戦略的過保護のち溺愛

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翌朝、ユーリーの出仕のお見送りをしていると、少し照れながらも額にキスを落としてくれた。
お返しに、と思い私はユーリーの腕を引っ張り顔を引き寄せると頬にキスをした。
途端に無表情のままユーリーが崩れ落ちた。
騎士がそんなに足腰弱くて大丈夫だろうか?


「おかえりなさい。」
「ただいま。」
夕方、ユーリーは帰ってくると何だか固い表情で直立不動になっている。


「……。」
「……。」

待って…いるのだろうか?
試しに腕を引っ張り同じように頬にキスをする。
ユーリーは横を向いたままだが耳と目元は赤い。
ユーリーはギコギコと音がするぐらいぎこちない動きで私の方を向いて身を屈めると額にキスを落としてくれた。

私達の恥ずかしいこの一連のやり取りは数日間公爵家の使用人を悶えさせた。

☆★☆

ぎこちないながらも少しずつお互いが距離を縮め、婚約披露まで2ヶ月となった頃、二人の姿絵を描いて貰う為、宮廷絵師と会うことになった。
この国では婚約披露パーティーの会場でその絵を飾るのが高位貴族の慣習になっている。

「はじめまして、宮廷絵師を勤めさせていただいているバラゴと申します。」
「よく来てくれた。私がユーリード・ワルクーレ、彼女はサラルーリー・インヒィアで私の婚約者となる予定だ。今回は婚約披露パーティーに飾る二人の姿絵を描いて欲しい。」
「畏まりました。」
バラゴと名乗る絵師の目が何だかねっとり纏わり付くようで全身が粟立つ。
そっとユーリーの袖を引く。
ユーリーは私の腰に手を回し引き寄せてくれる。

少し落ち着いた私はニッコリとマナーレッスンで身につけた微笑みを披露する。



☆★☆



今日はピオニー会のお茶会に来ている。
皇妃を中心としたご婦人の集まりがピオニー会と言うそうだ。
一番最初に参加したお茶会がそのメンバーで行われたものだった。
王宮の庭園は芍薬や牡丹で溢れている。
その華やかで明るい庭園はリリィの人柄のようで好きだ。
「サラルーリー様、私良くない噂を耳にしましたの。」
「どんな噂ですの?」
「ベネディ侯爵令嬢を覚えていらっしゃいますか?」
「ええ。私は特にお話はしていませんが、よく覚えています。」
「その方がサラルーリー様とワルクーレ公爵様のご予定を調べているそうですわ。」
「まあ、どうしてかしら?」
「さあ?ワルクーレ公爵様を諦めて無いかもしれませんわよ。あの方、プライドが高くて高位貴族にしか嫁ぎたく無いそうですわ。今高位貴族で独身なのはワルクーレ公爵様ぐらいですもの。他の方は問題のある方か年が離れているか……。」
「結婚相手を探すのって難しいんですのね。」
「そんな事ありませんわ。昔から一方的にワルクーレ公爵様に嫁ぐと公言していたものですから……。他の縁談が遠のいてしまったみたいですわ。」
「そうなんですね。」
「ですからね。ワルクーレ公爵様に執着していらっしゃるみたいで…。身の回り気を付けてくださいね。」
情報通のケップラー伯爵婦人は心配してくれているようだ。
夜、ユーリーに相談してみよう。

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