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一夜視点
その少女は異質な存在だった。
我ら妖怪にとって宿敵ともいえる藪元家の少女は、夜叉堂を慈しむように大切そうに清めにくる。
そこに、妖怪への嫌悪感など微塵も無かった。
彼女の父親の神力は凡庸だった。
そして、本来なら神力がある藪元の血を受け継ぐ人間が管理すべき封印を、嫁にきた神力を持たぬ女に全てを任せ、自分は夜叉堂の封印を維持するという役割を放棄して逃げ出した卑怯な人間。
そんな夫に全てを押し付けられたのが、蓮華の母親だった。
蓮華の母親は、今までの藪元家の人間のように妖怪に対する蔑みや、敵意は一切無く、ただ守るべき大切な場所として夜叉堂を清めた。
けれど、神力を持たぬ者の封印など役には立たない。
夜叉堂に掛けられた封印は、ゆっくりと確実に弱くなっていった。
そしてその母親の後を継いだのが娘の蓮華だった。
蓮華の母親が亡くなってから、封印がかつてないほど弱くなり、幽体で彼女の夢に入った。
初めはほんの少しの興味。
蓮華は毎晩一人で泣いていた。
神力が強く、穢れの無い清廉な魂は直ぐに砕けてしまいそうなほど儚くて脆そうで………。
宿敵ともいえる血筋の少女なのに、痛々しいその姿を、放ってはおけなかった。
異形の俺を怖がることなく身をあずける。
夢の中で彼女の傷が癒えることを祈りながら抱きしめた。
しかし、彼女が夜叉堂に通うようになると、封印が再び力を持ち、我は自由には動けなくなった。
彼女は母親と同じく大切そうに夜叉堂を清める。
けれど、母親とは違い彼女の封印の力は強くて………。
それっきり夢の中に会いに行けなくなった。
蓮華の事が気になって、心眼で彼女の様子はいつも見ていた。
虐待され、傷だらけになる彼女を……。
周囲の人々に蔑まれ、泣きながら眠る夜、どれだけ夢に現れてやりたいと願っただろう。
それから数年経ったある日、彼女が男に襲われた。
ぼろぼろになる彼女を見た。
彼女の悲鳴が聞こえた。
助けたいのにーーー
我の前に貼ってある封印の札が邪魔をする。
それから、彼女は病院へと運ばれ夜叉堂へと来ない日が続いた。
再び封印の力が弱まる。
幽体で動けるようになり、蓮華の夢の中へと会いに行った。
数年前、美しく清らかだった彼女の魂には黒い淀みが押し込められるように沈んでいた。
数々の仕打ちに対する怨みは心の奥底に溜まり続け、彼女の心は壊れる寸前に見えた。
堪らず、夢の中で彼女を慰めるように抱いた。
他の男の痕跡を消してやりたかった………。
人の世で理不尽に合いながらも、清らかな心を保つことの難しさを知っている。
我にも人だった過去がある。
彼女は逃げ出すこともなく、再び夜叉堂へと通い………我の封印は再び強い力を持った。
愚かな人間たちは、更に蓮華を追い詰め、真実を知った彼女は封印を解いたーーー。
我の心は決まっていた。
必ず、蓮華を我が花嫁に迎えるとーーー。
彼女が人間たちに向かって発した力。
それは積年の怨み、憎しみ。
外に出さぬよう必死に奥底に押し込めてきたのだろう。
一気に暴発してしまった。
今、蓮華をこの胸に抱きながら思う。
あの時、砕け散ってしまいそうだと思った蓮華の魂は、しなやかでどこまでも強い。
妖怪城の頭領である我の隣に立つ者として、彼女は誰よりも優しく強いーーー。
その少女は異質な存在だった。
我ら妖怪にとって宿敵ともいえる藪元家の少女は、夜叉堂を慈しむように大切そうに清めにくる。
そこに、妖怪への嫌悪感など微塵も無かった。
彼女の父親の神力は凡庸だった。
そして、本来なら神力がある藪元の血を受け継ぐ人間が管理すべき封印を、嫁にきた神力を持たぬ女に全てを任せ、自分は夜叉堂の封印を維持するという役割を放棄して逃げ出した卑怯な人間。
そんな夫に全てを押し付けられたのが、蓮華の母親だった。
蓮華の母親は、今までの藪元家の人間のように妖怪に対する蔑みや、敵意は一切無く、ただ守るべき大切な場所として夜叉堂を清めた。
けれど、神力を持たぬ者の封印など役には立たない。
夜叉堂に掛けられた封印は、ゆっくりと確実に弱くなっていった。
そしてその母親の後を継いだのが娘の蓮華だった。
蓮華の母親が亡くなってから、封印がかつてないほど弱くなり、幽体で彼女の夢に入った。
初めはほんの少しの興味。
蓮華は毎晩一人で泣いていた。
神力が強く、穢れの無い清廉な魂は直ぐに砕けてしまいそうなほど儚くて脆そうで………。
宿敵ともいえる血筋の少女なのに、痛々しいその姿を、放ってはおけなかった。
異形の俺を怖がることなく身をあずける。
夢の中で彼女の傷が癒えることを祈りながら抱きしめた。
しかし、彼女が夜叉堂に通うようになると、封印が再び力を持ち、我は自由には動けなくなった。
彼女は母親と同じく大切そうに夜叉堂を清める。
けれど、母親とは違い彼女の封印の力は強くて………。
それっきり夢の中に会いに行けなくなった。
蓮華の事が気になって、心眼で彼女の様子はいつも見ていた。
虐待され、傷だらけになる彼女を……。
周囲の人々に蔑まれ、泣きながら眠る夜、どれだけ夢に現れてやりたいと願っただろう。
それから数年経ったある日、彼女が男に襲われた。
ぼろぼろになる彼女を見た。
彼女の悲鳴が聞こえた。
助けたいのにーーー
我の前に貼ってある封印の札が邪魔をする。
それから、彼女は病院へと運ばれ夜叉堂へと来ない日が続いた。
再び封印の力が弱まる。
幽体で動けるようになり、蓮華の夢の中へと会いに行った。
数年前、美しく清らかだった彼女の魂には黒い淀みが押し込められるように沈んでいた。
数々の仕打ちに対する怨みは心の奥底に溜まり続け、彼女の心は壊れる寸前に見えた。
堪らず、夢の中で彼女を慰めるように抱いた。
他の男の痕跡を消してやりたかった………。
人の世で理不尽に合いながらも、清らかな心を保つことの難しさを知っている。
我にも人だった過去がある。
彼女は逃げ出すこともなく、再び夜叉堂へと通い………我の封印は再び強い力を持った。
愚かな人間たちは、更に蓮華を追い詰め、真実を知った彼女は封印を解いたーーー。
我の心は決まっていた。
必ず、蓮華を我が花嫁に迎えるとーーー。
彼女が人間たちに向かって発した力。
それは積年の怨み、憎しみ。
外に出さぬよう必死に奥底に押し込めてきたのだろう。
一気に暴発してしまった。
今、蓮華をこの胸に抱きながら思う。
あの時、砕け散ってしまいそうだと思った蓮華の魂は、しなやかでどこまでも強い。
妖怪城の頭領である我の隣に立つ者として、彼女は誰よりも優しく強いーーー。
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