学校にいる人たちの卑猥な日常

浅上秀

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音痴な学生の放課後練習

後編

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先生は里見の肩、胸、背中を順番にゆったりと撫で始めた。

「せ、先生?」

「ほぉら、身体に力は入ってるぞ」

さすられているところから泡立つような感覚がして、思わず里見は高松から距離を取る。

「どうした?」

「い、いえなんでも…」

「そうか…まぁそしたら今日はここまでにしておくか」

「は、はい」

奇妙な雰囲気のままその日の補講の時間は終わりを迎えた。



その日以来、先生は何かにつけて里見の身体に触れるようになった。
あくまでも教師と生徒としてのボディタッチの域にとどまっているものの、里見は毎回、身体がぞわぞわする気がした。

「はぁ」

徐々に補講に行くのは気が重くなってきたが、留年がかかっているため、無断でやめることはできない。
そんな悶々とした里見の気持ちをようやく察したのか、ある日、高松は廊下で里見を呼び留めた。

「おい里見、ちょっといいか」

「俺ら先に行ってるわ~」

「あぁ」

里見と一緒に廊下を歩いていた友人たちは先に歩き出し、里見と高松の二人きりになった。

「補講ちゃんと来いよ。今日で最後だから」

「…はい。ってそれだけですか?」

「あぁ」

先生はいつものような笑顔を浮かべると里見の肩をポンっと叩いてどこかに歩いて行った。
里見は予令が鳴るまでぼーっと廊下に立っていたのだった。



「失礼しまーす」

慣れた様子で里見は音楽室の隣にあるいつもの部屋に入る。

「お、来たか」

高松の手招きに吸い寄せられるように窓辺に近づく。

「今日はなにするんですか?」

「今までの復讐テスト」

そういうと高松は一枚の楽譜を里見に手渡す。

「これって…」

それは初めて音楽の授業の試験で歌わされた歌の譜面だった。

「今のお前なら大丈夫」

高松がピアノの椅子に腰かけると鍵盤に指を置いた。

「はい!」

里見は深呼吸をして楽譜と向き合った。
長いようで短い一分三十秒。

「ほらだいぶよくなったじゃないか」

「ありがとう、ございます」

里見は自分の変化に驚いていた。

「これで補講は終わりだ。お疲れ、今日はもう帰っていいぞ」

里見に背を向けてピアノの片づけを始めた高松の背中に里見は思わず飛びついた。

「おっ、どうした、急に」

高松はお茶らけた声で返す。

「先生、俺先生のこと…好きになったかも」

「はは、ならよかった」

「先生、からかわないで、本気だから」

里見は高松の前に回り込むといきなり唇を奪った。

「んんっ」

しかし主導権はあっという間に高松に取られ、里見は激しい舌の交じり合いに息が乱れていく。

「本当にいいのか?」

唇をようやく離した高松がそう囁く。

里見は強く頷いたのだった。





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