私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

82、昔噺。

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この学園が都市と共に魔物の氾濫スタンピードにのまれてしまったのなら、ここは今も魔物の跋扈する危険地帯なのだが……室内は荒れた、荒らされた形跡はない。
むしろ、学園長がふらりと外へ出ていったばかり、といった状態となっていて、今にも戻ってきて執務を始めそうな雰囲気だ。

ただ、魔導師のトップとはいえ、学園長だって人間だ。
この学園の管理権限が、あの時代の学園長のままだったということは、誰にも引き継がれずに、この学園は当時の機能を保持したまま時を止めていたということになる。


「やっぱり、君はシシリーじゃないか。君の試みは成功していたんだね……」


私の心とは裏腹に、ルークの明るく弾むその声とともに、背後から椅子越しに抱きしめられる。

私はそんなことより、学園のシステム情報へのアクセスに集中していたので、やたらと絡んでくるルークを放置していたら、何か背後で親子喧嘩が勃発していた。
……まぁ放置で良いや。


この魔導学園は、もともと建設にあたって、この大陸の中心となる龍脈の真上になるように建てられている。
当時の最先端技術の粋を尽くした、芸術品に近いものだった。


(まぁ、最先端の大型家電をガンガン設置するようなものだから、しっかりとした電源がないとね……)


今世みたいに魔石を電池のように使うのでは、すぐに機能停止を起こしてしまう。
ということで、今も龍脈にはしっかりと接続されていて、防衛機能も生きている。

ただ、生存者の反応が……無いだけ。

防衛機能の履歴には、この学園内への魔物の侵入は無かったようだった。
滅びたのは上部にあった王国だけ……?


(学園は綺麗にそのまま残ってる……あれ、じゃあシシリーわたしの部屋も残ってる…?)


時折視界に黒髪が入り、画面の注視の邪魔で、手で払い退けつつシステムの確認作業を進めていく。
進入経路は……全て閉門。関係者以外の侵入を拒む仕様になってる。


(これは……設定このままでいいかも。この学園が知らない人に下手に悪用されても困るし)


……管理者が私ってのが気になるけど、まぁ今は良い。
この後、私の部屋を見てから、メアリローサ国に帰る予定を立てない……と…?!

学園のシステムのチェックと今後の予定をと考えていた私の思考が突如停止した。

ぞわりという感覚が背筋を駆け抜けていき、熱く濡れた感触を耳が拾う。


「セシリア逃げて!おいこらっ変態親父っ!子供を襲うなっ!」

「えっ…なにっ…!」


ユージアの声に、耳への感触に。
振り向くと、恐ろしいほどの美貌が間近にあった。
ん~眼福…じゃなくて、なにしてるんだこの親子は……。

とりあえず距離近すぎですよと、離れようとしたのだけど、後頭部を押さえられているようで下がれない。
そうこうしてるうちに、顎を指先で掬われる。

自然な流れのように唇が重ねられようと近づいてきたので、ぺたりと両手でルークの顔をキャッチして押し戻す。


「……親子喧嘩は他所でやってね。それとルーク。あなたにはつがいがいるのでしょう?浮気は感心しないなぁ」


にこりと、笑って席を立ち、応接のソファーに転がされているユージアの元へと近づく。

──エルフは出生率がものすごく低い。
番い同士ですら、1人も子に恵まれない夫婦だっている。
そんな中で、異種族婚、さらには子に2人以上も恵まれたと考えると、ユージアの母親は間違いなく番だったに違いない。


「ユージア……あれ、なんか縮んでる?」

「うん……あの身体を維持できるほどの魔力が、無くなっちゃった」


ルークにかけられた風の魔法でかけられた、手足を拘束を必死に解除しようとしていたらしい。
身体が縮んだ分、服がゆるゆるになっていて、いろいろ見えそうで危険だった。
身長150センチちょっとあったはずのユージアが元の4歳程度まで縮むと、身長自体が100センチいくかいかないかになるんだよ。


「ずいぶん激しい親子喧嘩ね」

「そうじゃなくて!セシリア、もうちょっと危機感持って?!」


ユージアは中性的な美貌の……がそのまま縮んで、ぷっくりと幼児特有の丸みのある体型になっていて、怒っていても、めちゃくちゃ可愛い。
必死に伝えてるんだろうけど、その様子がさらに可愛らしくて思わず、にこにこと笑顔で返す。

そして、そうね……ユージアの体格という意味で、足のサイズで言えば25センチとか、もう大人と変わらないサイズだったのが、13センチとか女性の掌より可愛く小さな足になっちゃった状況で、何が言いたいかというと……。


「ユージア、そのまま、立たないで。ちょっと…動かないでね?…えっと……ズボンというか全部…脱げてる」

「えっ!ああああああああっ」


ユージアの悲鳴がこだまする。
ちなみにズボンは、ベルトをつけたまま、はいたままの格好で、すとんと提灯脱ぎのように足元に落ちてました。

せっかくのスーツ姿がカッコ良かったのに、上着からドレスシャツを着た状態で片方の肩が出ているし、袖からは手すら出ない状態で……ぶかぶか過ぎて…可愛い。
……じゃなくて!
見えてないし、見てないからね!?

ドレスシャツから太ももがちらりと見えてるだけだから、見えない、と思いたい。

顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうになっているユージア。
ごめん、不謹慎だけど今の君は、めちゃくちゃ可愛いです。
……ひとまず上着を脱がせて、抱っこの要領で抱き上げて、ユージアの脱げてしまった衣類をまとめてルークに渡す。


「とりあえず、シシリーわたしの部屋と備品室に行こう。初等部の制服なら着れるんじゃないかな?私も制服が欲しい。この姿だと動きにくい」

「……だな」


くつくつと背後から笑う声が聞こえてる。
……やっぱりルークは学生の時より笑えるようになったんだろうな。

非常時なんだけど……私の胸に顔を当てるようにして、怒りなのか恥ずかしさなのか、顔を真っ赤にしてぷるぷるしてるユージアが可愛くてしょうがない。
若草のような緑色をした、幼児特有の猫毛のようなふわふわな髪を撫でながら移動した。
幸せすぎる。

ユージアは成長とともに髪の色が濃くなる感じなんだなぁ……とか思ってたり。



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