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はじまりはじまり。小さな冒険?
106、身体。
しおりを挟む「では、今は?」
「……わからない」
希望に縋るような切ない顔で見つめられて、返答に困ってしまう。
いや、さぁ、3歳児に恋愛とかわからないからね?
ユージアを助ける時だって、勝手にぼろぼろと涙が流れるくらい、かなり心に負担がかかってたのだろうし。
思考は婆ちゃんだけど、実物は3歳児だからね。
せめて精神だけ、身体だけでも……ってなら、きっと今までのことも、もう少しまともに動けたのだろうし。
何より、オネショ卒業だってもう少し早かったはず!
「わからない、とは?」
「3歳児には理解できない。同じ年齢の子供が持ちえない知識や記憶からの学習があるから、今こうやって喋ったり考えたりはしてるけど、それでも中身は身体も精神も3歳児なの。だから、お昼寝必須だし。感情も、好きか嫌い、可愛いとか怖いとか。単純なものしかわからないのよ」
なんとか伝わったかな?
まぁ、思考だけじゃなくて精神も大人のままであったら……と考えると、きっと成長の過程にある思春期やら、身体の変化などに、何かがついていけず、変調をきたしてしまうのでは無いだろうか?と思ってる。
「そう、なのか」
「そうだと思うよ……決して私の性格からの鈍さだけではないと思いたい」
説明する私を見て、ふっと皮肉げに口元が歪み、端正な顔に笑みがこぼれる。
今、明らかに『性格が一番影響してる』って言おうとしたよね?!
シシリーの時だって、ちゃんと学園内で浮いてたのは理解してたし、そんなに言われるほど鈍く無かったはずだよ?
鈍くは…無いはずなんだけど、一つだけ、気づいたことがある。
ルーク、キミが座ってる1人がけの椅子…服の山があったはずなんだが、何処へやったんだい?
『何処へ』行ったのかが、すごく……恐ろしくて聞けない。
まさか、クローゼットじゃ無いよね?
いや、あの質量を突っ込めるのは、この部屋にはクローゼットしかない。
ていうかサイドチェストに被せてあった服も消えてる。
……クローゼット開けたよね?
会話しつつぞわぞわと背を冷気が走り抜けていった。
この寒気は、大量の寝汗で身体が冷えたのが原因ってだけじゃないと思う。
そういえば、ユージアはお風呂に行ってたんだもんね、私も行きたいな。
「その点で言うと、ユージアにかかってる呪は凄いよね。見た目と同じように身体の機能まで変わってたし。さすがエルフの魔法だよね。ほら、お昼寝必須だし?」
「……単に魔力切れなだけかもしれないがな」
いやいや、背中とんとんするだけで寝ちゃうとか、ちゃんと幼児だからね。
しっかり縮んで……というか若返っているのか!長命なエルフなのに、さらに若返りとか凄い。
逆に私はと言えば、よくある『大人になってみたい!って魔法で変身しちゃった☆』的に、見た目だけ変わってる感じだ。
滑舌が良くなってるってことくらいしか利点が、正直ない。
「って事で、私も幼児特有の……寝汗がね、ぐっしょりで…お風呂行きたいんだけど、お風呂どうだった?」
「普通に入れたよ」
使えた?と聞きたい。
と思ったけど、私が寝てる間にやっぱりお風呂入ってたのね。
さっぱりしてたもんね。
魔法でもさ『綺麗に保つ、綺麗にする』ってものもあるけど、基本はお風呂でさっぱりするのが一番ですよ。
なにより、気持ちもスッキリするからね!
……学園の大浴場って広いんだよ。使えるなら絶対に入りたい。
しかも形状が、バスタブに湯を張ってもらって~みたいなやつじゃなくて、それこそ王宮にあった日本の温泉みたいなタイプ!
これは楽しみすぎる。
「やったね!じゃ、行ってくる!……ちなみに、今のセシリアから見たルークは『好きか嫌いか』なら、好きだから!ずっと応援してるから……これからもね。だから、絶対に無理しないでね?」
ベッドから降りて、颯爽とドアへ……向かおうとして思いだした。
ここは私室だった。……これ以上色々見られるのは、イヤだな……と。
「あ……その部屋の…引き出しとか、勝手に開けないでね?」
「わかった……」
ルークは何かを思い出したかのように、ふっと笑みが湧いてきたわけですが……。
やっぱり何か見たね?!
クローゼットとか、クローゼットとか……。
主にクローゼット!
「……もう見ちゃったよね」
「ごめん」
さっと視線をそらされたし。何を見たのっ?!
ぎゃああああ。
……ここに最初にきた時にさ、見られたくない衣類(!)や物とかをクローゼットに、放り込んでたわけですよ。
それでもう満タンっぽかった上に、この部屋に積まれてた衣類を詰め込むにはですね……畳むなり、綺麗に入れ直さないと入りません。
って事は、ただ詰め込むだけじゃなく、元からクローゼットに入ってたものも入れ直してるわけで。
「……ルークだって在学中酷かったもんね。おあいこって事にしとくから、それ以上は絶対にやめてっ!」
「わかった……ふふ」
堪えきれずに、笑い出す。
うん、良い笑顔……じゃなくて、これはしっかり見られてる。
ていうか下着もあったわけですが……おのれ。許さん。
ユージアの言う通り、ルークは変態親父化してるのかもしれない。
抱きつき魔だし。
見た目は素敵なままなのに、学生時代の真摯なルークは、どこへいっちゃったんだろう。
ちょっと目が遠くなる。
******
「きゃあああああっ!」
そして、大浴場に入ったわけですが、入った途端にこだまする絹を裂くような幼児の悲鳴。
私じゃないからね?
ユージアの、悲鳴。
「いやああああっ!セシリアっ!来ないで!」
「えー、ちょっと待って……そこ、私が叫ぶとこじゃないかな?!」
って、何このお風呂ドッキリ。
でもさ、悲鳴が聞こえたら助けにいかなくちゃダメでしょう?
近づけば近づくほど拒否されるんですけど……。
「じゃなかった、どうしたの?大丈夫?」
「ダメかも…でも来ないでっ!」
どんどん、と強めにドアをノックする音が聞こえて、ドアの向こうにルークが来ている事に気づいた。
悲鳴、部屋まで聞こえてたのかな?
「どうした?悲鳴が……」
「あー……女湯の奥から、ユージアの悲鳴が聞こえてくるの……悪いんだけど、助けに行ってくれない?」
ひとまず、緊急用の解錠ボタンを押した。
痴漢とかね、そういう被害に遭わないために、保安機能が付いてるんです。
それを切らずに、異性が……今の状況でいうなら女湯に男性が入室すると、捕まります。
物理的に。
助けにきたはずのルークが捕まらないために、保安機能を解除すると、管理システムからアナウンスが流れた。
『5分後、スタッフが入室します。スタッフが入室します』
「……では、失礼」
ガチャリ……と音が響き、解錠されたようで、ドアが開かれた。
ルークが入室し、真っすぐに奥へ向かうとユージアとルーク、2人の声が聞こえ始める。
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