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ジニアの気持ち
私の通うこのアストライアー学園は、良家の子女が通う歴史ある学園で、生徒の3分の1はすでに婚約者が決まっています。
この学園は学び舎であると同時に、将来に備えて貴族同士の交友関係を広げる場でもあるのです。
もちろん、多少の派閥争いはありますが、私は親切な友人や婚約者に囲まれて毎日楽しく過ごしていました。
あの日まではーー
ある日、私の友人ポピーさんが、サミュエル様に特別親しくしている女性が居ることを教えてくれました。
「ジニア、驚かないで聞いて。サミュエル様がね、グレース様と教室で抱き合ってたって噂になってるの。最近では毎日ランチを共にしているみたいよ……。ねぇ、サミュエル様とは少し距離を置いて、追いかけるのを止めたら?」
実はサミュエル様が二つ年上のグレース様に憧れていることは知っていました。彼女と二人で話をしているのを何度も見かけたことがあります。私には決して向けない笑顔を見て、胸が張り裂けそうになりました。
でも……そうか、彼女とはもうそんな関係に……。
ポピーは心配そうに私を見つめます。勝ち気ではっきりとした性格の彼女は、いつも私の背中を押してくれる頼もしい友人です。
だから、いつも私に対して素っ気ない態度のサミュエルさまを快くは思っていません。
黙ってしまった私を見て、ポピーが反省したように小さな溜息をひとつ吐きました。
「はぁー。ごめんね。言おうかどうか随分迷ったのよ?でもね、私どうしてもサミュエル様が許せなくて……。彼、学生時代ぐらいは自由に恋愛して遊びたいんだって周囲に漏らしているそうよ」
「自由に遊びたい……。サミュエル様が……」
心当たりはあります。私は嫉妬深いし、人前でだって仲良くしていたい。だって、サミュエル様は素敵だし、他の女性に奪われてしまわないか心配でした。
そんな私の態度が、彼には鬱陶しかったのでしょうか?
「ねぇ、ジニアは甘く見られているのよ?わかる?貴方があまりにサミュエル様に夢中だから、ジニアが自分から離れるわけないって思ってサミュエル様がつけあがってるの。きっと浮気したって平気だって思っているんだわっ!」
「だって……」
「ねぇ、悔しくないの?」
私はサミュエル様に恋しています。結婚するのは、彼以外考えられません。だから、きっと浮気されたって、許してしまうでしょう。
「一度彼から離れて他の男性を知るのも悪くないと思うわ」
「まさか……そんな……無理よ」
婚約者がいるにも関わらず、他の異性と親密な関係になる、そういう女性はこの学園にもいます。
お互いに割り切った関係なのでしょう。でも、私にそんな器用なことが出来るとは思えません。
「私悔しいの。こんなに一途で健気なジニアを裏切るなんて!同じことをされて、サミュエル様も辛い思いをすればいいのよ!だから、ね?ジニアもサミュエルさまなんかより素敵な人を見つけましょうよ」
「う……ん。だけど、そんな他の男性なんて……」
「心を全部相手に捧げてしまうと、裏切られた時に辛いわ。サミュエルさまとは、政略結婚。恋愛は別だって割り切った方が傷つかないと思うの。浮気したのは彼が先なんだから、ジニアだって他にボーイフレンドを作っちゃえばいいのよ!」
サミュエル様は素敵です。太陽の光に煌めく金髪に、晴れ渡る空のような青い瞳。くしゃりと笑った顔を見ると胸がきゅんとします。
彼に初めて会った日、私は恋に落ちました。いわゆる初恋。
まるで、靄の掛かった森で急に視界が晴れたように、周囲の景色が色鮮やかに見えたのを覚えています。それは幼い私にはとても印象的で……。彼さえ居れば自分は幸せだと、そう思ってしまったのです。
彼は私に生きる喜びを、色鮮やかな世界をくれました。
婚約が決まった時からずっと、私はサミュエル様に夢中で、私達はそれなりに仲良くしていました。
けれどそう思っていたのは私だけで、一方通行の片想いだったのかもしれません。
学園に入ってからも私達の関係は少しずつ変わっていきました。私は毎日サミュエル様のお弁当を作って差し入れしていたのですが、最近は「お弁当はいらない」って言われて渡すのを止めていました。
友人たちのいる場所で婚約者のお弁当を広げて食べるなんて、彼には恥ずかしかったらしいのです。それからも、私への態度はどんどん冷たくなっていって……。
学園で顔を合わせても笑ってもくれず、距離を置かれているのを感じて寂しく思っていたところでした。
だけど、今回の事は彼に非があります。
私は婚約者なのだし、サミュエル様が他の女性と噂になるのは嫌です。
ここは文句を言っていいでしょう。
私はひとまずサミュエル様と話をしようと、彼のいる部屋に向かいました。
私の通うこのアストライアー学園は、良家の子女が通う歴史ある学園で、生徒の3分の1はすでに婚約者が決まっています。
この学園は学び舎であると同時に、将来に備えて貴族同士の交友関係を広げる場でもあるのです。
もちろん、多少の派閥争いはありますが、私は親切な友人や婚約者に囲まれて毎日楽しく過ごしていました。
あの日まではーー
ある日、私の友人ポピーさんが、サミュエル様に特別親しくしている女性が居ることを教えてくれました。
「ジニア、驚かないで聞いて。サミュエル様がね、グレース様と教室で抱き合ってたって噂になってるの。最近では毎日ランチを共にしているみたいよ……。ねぇ、サミュエル様とは少し距離を置いて、追いかけるのを止めたら?」
実はサミュエル様が二つ年上のグレース様に憧れていることは知っていました。彼女と二人で話をしているのを何度も見かけたことがあります。私には決して向けない笑顔を見て、胸が張り裂けそうになりました。
でも……そうか、彼女とはもうそんな関係に……。
ポピーは心配そうに私を見つめます。勝ち気ではっきりとした性格の彼女は、いつも私の背中を押してくれる頼もしい友人です。
だから、いつも私に対して素っ気ない態度のサミュエルさまを快くは思っていません。
黙ってしまった私を見て、ポピーが反省したように小さな溜息をひとつ吐きました。
「はぁー。ごめんね。言おうかどうか随分迷ったのよ?でもね、私どうしてもサミュエル様が許せなくて……。彼、学生時代ぐらいは自由に恋愛して遊びたいんだって周囲に漏らしているそうよ」
「自由に遊びたい……。サミュエル様が……」
心当たりはあります。私は嫉妬深いし、人前でだって仲良くしていたい。だって、サミュエル様は素敵だし、他の女性に奪われてしまわないか心配でした。
そんな私の態度が、彼には鬱陶しかったのでしょうか?
「ねぇ、ジニアは甘く見られているのよ?わかる?貴方があまりにサミュエル様に夢中だから、ジニアが自分から離れるわけないって思ってサミュエル様がつけあがってるの。きっと浮気したって平気だって思っているんだわっ!」
「だって……」
「ねぇ、悔しくないの?」
私はサミュエル様に恋しています。結婚するのは、彼以外考えられません。だから、きっと浮気されたって、許してしまうでしょう。
「一度彼から離れて他の男性を知るのも悪くないと思うわ」
「まさか……そんな……無理よ」
婚約者がいるにも関わらず、他の異性と親密な関係になる、そういう女性はこの学園にもいます。
お互いに割り切った関係なのでしょう。でも、私にそんな器用なことが出来るとは思えません。
「私悔しいの。こんなに一途で健気なジニアを裏切るなんて!同じことをされて、サミュエル様も辛い思いをすればいいのよ!だから、ね?ジニアもサミュエルさまなんかより素敵な人を見つけましょうよ」
「う……ん。だけど、そんな他の男性なんて……」
「心を全部相手に捧げてしまうと、裏切られた時に辛いわ。サミュエルさまとは、政略結婚。恋愛は別だって割り切った方が傷つかないと思うの。浮気したのは彼が先なんだから、ジニアだって他にボーイフレンドを作っちゃえばいいのよ!」
サミュエル様は素敵です。太陽の光に煌めく金髪に、晴れ渡る空のような青い瞳。くしゃりと笑った顔を見ると胸がきゅんとします。
彼に初めて会った日、私は恋に落ちました。いわゆる初恋。
まるで、靄の掛かった森で急に視界が晴れたように、周囲の景色が色鮮やかに見えたのを覚えています。それは幼い私にはとても印象的で……。彼さえ居れば自分は幸せだと、そう思ってしまったのです。
彼は私に生きる喜びを、色鮮やかな世界をくれました。
婚約が決まった時からずっと、私はサミュエル様に夢中で、私達はそれなりに仲良くしていました。
けれどそう思っていたのは私だけで、一方通行の片想いだったのかもしれません。
学園に入ってからも私達の関係は少しずつ変わっていきました。私は毎日サミュエル様のお弁当を作って差し入れしていたのですが、最近は「お弁当はいらない」って言われて渡すのを止めていました。
友人たちのいる場所で婚約者のお弁当を広げて食べるなんて、彼には恥ずかしかったらしいのです。それからも、私への態度はどんどん冷たくなっていって……。
学園で顔を合わせても笑ってもくれず、距離を置かれているのを感じて寂しく思っていたところでした。
だけど、今回の事は彼に非があります。
私は婚約者なのだし、サミュエル様が他の女性と噂になるのは嫌です。
ここは文句を言っていいでしょう。
私はひとまずサミュエル様と話をしようと、彼のいる部屋に向かいました。
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