友愛

平川班長

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第4話 お昼に行こう

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それから数日、俺はいつものように美桜さんと仕事をこなしている。
あれ以降、美桜さんとの会話はもっぱら藤原優香とのことだ。

「え!須藤君、優香ちゃんと同級生だったの!?」

とある休憩時間にその話をしたら凄い食いつきぶりで俺に近寄ってきた!
いやいや!距離近い!顔!顔が!
俺には色々とぶっちゃけてるからって、そんな距離で話してたら他の人から勘違いされますよ!

「へぇー、優香ちゃんって学生の頃から可愛かったんだ……そりゃそうだよね。ん?てことは、まさか君も狙ってたとか?」

ニヤニヤしながら聞いてくる美桜さん。クッ!!図星である!

「そりゃ……あれだけ可愛いと……」

「でも、誰かと付き合ってたの?」

ん?そういえばアイツって誰かと付き合ってた噂は聞いたことないな……何でだろ?

「今は、どうなんですかね?」

「それがね、私も色々と調べてみたんだけど、付き合ってる人はいないっぽいんだよねー」

あれだけ可愛いのにねー
と美桜さん。うーん、何かあるのかな?



それから1週間が過ぎた頃、たまたま、会社の前で噂の藤原優香に遭遇した。

「おはよー、須藤君」

「あぁ、おはよう」

素っ気ない返事になってしまった。それは相手も気づいたらしく

「なに?その素っ気ない返事。そんなんじゃ仕事中も暗くなっちゃうよ?」

「大きなお世話……そうだ、この間口約束みたいになったけど、今日、昼ご飯食べに行く?」

すると、少し頬を膨らませながら 

「むぅー、雰囲気ないなぁ。今の話の流れでサラッと誘うのね……まあ、いいか。わかった!じゃあお昼にここで」

そう言って駆け足で会社の玄関に入って行った

「遅れないでよー!」

うーん、本当にあの藤原優香なのだろうか?
学生の頃と全然雰囲気が違うけど……


藤原優香は、確かにクラスではマドンナ的存在だった。でも、それは見た目が可愛いからであって、決して彼女は明るい性格だったわけではなく、むしろ、ボッチなんじゃね?というくらい休み時間は机で本を読んでいた記憶しかない。
でも、本人は根暗な性格ではなく、クラスの女子から話しかけられたら、すごく明るく話していて、嫌われているという感じではなかった。
窓際の令嬢。
そんなあだ名まで付いていたくらいである。


「なんですって!?優香ちゃんとお昼の約束をした!?でかした須藤二等兵!」

その話を美桜さんにしたら、案の定、凄い食いつきぶりで近づいてきた。
……俺はいつまで二等兵なのかな?あと、それを言われるとあの日の事を思い出すのでヤメていただきたい!

「君に指令を与える!優香ちゃんの交友関係や好き嫌い、好みの異性のタイプを探りなさい!これは最重要任務よ!協力は惜しまないわ」

「……つまり、自分では聞く勇気がないから、俺に探ってこいと?」

「テヘ☆バレた?」

「この話はなかったことに……」

俺が立ち去ろうとすると

「うそうそうそ!!ごめんなさい!調子乗りました!だって課が違うから接点がないんだよー!私って一応役職あるから下手に離れられないし、お願い須藤君!」

まあ、そうなんだろう。美桜さんが仕事忙しいのは事実である。お世話にもなってるし、しょうがないか

「はぁー……わかりましたよ。でも、不自然にならないようにしますから、そんなにすぐには情報は集まりませんよ」

「とか言って、本当は須藤君が狙ってるんじゃないのー?私が無理だったからって、今度は優香ちゃん?くぅーー、モテる男は違うねー!」

スタスタと俺は無言で歩いていく。

「うそうそうそ!ごめんごめん!待ってよー、須藤君」

まったく、人の気も知らないで

そんなこんなで昼休み。
俺は会社の外で藤原優香を待っている。

「ごめんなさい、遅くなって!」

3分程待っていると、彼女は小走りでこちらに走ってきた。
ん?少し化粧直ししてる?

「いや、大丈夫だよ。それより何食べる?」

「あっ、だったらこの先にさ。美味しいパスタ屋さん出来たみたいだから行ってみない?」

いつもは通らない道を歩いていくと、
少し小ぢんまりしているがなかなか雰囲気のいい店があった。

(へぇー、こんなとこに店なんかあったんだ)

隠れ家的なその店は、あまり人目も気にならないし、出てきた料理も美味しい!

「よく、こんな店知ってるね。俺、こんなとこに店あるなんて知らなかったよ」

「でしょ?私、あんまり人がガヤガヤいるのって苦手で……こういうひっそりした店探すのが好きなくらい。特に喫茶店とかはよく行くし」

そこら辺は昔と変わらずか……やっぱり一人でいるのが好きなのかな?でも、それならなぜ喫茶店?

「喫茶店のほうが、はかどるからね……あっ、ごめん!こっちの話……」

何がはかどるんだろう?

すると藤原は少し慌てた様子で話題を変えてきた

「でも、本当に驚いたよ。まさか、須藤君が同じ会社に来るなんて……」

「それはこっちもね。まさか藤原がいるなんてな」

「すごい大きな会社に就職したって聞いてたから偉くなったなーとか思ってたけど」

「いやいや、別に会社がすごいから偉いわけじゃないだろう」

「あはは、そうだよねー」

なんか自然と話せる。そもそも、藤原とは話しやすいのだ。彼女は相手に話を合わせるのも上手だし、こちらの話しも親身に適当な相づちを入れながら聞いてくれる。

「む、何か難しいこと考えてる?」

と、相手の気持ちを察するのも得意である。

「よくそういうこと分かるな。そこら辺は学生の頃と変わんないね」

「えぇー、私だって成長してるんだよ?大人になってるんだよー?」

と少し姿勢を正す。
胸、大きいな。

「エッチな視線を感じます!」

「なんでわかるんだよ!そんなこと読むな」

「須藤君って、わかりやすいんだよ」

素直だからね。と言われる。そういえばそんなこと美桜さんも言ってたような……
って、ヤバいヤバい。
美桜さんから探るように言われてたんだった。

「藤原は今でも、本とか読んでばっかなのか?学生の時みたいに」

「なぜか急な方向転換……うーん、学生の頃程は読まなくなったかなー。てゆーか……うーん……」

ん?何だろう急に言い淀むな。

「読まなくなったというか、読んではいるんだけど、参考にするためというか……」

参考に?どういうこと?

「うーん……須藤くんならいいのかな?」

「いや、俺に聞かれても」

何か、よっぽど言いにくいことでもあるのか?

「なんか、スマン。この話はここまでに…」

「えっ!ちょっと待ったー。待ってください!」

と、すごい勢いで制止された!何なの!何がしたいの!?

「私的にも…相談出来そうなのは……うん、やっぱり言います!須藤君!心して聞いてください!」

「えっ?あっ…ハイ…」

ハイテンションかと思いきや、急に真面目な雰囲気に……大丈夫かコイツ?

まあ、何か言いたげなので、とりあえず聞く姿勢を取る。
その様子を見た藤原はひと呼吸置き、意を決したようにこう言った。


「藤原君、私とラブホに行ってくれませんか!」


……………。
はい?

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