薄幸の少女は鬼の花嫁となる (旧題)【R18】薄幸の少女は夜叉との淫靡な夢に溺れる

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「血の祝言?」 

私はろくろ首の汐織さんに花嫁衣裳を着せられていた。自分には白無垢の花嫁衣裳なんて何だか似合わない気がする……。
けれど、汐織さんは長く伸びる首を生かしてくるくると帯を巻いてくれた。

二口女の風花さんは化粧と髪結いをしてくれる。
二つある口はそれぞれ人格が違うみたいでとっても賑やか。

「そうです。近いの盃にお互の血を混ぜて一気に飲むのです。」

丁寧に話してくれるのは表の口。

「蓮華も鬼になる。鬼の回復力は驚異的だ。あのババアに付けられた傷も全て治るさ。」

少し口調が荒いのは後ろの口だ。

「え?どうして知ってるの?」

「それは…ですね。ひっく、雲外鏡の颯田という妖怪がいて、ひっく、人の世を映してくれるので皆で藪元家を時々覗いていたんです、ひっく。頭領を封印している家でしたからね、ひっく。」

汐織さんはずっとしゃっくりをしている。

「首が長いから」と言っていたが、関係無いような気がするけど……。


※※※


祝言は新しい畳の匂いがする大広間で行われた。
それぞれの妖怪たちが一張羅を着て、緊張した面持ちで正座している。
なんだか滑稽な感じがしてちょっと笑ってしまった。

一夜さんを見ると、黒い袴を羽織っていて凛とした姿が様になっている。

「一夜さん、格好いいです。」

「蓮華も綺麗だよ。永遠に我と共に生きてくれるか?我もそなただけを愛すると誓う。」

「はい。一夜さんだけを永遠に愛します。ずっとお側にいさせてください。」
 
私が愛を誓うと、一夜さんは瞳を優しく細めてくれた。

白い盃に少しのお酒が注がれ前に置かれる。
ここに血を入れるらしい……。
お互いの指先に小さい傷を付けて血を一滴絞った。

鬼も血は赤いんだなぁー、なんて眺めているうちに盃は交換され一夜さんは盃のお酒を飲み干した。

次は私の番。

「蓮華、そなたは人では無くなる。覚悟はいいか?」

「はい。」

彼の視線を横に感じながら、一気にお酒を飲み干した。

身体が熱くなり頭がぽうっとする。

「えっ!何……?あつい。」

「蓮華、大丈夫。身体が作り替えられるだけだ。少し寝ているといい。祝言は続いているから。宴会みたいなものだ。」

一夜さんに横抱きにされ、私は奥の間へと運ばれた。 

※※※

「……ん……?」

「蓮華さま。お目覚めになりました?」

風花さんが私の側に付いていてくれたみたい。今話をしているのは表の口。

「ええ。どれくらい寝てたのかしら?」

「ほんの半時ほどです。さあさあ、祝言に戻りましょう。皆がまだ祝いの盃を交わしております。立派に鬼になられた蓮華さまを見て、皆が喜ぶでしょう!変わられたお姿をご覧になりますか?」

「ええ。」

運ばれてきた姿見に映っていたのは、ふっくらとして健康的な私の姿。
袖を捲って腕を見ると、鞭で付けられた傷痕も綺麗に消えていた。
そして、頭には一夜さんと同じように小さな二つの角が生えている。

「本当に鬼になったのね。傷も消えてるわ。」

「あたりまえさ!頭領の妖力は強いんだぞ!」

誇らしげに風花さんの後ろの口が答えた。

風花さんに連れられて、大広間に戻ると宴会が続いていた。
みんな飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。

そして一番目立っていたのはろくろ首の汐織さん。首がぐるぐると伸びすぎて縺れている。

「汐織ちゃんは酔うと首が縺れちゃって、時々丸結びになってみんなで助けるんですよ。まーたあんなになって……。蓮華さま、私ちょっと汐織ちゃんに注意してきますね。」
そう言って風花さんは汐織さんの方へと駆けていった。
妖怪たちが陽気に騒ぐようすを、一夜さんは穏やかに微笑みながら見ている。
私は一夜さんの隣の座布団に座った。

「一夜さん。」

「蓮華、戻ったか。」

みんなが一斉に私を振り返り、角が見えるのを確認して喜んでいた。一夜さんの隣に座っている私に妖怪たちが列を作ってお酌しに来てくれる。

「花嫁さま、お酒をどうにょ。私は一反木綿の睦六にょ。花嫁さまのお出かけには呼んでにょ。」
「あ、ありがとう。」

妖怪たちは陽気で親しみ易くて、私はすっかり楽しくなってこの宴会の雰囲気を楽しんでいた。

そんな私を襖からチラチラと覗いている妖怪がいる。一つ目の半分が見えていた。

「疾風、雨象、おいで!」

一夜さんに呼ばれて一つ目小僧の疾風くんとからかさお化けの雨象くんが部屋へと入ってきた。

「れ、蓮華さまは僕たちを見て嗤わない?お、怒らない?」

「嗤ったり怒ったりしないわ。仲良くしてね?」

疾風くんと雨象くんはほっとしたような表情をした。

「この子たちは昔人間に捕まって見世物小屋に売られたことがあるのです。その見世物小屋が流行って人間たちは妖怪狩りを始めましてね……。だから頭領は怒って人間を襲い神々との戦を始めたのです。」

宗玄さんはそう教えてくれた。
こんな小さい子たちを見世物小屋になんて……。 

「疾風くん、雨象くん、人間たちがごめんね。元人間として謝るわ。そして、私はこれからあなたたちの味方よ!」

疾風くんと雨象くんはすっかり安心したのか、私のそばに近寄って色々とお喋りしてくれた。
「宗玄さんはお酒を飲むと泣き上戸だよ!」
とか
「風花さん実は怒ると怖いのは表の口なんだよ!」
とか。
屋敷に住む妖怪たちの裏情報を教えてくれた。

そんな賑やかな祝言は夜半を過ぎるまで行われ、皆が酔いつぶれて畳に寝転がった頃、私は風花さんに用意された寝巻きに着替えさせられた。

「蓮華さま、頭領は夜がお強いのでお気をつけくださいね。」
「え?」
「精力が有り余ってんだよ。付き合うの大変だろうけど、頑張れよ!」

風花さんの表の口と後ろの口に励まされた。

寝室へと向かう廊下の途中凄まじい数の視線を感じて振り向くと、そこにはさっき広間で酔い潰れていた妖怪たちが私の後をつけて来ていた。

「……っ!?」

「あんたたちっ!!覗いたら頭領に怒られるよっ!!」

風花さんの後ろの口の一喝で、妖怪たちは散り散りに逃げて行った。

「妖怪は好奇心旺盛ですから……。申し訳有りません。」
風花さんはそう言うけれど……。
落ち着かない。
覗かれちゃいそう……?

そんな不安を抱えつつ、私は寝室の襖をそーっと開けた。



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