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2 サージュに挨拶を

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時間は刻々と過ぎ、クラスメイト達が登校してくる。
サージュも登校してきた。
今、取巻きと話をしている。
よし、挨拶だ。
朝の挨拶をしよう。

それだけなのに、心が震える。
最悪な状況になった時のことを考えると傍に行くたけでも足がすくむ。

「お、おう。おはよう」

サージュの前に行き、それだけをなんとか言えた。
萎縮しすぎだと思う。
でも、前世の記憶はそれほどのインパクトがあったのだ。
追放だけで済まなかった結果が恐ろしい。

「セネクス王子?」

挨拶をしたが聞えなかったのか、サージュが怪訝な顔でこっちを向いて聞いてきた。

「おはよう」

今度は聞えたのだが不思議そうな顔で

「おはようございます」

と挨拶をしてくる。
たったそれだけなのに何故か心が落ち着いてしまう。
何故だ。
昨日は、いやその前からずっとサージュに挨拶などしていなかった。
全てはマスミを中心に回っていると本気で思っていたからだ。

しかし、それではダメだ。

「明日からは迎えに行くぞ。用意しておけよ」
「え、嫌ですけれど」
「なぜだ」
「マスミさんと仲良くしているからです」
「…頼む。迎えに応じてくれ」
「どうされたのですか。顔色がまっ青ですよ」

どうやら拒否された時に顔色がまっ青になったらしい。
サージュからマスミのことを聞いただけなのに。
前世の言葉が蘇る。
あの言葉を言わせてはいけない。

「頼む。俺にはサージュしかいないんだ」
「は、はぁ。分かりました」
「ありがとう、ありがとう」

今までの様子からすれば、この状況は十分周囲を惑わすに足りる事態だった。

授業前のホームルームが始まる直前に4人の側近候補たちは教室にやってきた。

「どうしたのですか、マスミに会いに来なかったのは」
「おかげでマスミといつも以上に話ができたよ。チャンスを生かすぜ俺らは」
「顔色が悪いですね。風邪ですか」
「…」

声がしたそちらを向けば、宰相子息アインスト、騎士団長子息アプロス、商人の息子セリシ、神官子息ネアン…。
そこには、昨日の自分がいるように錯覚した。
何も知らなかった自分の。

「お前ら、放課後話がある。ここに残れ」
「放課後は、マスミと会う約束をしています。あなたのこともマスミは心配していましたよ。きちんと安心させてあげてください」

アインストがそういうが、それに従う余地はない。

「その必要はない。所詮は、平民。それによからぬことを考えている愚か者だ」

昨日という日が自分を変えた。
いや、変わらざるを得なかったのだ。
だれでもあれは怖い。
思い出したくもない。
だから、これからを変えて将来を正さなければならない。

「マスミに限って、よからぬことなど一つもありません。どうしたのですか、王子。昨日とは別人のようですよ」
「ああ、別人だ。サージュと昔のようにやっていかなければならない。貴様らも同様だぞ」
「本当にどうした。何があった。サージュに何か言われたのか」

アプロスが詰め寄ってくるが、教師が教室にやってきたのでお開きになった。
それぞれが指定された位置に座る。
ホームルームが始まる。
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