80 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
80、検査結果。
しおりを挟むでもあれって、属性関係ないから……。
そう思ってる側から、レオンハルト王子がさらに吹き出す声が聞こえてくる。
うん、我慢は拷問だね。素直に笑っちゃった方がいいと思うよ。
「あんな……アレと一緒にしないでっ!っ痛!」
ぱちん、という音とともに、ユージアが額を押さえて踞ろうとするのが見えたので、咄嗟に抱き込んだ。
流石に親としての教育的指導と言うにしてもやりすぎでしょう。
「いじめちゃダメ!」
冗談で話した砂糖などの固形が飛んできた感じではなかったから、たぶん風の魔法だとは思う。
直線で作用するものだろうから、抱き込んで頭を隠してしまえば狙えないはず。
ハンスイェルクに向かって声を上げると「もうしない」の意思表示か、両の手を小さく上げたのが見えた。
「……セシリアありがとう。でも…絵面的にこれはよろしくないと思うの」
「そうなの?でも、痛かったでしょう?」
「痛かったけど、そうね~その姿だとダメかなぁ」
絵面……絵面的にって、あぁ!
だって、ユージアの身体はともかく、実年齢は私やエルネスト達と変わらないって言ってたし、全く気にしてなかったんだけど。
見た目だけでいうなら、今の私もユージアも、こっちの成人と変わらない背格好だった。
「……難しいね」
ルークを軽く睨みつつ、そっとユージアを解放する。
顔を上げたユージアの額には、さっきの角砂糖より大きめのミミズ腫れができていた。
涙目だし、顔赤いし、相当痛かったんじゃないかな……。
今度やったら許さん!
「え、これだけなの?」
「文字が…読めないな」
シュトレイユ王子とレオンハルト王子の声がしたので、石版が見える距離まで近づくと……。
2人が納得いかない顔で、石板と睨めっこをしていた。
あぁ、読めないね。
そりゃそうだ。私が懐かしく感じたってことは1000年以上前のアーティファクトと呼ばれる類のマジックアイテムになるから……高性能かつ高品質。
……そして文字が古代語。
(使われていない言葉だもんなぁ。流石に王子でも読めないか……)
王族の子は、いずれは外交関係があるから、ある程度の外国語は幼いうちにマスターしてしまうらしいから読めるかな?と思ってたんだけど。
そもそもその科目からも外れちゃってるんだね。
この古代語は、魔法が栄えていた王国が使っていた文字で、当時は共通語の様に使われていたのだけれど、その国が滅んでしまうと途端に使われなくなってしまった。
……魔法の最先端を行っていた国だっただけはあって、今も昔からの魔法の術式には使われているので、記号や術式として勉強する人はいるけれど、本来の読み方を、書き方を知ってる人は少ないんじゃないかな。
「……シュトレイユ王子は、風と光の属性をお持ちの様だ。訓練すれば、土も使えそうです。魔力値は……10段階中の5です。学園の生徒の平均値が2ですから、かなり優秀です」
何も言わずに黙々と石板の数値を、書き取っていたルークが、作業を終えたのか先ほどよりは棒読み口調で、一気に説明をしていった。
……ていうか、一瞬、あからさまに面倒臭そうな顔をしたよね!?
「やった!光と風だって!僕もおけが、なおせるようになるのかな?」
「レイは凄いな。僕は……何だろう」
そう言いつつ、石板に触れると先ほどとは違う文字がずらりと浮かび上がった。
みんなの視線がルークに集中するのだけれど、書き終わるまでは結果を教える気はないらしく、黙々とペンを動かし続けていた。
ちなみに、レオンハルト王子は風と火だった。私の父様と同じだ。
レイのように希少属性ではなかったけど、潜在的な数値がすごく高くて…訓練次第では確実に化ける。
もともと風と火は、攻撃特化のような組み合わせだし、派手さという意味ではトップクラスなんじゃないかな?
(さすが王族というべきなんだろうなぁ。ま、他人事でもないけどさ、従兄弟だし)
ちなみに王族の血筋の者はもれなく風の適性が高い。
これはメアリローサ国を守護する龍の加護があるからなんだけどね。
守護龍が風龍なので、その加護によって風の属性との相性が良くなっている。
なので私も確実に風は適性が高く出るはず。
ちなみに私の父様は王家の血筋ではないので、純粋に属性の複数持ちです。
これも珍しいんだって。
「エルは何だろうね?獣人の魔力持ち自体が珍しいからなぁ~」
「……水が良いな。火もカッコいいけど、水が良い」
そう言いながら、石板に触れる。
風とか土だと、何やらワイルドなイメージが強く、私としてはカッコ良さそうだったのだけど、エルネスト本人の願いが通じていたのか、水の属性持ちだった。
しかも10段階中の9という高評価で。
属性の高評価は珍しくて、高くても6程度が良いところ。
それ以上であれば、いずれ派生や上位の魔法が使えてしまうかもしれない。
魔力値も4と、一般より高めだった。
(みんな優秀だなぁ。ユージアもエルフって事はそこそこの値を出すんだろうし、私はどうなるんだろうなぁ)
ユージアも恐る恐る石板に触れて、文字が浮かび上がる様子にわくわくしているのか、文字がはっきりと浮かび上がった後は、じっとルークを見つめ、作業が終わり説明してもらえるのを待っていた。
「……劣化版だな。全属性の評価が6だ。魔力値も6。エルフにしては及第点だな」
「は…?」
「私は全属性8だ」
いやいやいや……。
エルフでも、全属性持ってる時点で十分優秀だからね?
やたらと自分の息子にだけ、あたりが厳しいよね。
少し遠い目になりつつ、エルフの親子のやりとりを眺めていたら……周囲の視線が集まりだす。
……私の番だった。
そういえば、まともに測定した事なかったんだよね。
あの石板自体、石版として使ったのって、学園入学の時の試験以来だから……あははは。
軽く1000年と数十年以上昔のことですね。
(さて、何が出るかなぁ?)
石板に軽く触れると文字が浮かび上がり始め、文字をよく見ようと手を引くと、石版が小刻みに震え始め、瞬間強く赤く光ると、カシャリと石板は形状を変え私の左腕に、ブレスレットのように嵌まり込む。
すると、私の足元を中心に赤く、魔法陣が展開され、周囲の景色がぐにゃりと歪み始める。
『ID確認。生存を認識。緊急時につき転送を開始する』
「えっ……なに?」
機械的な女性の声が響き渡り、咄嗟に足元に広がった魔法陣から私を庇うようにユージアに抱き寄せられる。
そのユージアごと、引き寄せようとしたルークが、見えた気がした。
──直後、視界は暗転した。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
家族に捨てられたけど、もふもふ最強従魔に愛されました
朔夜
ファンタジー
この世界は「アステルシア」。
魔法と魔物、そして“従魔契約”という特殊な力が存在する世界。代々、強大な魔力と優れた従魔を持つ“英雄の血筋”。
でも、生まれたばかりの私は、そんな期待を知らず、ただ両親と兄姉の愛に包まれて育っていった。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる