婚約者はいるから…

夜空のかけら

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4 転移不可

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1日の講義が全て終わり、あとは帰宅すればいいのだが、極大魔法の影響で魔法の一部が使用不可になっている。
その使用不可になっている魔法に“転移”というものがある。
学園は、学園都市と言われる区画にあり、そこへ行くには馬車などではなく転移してくるしかない。
つまり、今の所は誰も帰れないのだ。

ここは、地脈や龍脈などの血節点の上に学園があり、個人の魔法使用では普通使うことはないが、極大魔法では良く使われる自然魔法力の根源である。
絶えず流れている魔力も一時的に枯渇状態になることがあり、現在はちょうどそんな状態である。

「セルカ、今の事態想定していないだろう」
「大丈夫よ。あと1時間くらいで復旧するから」
「はぁ、そうかい」

そう言いながら、学園長室へ向う3人。
セルカは隣国の学園内に設けられた自分の研究室から直接教室へ転移してきた。
だから学園長に会っておく必要があったのだ。

そして、学園長室の前まで来たタイミングで副学園長が通りかかった。

「学園長はいませんよ。王都で会議だそうです」
「そうか、セルカが転移してきたから話をしておこうと思ったのだが」
「私から連絡を取ってみます。…1時間後に」
「連絡もダメか」
「ええ、力場に乱れが生じていて、魔法の成功率が極端に下がっています」
「大丈夫。あと1時間で何もかもいつも通りになるから」
「ええ、教師たちも同じことを言っていました。ただ、こういうことは今後しないで頂きたい」
「はぁい」

セルカも分かっていると思う。
魔力は有限だってことも。

「さて、ならどこで時間を潰す?」

学園長がいれば、そこでお茶を飲みながら雑談していればよかったのだが、いないとなると別の場所で時間を潰さないといけない。

「力が有り余っているなら、今の状況を一刻も早く解消できるように動いたらどうですか?」
「やっちゃっていいの?」
「いや、力場を安定させるだけをやってくれ。それ以外は手出し不要。で、いいですよね」
「そ、そうだな。また変な風になったら困る」

セルカの場合だとやりすぎる場合が多いから、難易度は下がるが重要な力場の安定をお願いした。

「うーん、ま、いいか」

目の前にこの学園都市のジオラマを表示。
ここに力場の状況が分かるように色で表現。
刻一刻と変わる様子から、どこの場が安定していないのかを分析。
そこへ、セルカの魔法が降り注ぐ。
すると、ジオラマではなく実際の場所の力場が安定方向へ傾く。
地道に1個ずつ解消していき、結節点以外は全て安定した。

「血節点は、地脈の流れが正常に戻らない限り不安定な状態が続くから様子見ね」
「ほっ。これで学園長と連絡が取れる」

これで何の問題もなくなったかな。
国軍も来ないようにしなければ。

学園と王都の学園連絡室は、絶えず連絡を取り交わしていて連絡が途絶えたら学園で問題が起きたと判断されてしまう。
すると、国軍が動くようになっているので、それが解消されるように学園長にお願いをしなければならない。

「間に合うかな…」
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