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1.魔方陣書いてたら転移した!
しおりを挟む「これが必要でしょう?使ってください」
神官長から渡されたのは……
大人のおもちゃ??
い、いやああああーーーーっ!!
☆☆☆
「このファンタジー面白いっ。伊納あけび先生サイコー、アーサー尊いわ」
私、文原らんはお気に入りのファンタジー小説を読んで悶えていた。
私はコミュ障で引きこもり。
何とか最近在宅ワークを見つけて細々と働いているけど、普通の生活とは程遠い状態だ。
そんな私の最近の趣味は絵。
タブレットを使って絵を書いてアプリ内で売っている。
そして今日は大好きな小説のワンシーンを絵に書いていた。
するとーー
「え?な、何?」
突然絵の中の魔方陣が光りだしてーーーー
私は見知らぬ場所へと転移した。
☆☆☆
見渡す限り真っ白な世界。
そこに眩いばかりの美女が困ったように私を見下ろしていた。
「困ったのう」
のう?
「ここは……どこですか?」
「ここは天界じゃ。そなたが描いた魔方陣の紋様がたまたまここへの転移陣と一致したんじゃ」
え?何?
このファンタジーな展開?
夢かしら?
けれど、ほっぺたをつねってもちゃんと痛みはあるし……夢……じゃない?
「わ、私は……帰れるんですか?」
「生身の身体じゃ無理じゃのう。そもそも魔方陣は気軽に描いていいようなものではないぞ?己の責任じゃ。」
えー、色んな人、書いてるよ?
こんな事になったのって私だけ?
「だ、だって、知らなかったんです。こんなことが起こるなんて!」
「まあな、本来易々と書けるものでは無い。幾つもの偶然が重なったのだろう。
……ふむ。しかし困ったのう。妾もそなたにずっと居座られるのは迷惑じゃ」
女性は少し考える仕草をした後、私を見てニッコリと微笑んだ。
「良い事を思い付いだぞ。
ソナタ、聖女となり妾の守護している国を救ってくれんか?」
本当にファンタジーな展開キタ?
「まさか?」
「妾はアイトネ。火山の女神じゃ。実は妾が守護している国にもうすぐ自然災害が起こる。しかも三回。小さな島にある王国じゃが、その国のシンボルとなっておる、火山が20年で三回噴火する事になっておる。その三回でほとんどの住民は死に王国は破滅に追い込まれる。」
ナニソレ、噴火が相手なんて怖い。
火傷すると、痛みが長引くもの。
「アイトネ様が噴火を抑えることは?」
火山の女神って言ってたし、出来るはずじゃ?
「それは無理じゃ。妾の出来ることは予言と少しの手助けのみ。だが、信仰心の厚いシシリ王国の住民が被害にあうのは心苦しい。そなたが助けてくれるなら、そなたに強大な魔力を授けよう。さすれば、国全体を覆う結界を張ることが可能じゃ。」
「で、でも……」
正直怖い。
コミュ障の私に救世主なんて無理。
「ならば仕方ないのぅ。永遠の時を妾とここで過ごそうぞ」
え?それも嫌!
女神様とずっと二人きりなんて無理。息がつまりそう。
「じ、じゃあ、シシリ王国を救いに行きます。えっと、言葉は日本語?」
「通じるようにする。妾の信託を授けるから悪い待遇にはならんじゃろう」
「わ、私……人と話すの苦手なんですけど……」
私は他人と話すのが怖い。
オドオドした態度が人を苛つかせるみたい。私と話をしてると大抵の人はイライラしてくるみたいで口調も眼も鋭くなる。
だから、視線が合わないように、前髪を伸ばして目を隠してきた。
「そなたは聖女として、神殿の奥に居れば良いではないか」
神殿の奥に引きこもるぐらいなら私にも出来るかも……。
とにかく女神様と二人きりでずっとここで過ごす方がキツそう。
「じ、じゃあ、行きます」
「ふむ、良かった。頼むぞ。さて……その身体は魔力を詰め込むにはひ弱だな。新たな身体をやろう。それと……そなたは今から魔方陣で転移する。転移するとそこには大勢の人間が居るはずじゃ。そこで『10時間後の日没と同時にメルム山が火を噴く』と予言せよ。そして噴火と同時に国全体を覆う結界を張るのじゃ。」
「え?け、結界ってどうやって?」
「空に向かって手を翳し『アムレートゥム』と唱え魔力を放出すれば良い。簡単じゃ」
言われた通り、両手を上に挙げてみる。
「あ、あむれーとぅむ!……こ、こんな感じですか?」
手から光線が放たれるわけでも無く……。
今、私……変な人みたい?
だけど女神様は満足そうに何度も頷いた 。
「そうじゃ、そうじゃ、上出来じゃ。それと……魔力が高いと身体が……。そなた、処女じゃな?……では、いいか……。向こうに行くと分かるじゃろ。他に質問は無いな?」
「え?え?」
言いかけた言葉の続きが気になるんですけど?
「アデュー!」
『アデュー』って、そんな……軽い。
ええ、もう?展開早い!ついてけない!
こうして私は聖女としてシシリ王国へと転移した。
応援ありがとうございます!
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