失意の中、血塗れ国王に嫁ぎました!

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16.そして国王は愛妻家に!

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 あれから半年。

 陛下は本当に私をそばに置いていて、私を抱きかかえて移動することも多い。

 陛下が私を抱っこしていることなんて日常茶飯事で、王宮に勤める人にはもはや見慣れた光景。今や誰も振り返ることはない。

 だけどこの方には違うみたい。

 今、廊下の向こうから二人の侍女を引き連れ歩いてきたのは、アリエティー公女。
 リュゼット王国と国境を接するルミエルナ公国から遊学のために来ている。三週間の予定で王宮に滞在中だ。

「陛下ぁ~っ!」
「アリエティー公女、どうされたのだ?」
「またカトリーナ様は体調が悪いんですかぁ?」
「俺の大切な妃だからな。大事が無いように気をつけているのだ。」
「大変ですねぇ~、アリーなら若いからまだ元気いっぱい歩けますよぉ?」
「若くて、元気なのは良いことだな。滞在中、ごゆるりとされよ。」

 まだ17歳のアリエティー様はフワフワしたピンクのドレスがとても似合っていて、まるでお人形さんみたいな愛くるしさ。
 陛下の噂を聞いて憧れてリュゼット王国での遊学を望んだらしい。

 王宮への滞在中もこうやって毎日陛下にアプローチ!私がそばにいてもお構い無しだ。
 アリエティー公女は陛下が好きで好きでたまらないみたい。陛下を見る公女の瞳にはハートが飛んでいるのではないかしら?
 彼女はその若さで真っ直ぐに陛下へ好意を伝えてくる。

「陛下、アリーは暇なので今度一緒にランチでも食べたいです。」
「ああ。カトリーナも一緒になるが、それで良いか?」
「ええ?陛下と二人きりがいいなぁー」
「はははっ!夫婦は二人で一緒にいるものだからな。それは無理な願いだ。」
「えーー。わたくしのお父様とお母様はほとんど一緒にお食事をしませんよぉ?」
「それは文化の違いだろう。リュゼット王国では妻を常に抱きかかえて歩き、片時も離れないものなのだ。」

 陛下はしれっと嘘をつく。
 そんなわけない!
 男性が皆そんな事をしていたら、王宮中の働く男性が奥さんを抱っこして歩いていることになっちゃう。

 でもアリエティー公女はそんな事に気づかないみたい。

「まぁ!!リュゼット王国の男性は皆が愛妻家なんですね。」なんて瞳を輝かせている。

 もちろん、アリエティー公女と一緒に食べたランチは全て陛下の手ずから食べる事になった。

 正直、味がわかんない……。
 陛下はアリエティー公女の猛攻にも靡くことなく、公女は予定通り三週間で帰国の途に就いた。

 その後、帰国したアリエティー公女によってリュゼット王国は愛妻家大国として知られるようになる。

 今我が国の貴族令息には他国から大量の縁談が舞い込んでいる。当然のように愛人を囲う自分の国の貴族より、愛妻家大国のリュゼット王国へ嫁ぎたいと思う女性が多いみたい。

 留学先にもリュゼット王国は人気だ。

 この噂、陛下のせいだからね?
 我が国の貴族男性には是非奥さんを大切にしてもらいたいと思う。






 今、私は妊娠6ヶ月。陛下と手を繋いで庭園を散歩中。私の運動不足解消のために毎日こうやって散歩するのは日課だ。

 祖国のアルティス伯爵領も落ち着いたみたいで、母親が出産前にはリュゼット王国に来てくれる事になった。

 初産は不安だろう、と陛下が配慮してくれたのだ。
 彼には大きな恩がたくさんあって、感謝している。だからもっとたくさんの幸せを陛下にあげたい。
 隣を歩く彼を見上げると、私の視線に気づいて止まってくれた。
「どうした?」

 私に話し掛ける時の優しい声はずっと変わらない。ギュッと繋いだ手は大きくて、これからも私を支えてくれるのだろう。

「赤ちゃん、元気に産まれるといいですね。」
「なんだ、不安なのか?」
「ええ、まぁ、初めてですし……。」

 陛下は大きな身体で私を包むように抱きしめぽんぽんと宥めるように背中を叩いた。

「心配するな。リーナもお腹の子も、俺が必ず守ってやるから。」

  彼は相変わらず自信家で大雑把。だけど、そのおおらかさが私の心を軽くしてくれる。

「産むのは私です。だから私が頑張ります。」
「その調子だ。」

 フッと安心したように目尻を下げる。
 厳つい顔なのに、こうやって見ると全然怖く無くなるから不思議。

 昼下がりの午後はちょっと暑くて
 こうやって歩いていると汗ばんでくる。

「暑いな。」
「ええ、でもこの子が生まれてくる頃には寒くなりますわ。」

 出産するのは雪が降るほど寒い季節。だから今から赤ちゃんのために靴下と帽子を編んでいる。
 陛下は私が編んでいる靴下を見て
「いくら赤子とはいえ、小さすぎるだろう!」
と、驚いていたけど多分平均的なサイズ。

 何度も靴下を見て
「本当にこんなに小さいのか?」なんて確認してくる。

 きっと子煩悩な父親になる。
 恐る恐る我が子を抱く陛下の姿を想像しながら、私は膨らんだお腹をそっと撫でた。


ーー(完)ーー
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感想 36

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みんなの感想(36件)

2021.04.23 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.04.23

maro様~💖

感想ありがとうございます🌸
自分でもお話がどこに着地するのか分からなくて、ドキドキです😅
とりあえず完結できてほっとしています🎵

解除
セライア(seraia)

溺愛ハッピーエンド、ご馳走様でした😃🎵

あの陛下だからと冗談半分でのコメントだったのに、まさか、ホントに抱きかかえて移動するようになるとは・・・いや、見せつけ効果は隣国の王女で実証されたっぽいので良かったのかもしれない、のかなぁ❓😅
少なくとも、平和到来の象徴ではあるかも😂プククッ

あの陛下なら 親バカにはなっても モンスターペアレントにはならないでしょうし、カトリーナが父子を制御しそう😆

2021.04.23

seraia様~💖
拙作に最後までお付き合いいただきありがとうございました‼️
感想とても励みになりました💕
悲しい始まりだったので、最後はストレス無いようにしてみました(’-’*)♪
R18にしなかったのは心残りです😅

解除
能登原あめ
2021.04.22 能登原あめ

始まりが悲しかったので幸せになって甘々の愛妻家エンド、ご馳走さまです💓
オメデタも喜ばしい🌟

靴下はすぐ履けなくなるような気がします!
陛下の子、なんだか大きく生まれそうですね(*´艸`*)♡
完結お疲れ様でした♪

2021.04.22

一宮あめ様~💖

完結までお付き合いくださりありがとうございました‼️
終盤、R18にしなかったことを物凄く後悔しました😅
あめ様のRお待ちしてます🎵

解除

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