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※R18です。
蓮華視点
翌朝発見された私は身体中に怪我をしていて、そのまま病院へと運ばれ入院する事になった。
特に後頭部には七針縫う怪我があり、出血が酷かったようだ。
「うっ……うっ……。」
一人ベッドの中で布団を被って涙を流す。
「一刻も早く忘れることですね。」
私を診察した医師はそう言うと興味を失ったように次の患者の診察へと向かって行った。
その言葉はまるでひとごとのように冷たく響いた。
泣いても喚いても時間は戻らない。
男たちに触られた感覚が消えない。
あの嘲笑うような声が今でも聞こえる。
噎せるような濃い匂いが鼻の奥にこびりついて離れない。
一日に何度も湯浴みして、皮が剥けるほど肌を擦った。小さな傷痕がお湯に滲みると消毒されたような気すらした。
食事を食べる度に吐いて、泣きながら歯を磨く。
そんな日が一週間ほど続いたある日ーーー
私は不思議な夢を見た。
ふと気付くと、部屋の中に何か得体のしれない気配。
辺りは薄暗い。
朧気な視界の中で必死に目を凝らす。
窓際に立っていたのは少し青みがかった白銀の髪、血のように赤い瞳の青年。
灰白色の麻の着物を着流している。
その青年は人間離れした美しい顔立ちしていて、頭にはほんの少し角が見えていた。
「……あ……っ。」
この青年には見覚えがある。
幼い頃、よく夢に出てきていた。
8年前増水した川に転落して母が亡くなった時も夢に出て来て慰めてくれた青年。
毎晩、何も言わず私を抱きしめて眠ってくれる………そんな夢。
けれども、私が夜叉堂へ通い始めた日から夢に現れなくなった。
青年は赤い瞳を痛ましそうに揺らしながら、私を見ていた。
人間では無いと分かるのに不思議と恐怖を感じなかったのは、彼が切なげな表情をしていたからかもしれない……。
「そなたの名は?」
彼の声を聞いたのは初めてだった。
低くて落ち着いた心地の良い声。
「れ、蓮華です。」
「良い名だ。」
「あ、あなたは?」
「我の名は一夜。蓮華、辛いだろう……。おいで。」
私は操られるようにベッドから起きて一夜と名乗る青年の元へと歩み寄った。
青年は慈しむように、優しい仕草で私をふわりと抱きしめた。
人間離れした一夜さんには、あの身がすく竦むような嫌悪感は感じなかった。
彼には生身の人間のような体臭が無くて、微かに白檀の香りがした。
「蓮華……。毎晩泣いて……何が悲しいのだ?」
「わ、私の身体は穢れてしまって……。気持ち悪くて……あの男たちに残された痕が消えない……。」
「……そうか……。蓮華泣くといい。」
一夜さんの胸の中でわんわんと泣いた。
優しく頭を撫でられ子供のように……。
嗚咽を上げながらみっともないほどの声を上げて、身を捩らせ、心の底から涙を流す。
いつも、泣くと『煩い』と怒鳴られ物を投げつけられた。
こんなに、声を上げて泣けるのは久しぶり。
※※※
随分長い時間泣かせてくれたような気がする。
「蓮華、身体を清めよう。」
一夜さんが髪を掬い、キスを落とした。
継母に引っ張られ千切れて揃わないガサガサとした髪なのに………。
男性が怖かった………。
なのに、何故か一夜さんを拒むことが出来ない。
怖いほどに透き通った赤い瞳に見つめられると、脳の一部が壊れたように麻痺してしまった。
微かに触れる淡い口づけ。優しいキスは身体の警戒心を解いてしまう。
私の身体のあまねく場所を清めるように舌を這わせてくれた。
合間に囁かれる慰めの言葉。
鞭で付けられた傷痕を優しく何度も撫でてくれる。
「蓮華、そなたは綺麗だ。穢れてなんていないよ。」
一夜さんに触られた所から、甘く痺れるような快感が湧き上がり身体を支配していく。
もはや私の身体は私の意思では動かない。
熱に浮かされ、頭は正常に働かない。
素直にその快楽に身を任せることが出来た。
お腹の奥が切なく疼いて、一夜さんを求めるように蠢いた。
「一夜さん。気持ちいいーー。」
「一夜でいい。蓮華、そなたはそのまま感じておれば良い。」
一夜さんの腕の中で初めての絶頂を迎え、女として愛される喜びを繰り返し教えられた。
自分が大切に扱われることの悦びに浸る。
※※※
朝目覚めるといつもの病室。
「夢?」
私の秘所は愛蜜で濡れていた。
夢の中で、私は確かに幸せだった。
それから私は病室で毎晩一夜さんに抱かれる夢を見た。
夢の中では胸を掻き毟りたくなるような焦燥感も身体中についた傷の痛みも感じない。
ただ、甘い快楽に溺れる。
繰り返しそんな夢を見るうちに、肌に残る男たちの感触はすっかり消えていた。
私の大切な、大切な夢。
蓮華視点
翌朝発見された私は身体中に怪我をしていて、そのまま病院へと運ばれ入院する事になった。
特に後頭部には七針縫う怪我があり、出血が酷かったようだ。
「うっ……うっ……。」
一人ベッドの中で布団を被って涙を流す。
「一刻も早く忘れることですね。」
私を診察した医師はそう言うと興味を失ったように次の患者の診察へと向かって行った。
その言葉はまるでひとごとのように冷たく響いた。
泣いても喚いても時間は戻らない。
男たちに触られた感覚が消えない。
あの嘲笑うような声が今でも聞こえる。
噎せるような濃い匂いが鼻の奥にこびりついて離れない。
一日に何度も湯浴みして、皮が剥けるほど肌を擦った。小さな傷痕がお湯に滲みると消毒されたような気すらした。
食事を食べる度に吐いて、泣きながら歯を磨く。
そんな日が一週間ほど続いたある日ーーー
私は不思議な夢を見た。
ふと気付くと、部屋の中に何か得体のしれない気配。
辺りは薄暗い。
朧気な視界の中で必死に目を凝らす。
窓際に立っていたのは少し青みがかった白銀の髪、血のように赤い瞳の青年。
灰白色の麻の着物を着流している。
その青年は人間離れした美しい顔立ちしていて、頭にはほんの少し角が見えていた。
「……あ……っ。」
この青年には見覚えがある。
幼い頃、よく夢に出てきていた。
8年前増水した川に転落して母が亡くなった時も夢に出て来て慰めてくれた青年。
毎晩、何も言わず私を抱きしめて眠ってくれる………そんな夢。
けれども、私が夜叉堂へ通い始めた日から夢に現れなくなった。
青年は赤い瞳を痛ましそうに揺らしながら、私を見ていた。
人間では無いと分かるのに不思議と恐怖を感じなかったのは、彼が切なげな表情をしていたからかもしれない……。
「そなたの名は?」
彼の声を聞いたのは初めてだった。
低くて落ち着いた心地の良い声。
「れ、蓮華です。」
「良い名だ。」
「あ、あなたは?」
「我の名は一夜。蓮華、辛いだろう……。おいで。」
私は操られるようにベッドから起きて一夜と名乗る青年の元へと歩み寄った。
青年は慈しむように、優しい仕草で私をふわりと抱きしめた。
人間離れした一夜さんには、あの身がすく竦むような嫌悪感は感じなかった。
彼には生身の人間のような体臭が無くて、微かに白檀の香りがした。
「蓮華……。毎晩泣いて……何が悲しいのだ?」
「わ、私の身体は穢れてしまって……。気持ち悪くて……あの男たちに残された痕が消えない……。」
「……そうか……。蓮華泣くといい。」
一夜さんの胸の中でわんわんと泣いた。
優しく頭を撫でられ子供のように……。
嗚咽を上げながらみっともないほどの声を上げて、身を捩らせ、心の底から涙を流す。
いつも、泣くと『煩い』と怒鳴られ物を投げつけられた。
こんなに、声を上げて泣けるのは久しぶり。
※※※
随分長い時間泣かせてくれたような気がする。
「蓮華、身体を清めよう。」
一夜さんが髪を掬い、キスを落とした。
継母に引っ張られ千切れて揃わないガサガサとした髪なのに………。
男性が怖かった………。
なのに、何故か一夜さんを拒むことが出来ない。
怖いほどに透き通った赤い瞳に見つめられると、脳の一部が壊れたように麻痺してしまった。
微かに触れる淡い口づけ。優しいキスは身体の警戒心を解いてしまう。
私の身体のあまねく場所を清めるように舌を這わせてくれた。
合間に囁かれる慰めの言葉。
鞭で付けられた傷痕を優しく何度も撫でてくれる。
「蓮華、そなたは綺麗だ。穢れてなんていないよ。」
一夜さんに触られた所から、甘く痺れるような快感が湧き上がり身体を支配していく。
もはや私の身体は私の意思では動かない。
熱に浮かされ、頭は正常に働かない。
素直にその快楽に身を任せることが出来た。
お腹の奥が切なく疼いて、一夜さんを求めるように蠢いた。
「一夜さん。気持ちいいーー。」
「一夜でいい。蓮華、そなたはそのまま感じておれば良い。」
一夜さんの腕の中で初めての絶頂を迎え、女として愛される喜びを繰り返し教えられた。
自分が大切に扱われることの悦びに浸る。
※※※
朝目覚めるといつもの病室。
「夢?」
私の秘所は愛蜜で濡れていた。
夢の中で、私は確かに幸せだった。
それから私は病室で毎晩一夜さんに抱かれる夢を見た。
夢の中では胸を掻き毟りたくなるような焦燥感も身体中についた傷の痛みも感じない。
ただ、甘い快楽に溺れる。
繰り返しそんな夢を見るうちに、肌に残る男たちの感触はすっかり消えていた。
私の大切な、大切な夢。
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