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入院中、義母や牡丹が見舞いに訪れることは無かったし、父親からの連絡も無い。
分かっていたが、血の繋がった父親から何の音沙汰も無いことに寂しさを感じてしまう。
傷の抜糸が終わり、食事も食べれるようになった頃、医師から退院の許可が下りた。
自ら荷物をまとめて退院の準備をしている時、私は独りぼっちなのだと改めて感じる。誰一人心配してくれる人間などいないと……。
自宅に帰ると元通りの日々が待っていた……。
帰った私に投げつけられたのは心無い言葉。
「お姉ちゃんの恥ずかしい噂で外を歩けないわ。しばらく外に出ないでね。私、友達に色々聞かれたんだから!」
「全く、強姦なんてね。おおかた、あんたが誘ったんじゃないのかい?藪元家の恥だよ、あんたは。このあばずれっ!!」
継母と妹の言葉の刃は容赦なく、私の心に突き刺さる。
鞭でつけられた傷痕がじくりと疼く。
「なんだい?その反抗的な目は!!」
パンっ!!
直ぐに謝らない私に腹を立て、継母が私の頬を力一杯平手打ちした。
「あんたに縁談が来てたんだけど、この縁談は牡丹に回すよ。相手は大きな商家の嫡男だからね。穢れたお前なんかが相手では先方にも失礼だろう?」
「はい。」
私は力無く頷いた。
元より、傷痕だらけの身体。
男性に対する恐怖心も強く、嫁げるなどとは思っていなかった。
義母と妹は私を気遣う素振りなど、一切見せない。雑草で荒れた庭、洗濯物の山、玄関と床の間に飾ってあった花は枯れて水が腐ってしまっている。
退院したばかりで怠い身体に鞭打ち深夜まで働いた。
その夜も一夜さんは夢に現れて私を慰めてくれた。
夢の中では心を抉る言葉も、身体の疲れも全て忘れて官能に浸れる。
※※※
翌日、夜が明ける前に家を出て久しぶりに夜叉堂へと向かった。
夜叉堂に入ると、微かに白檀の匂いがして、一夜さんを思い出した。
「そういえば一夜さん、このお堂みたいな匂いがする。」
暫く掃除をしていなかった床には少し埃が積もっていた。
床を掃いて奥への扉を見ると御札が少し剥がれかかっているのに気付いた。
「あら?剥がれかかっているわ。」
母に教えてもらい作った御札には何枚か予備がある。
私は鞄から新しい御札を取り出して糊を塗り、扉へきちんと貼り付けると古い御札を剥がした。
「これで大丈夫ね。」
穏やかな気持ちで夜叉堂の掃除を終えて家へと帰る。
家に帰る足取りが重い。
家には帰りたくない。けれど早く戻らないと怒られる。鞭で打たれるかもしれない……。
家に帰ると待っていた義母にこき使われ、一日中休む暇など与えられず女中のように働いた。
義母と妹が眠りにつく頃、やっと自分の部屋である物置部屋へと戻れる。
夢の中で一夜さんに会える。
それだけが心の支えだったのに……。
「一夜さん……。」
その夜から一夜さんは夢に出てくれなくなってしまった……。
初めて一夜さんの夢を見た時は、こんな淫らな夢を見る自分を恥じたが、一夜さんに会える夢だけが、辛い現実を忘れさせてくれていた。
その夢も失い、私は…また一人に戻った………。
※※※※※
自宅へと戻って数週間が過ぎた。
私は全てを諦め、ただ言い付けられた事をこなす日々を送っていた。
そんなある日ーーー
義母キヨの部屋へ男が入って行くのを見かけた。
(あの男たちは…………。)
見覚えのある顔に胸騒ぎを覚え、ドクドクと速まる鼓動が不安を煽る。
障子に自分の姿が映らないように気を付けながら、そっと中を覗き見た。
チラリと見えた横顔に覚える激しい嫌悪感。
(間違いない。私を襲ったあの男たちだ。何をしに家に来たの?)
分かっていたが、血の繋がった父親から何の音沙汰も無いことに寂しさを感じてしまう。
傷の抜糸が終わり、食事も食べれるようになった頃、医師から退院の許可が下りた。
自ら荷物をまとめて退院の準備をしている時、私は独りぼっちなのだと改めて感じる。誰一人心配してくれる人間などいないと……。
自宅に帰ると元通りの日々が待っていた……。
帰った私に投げつけられたのは心無い言葉。
「お姉ちゃんの恥ずかしい噂で外を歩けないわ。しばらく外に出ないでね。私、友達に色々聞かれたんだから!」
「全く、強姦なんてね。おおかた、あんたが誘ったんじゃないのかい?藪元家の恥だよ、あんたは。このあばずれっ!!」
継母と妹の言葉の刃は容赦なく、私の心に突き刺さる。
鞭でつけられた傷痕がじくりと疼く。
「なんだい?その反抗的な目は!!」
パンっ!!
直ぐに謝らない私に腹を立て、継母が私の頬を力一杯平手打ちした。
「あんたに縁談が来てたんだけど、この縁談は牡丹に回すよ。相手は大きな商家の嫡男だからね。穢れたお前なんかが相手では先方にも失礼だろう?」
「はい。」
私は力無く頷いた。
元より、傷痕だらけの身体。
男性に対する恐怖心も強く、嫁げるなどとは思っていなかった。
義母と妹は私を気遣う素振りなど、一切見せない。雑草で荒れた庭、洗濯物の山、玄関と床の間に飾ってあった花は枯れて水が腐ってしまっている。
退院したばかりで怠い身体に鞭打ち深夜まで働いた。
その夜も一夜さんは夢に現れて私を慰めてくれた。
夢の中では心を抉る言葉も、身体の疲れも全て忘れて官能に浸れる。
※※※
翌日、夜が明ける前に家を出て久しぶりに夜叉堂へと向かった。
夜叉堂に入ると、微かに白檀の匂いがして、一夜さんを思い出した。
「そういえば一夜さん、このお堂みたいな匂いがする。」
暫く掃除をしていなかった床には少し埃が積もっていた。
床を掃いて奥への扉を見ると御札が少し剥がれかかっているのに気付いた。
「あら?剥がれかかっているわ。」
母に教えてもらい作った御札には何枚か予備がある。
私は鞄から新しい御札を取り出して糊を塗り、扉へきちんと貼り付けると古い御札を剥がした。
「これで大丈夫ね。」
穏やかな気持ちで夜叉堂の掃除を終えて家へと帰る。
家に帰る足取りが重い。
家には帰りたくない。けれど早く戻らないと怒られる。鞭で打たれるかもしれない……。
家に帰ると待っていた義母にこき使われ、一日中休む暇など与えられず女中のように働いた。
義母と妹が眠りにつく頃、やっと自分の部屋である物置部屋へと戻れる。
夢の中で一夜さんに会える。
それだけが心の支えだったのに……。
「一夜さん……。」
その夜から一夜さんは夢に出てくれなくなってしまった……。
初めて一夜さんの夢を見た時は、こんな淫らな夢を見る自分を恥じたが、一夜さんに会える夢だけが、辛い現実を忘れさせてくれていた。
その夢も失い、私は…また一人に戻った………。
※※※※※
自宅へと戻って数週間が過ぎた。
私は全てを諦め、ただ言い付けられた事をこなす日々を送っていた。
そんなある日ーーー
義母キヨの部屋へ男が入って行くのを見かけた。
(あの男たちは…………。)
見覚えのある顔に胸騒ぎを覚え、ドクドクと速まる鼓動が不安を煽る。
障子に自分の姿が映らないように気を付けながら、そっと中を覗き見た。
チラリと見えた横顔に覚える激しい嫌悪感。
(間違いない。私を襲ったあの男たちだ。何をしに家に来たの?)
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