Lost Fiction

湯月@岑

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王の眼

黄金の卵生むバジリスク

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 赦すは簡単。
 私自身も、いつまでも怨んでいる程、暇でなく。
 赦すは簡単。
 されども、あの人はどうだろう?…どうあっても変わる事が無いだろう。
 あの人は どうあっても私にとっての害毒で。
 私の人生を、自分のものと思って違えない。_生かしておいては害毒で。只々只々、害毒で 。


 姉妹たちは、母の血を喜ぶだろうか?


「…嫌がりそうだな」

 もう、顔など見たくも無いだろう

 人を呼ぶために鳴らした呼び鈴ベルは高く澄んで響かせた。

「-------」

 踵を鳴らしてめいを果たさんと出ていくのを見送って。
 窓に寄って塔を見上げた。母の建てた塔。


 …姉妹たち。
 いつか貴女 達8人に殺されに行く私を、 待っていて






 全ての塔は打ち壊し、代わり、大きな篝火を設けた。
 国家の礎として。

 "余りにも多くの塔が、人々を細かく分けて仕舞うから"と云う言い訳は、其れなりに確からしく響いた。
 実際は、塔を建てる労力を他に向けたいというのが大きいだろう。

 "王の試し"の権利も拡げた。占で選出された9人の娘へ。
 そして
「貴男の片割れ君のような、哀しみも少なくなるはず」

 眼と眼合わせて掻き口説いた叔父が如何様にか説いて周り、両手を挙げて歓迎とはいかずとも其れなりの許容は見えた。

 対岸の火事が此岸へ渡る。黄金の色を携えて。

 火傷をしても欲しいもの?





 其の国の今代の王は、黄金を生む。
 国は年経るごとに富み栄え。王は燃えるように、星のように、輝く。
 
 ああ、悍ましいほどに美しい 其の瞳よ






 金の穂は見渡す限りを覆い尽くし、実りの季節は豊かに薫る。
 薫りは鮮やか、にしきに映える。紅に黄に緑色。色変える木々の葉は、一級織り子の織物に勝る。
 


 空を見る。
 高く抜ける。深く潜る。


 くらくらくらくらくらと 私を酔わせる 其の青よ

 貴女によりて 苦しみ遠のく幸いよ

 神よ
 我が上に君臨される方よ
 貴女が在るなら





 別に母など  居らずとも 



fin.
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