらせて帰りましょうよ」

里見が定位置に腰を下ろす。

「…そうだな。今日は歌だ」

「げ、歌かぁ」

音痴の自覚しかない里見はうなだれる。

「大丈夫だ、音痴でも歌えるようにしてやるから」

高松は聡美を譜面台のまえに立たせる。

「楽譜見ながらでいいから俺の伴奏に合わせて歌ってみろ」

部屋にある小さな電子オルガンの前に高松が腰かけた。

「はぁい」



「やっぱり俺、音痴だ…」

歌い終わった里見は自分の歌声に愕然としていた。

「里見はまず腹筋が足りてないんだよ」

いつの間にか高松は里見の後ろに立っていた。
里見の背後から里見の腹筋に手を伸ばしてさする。

「せ、先生?」

「ほら、ここに力入れて声出してみろ」

高松が里見のお腹を押す。

「あー」

「そうそう、そんな感じだ」

高松にお腹を触られたまま、里見はもう一度、同じ歌を歌わされた。

「いい感じだぞ」

耳元で囁かれる高松の声に里見はビクっとしてしまった。

「あ、ありがとうございます」

「次は腹に力を入れながらもっとリラックスして歌ってみようか」


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