私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

107、捕獲。

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「大丈夫~?」


足音が近づいてきたので、ひょこりと棚の影から顔を出すと、大人用のシャツに包まれたユージアを俵担ぎのようにしたルークが戻ってくるところだった。

いつもの無表情ルークかと思いきや、微妙に口がむずむずしてる感じで……思いっきり笑いを我慢してる。


「……回収した。チェッカーに引っかかってた」


理由を話すと、やっぱり我慢しきれなかったようで、くすくすと笑い出してしまった。
チェッカーってのはですね……痴漢捕獲機なのですよ。
まぁ女湯にいたら捕獲されるよね……。


「あ……なるほど。ていうか、なんでユージアが女湯に……」

幼児こどもは特に設定がない限りは、女湯に振り分けられるからな。大方、『幼児』と認識されて女湯に入って、中で呪を部分的に解いた……あたりか」

「ご明察の通り……です。シャワーに手が届かなくて!」


まぁ……子供用ではないからね。それでも小学生くらいなら、なんとかなりそうなものだけど、幼児はそもそも1人で入るという前提ですら無いから。
ユージアが本当に幼児なら、溺れたりするかもしれないからね。


「あ……いつもの姿に戻って、保安システムに痴漢として捕まったと」

「痴漢って……酷い」

「いや、痴漢だし?」

「えぇぇ……不可抗力じゃないの?」


エルフの魔法って本当にすごいね。
難攻不落の保安機能をしっかり騙せちゃうんだもの。
『シャワーに手が届かなかった』というのが理由で捕まったとするなら、どう考えても『女湯でOKな年齢を超えた幼児ではない男の子』がいたという事になる。
つまり……。


「じゃあ、私がお風呂に入ろうとしてたわけだけど……この状況でもし、捕まらずにご対面しちゃっても、不可抗力と言えるような姿だったの?」

「……言えないかも」


ですよねぇ。
はっと何かに気づいたように手を頰に当てて、顔を赤らめてるのが見えたわけですが、保安機能が良いお仕事をしてくれなかったら、本当にお風呂ドッキリが待ってるところでした。危ない危ない。


「しかし、捕獲か~。見に行けばよかった!あれが発動してるとこ、見た事がなかったんだよね」


保安機能ってね、捕獲されると脱衣所の一角にある木の椅子に座らされた格好で、1時間ほど放置される。
武装解除されて目隠しをされて、手足を椅子に拘束された上で。

……つまり、状況が状況であれば、女性に晒し者にされるだけではなく、逆襲されたりもします。
あ、武装解除、つまり下着一丁にまで身ぐるみ剥がされます。
魔道具マジックアイテムとかね、色々悪さをするための道具の持ち込みを防ぐためなんだけどね。


「防犯上のシステムとしては聞いたことがあったんだが……まさか本当に、椅子に座らされて晒し者になっ……ははっ」


ルークの爆笑を見てしまった。
我慢せずに、そうやっていっぱい笑えたら良いのに。
笑顔、本当に素敵なのになぁ。


「すごく、怖かったよ。先に教えてよ……」


そして、ルークに担がれている状態のまま、うなだれているユージア。
風呂上りは、10代の姿で出てくるつもりだったんだろうなぁ。
着せられているのがぶかぶかのワイシャツだった。

ぷくぷくの可愛らしい顔を真っ赤にして、思いっきり涙目になってた。可愛すぎる。


「まぁ……呪を解除しなきゃ1人で入れなかったんだもんね?あ!私が手伝ってあげるよ!ユージア。一緒に入ろうか、うん、入ろう♪湯冷めしちゃったよね、洗ってあげるよ~」


思わず手がわきわきしてしまう。
お腹ぽよぽよなんだよね……洗いたい。触りたい。洗いたい。


「1人で入れるからっ!」

「……さて時間だ。私は捕まる前に出るよ。ユージアは……置いていくか?」


ユージアを抱えたまま、笑いが止まらなくなってるルーク。
あぁ、緊急停止ボタンで保安機能を切ったけど、そろそろ自動復帰しちゃうもんね。

ぜひぜひユージアは置いていってください!と、ユージアを受け取るべく手を伸ばすと、ルークの肩の上で必死に降ろされまいとじたばたと抵抗をしはじめた。やっぱり、可愛い。


「出る!出ます!ていうか、男湯に連れて行って!」

「……家族風呂使えば、呪を解いても一緒に入れるよ?」

「絶対ダメっ!」


ユージアが担がれたまま暴れるものだから、その風に煽られてルークの黒い艶髪がさらさらとこぼれる。
楽しそうに笑うルークは、やっぱり素敵でどんな状況でも絵になるわ……って、この2人ってば親子なのに、見た目だけでいうと年の離れた兄弟にしか見えない。

うっかり見惚れていると、ルークによってぽとりと爆弾が投下された。


「……それは、保護者として私も入るべきかな?子供だけでは心配だから」

「それもダメっ!」

「それは私も困るっ!」


……違う意味で、心配になるのでやめてください。
ルークは笑いすぎて涙目になってしまっているその美貌に、なぜかとても嬉しそうな笑みを浮かべると、ユージアの着替えと思わしき衣類を回収しつつ退室していった。


「では、また後で。ふふふ」


なんだかよく分からないお風呂ドッキリがあったわけですが、お風呂は、最高でした。
やっぱり大浴場はいいね。温泉いいね!お風呂最高!

風呂上りに冷たい飲み物も良いんだけど、玉こんにゃくと温玉が食べたくなった。
……実はこのお風呂、温泉なんだよね。
ここ、地形的に山に囲まれてるから、地下水もだけど温泉も豊富に出るんだよ。


(温玉作れるかな?茹で玉子でも良いけど……食べたいなぁ)


ルークとの会話が意外に疲れたのか、湯船に浸かって放心していると危機感からは程遠い考えばかりが浮かんでくる。
ま、幼児には難しい話だもんね。しょうがないか。

ぽやーっと、お風呂を堪能しつつ、時計を確認する。
そろそろ日没だ。
魔物の活動が一番活発になる時間に突入する。


(何が起こるか分からないから、あとは朝になるまでは執務室から出ないようにしなくちゃ)


部屋に戻ったら、晩ご飯と、帰るルートの確認かなぁ。
そう考えつつ、衣類の洗濯カゴからさっきまで着てた、シシリーの普段着に着替える。
うん、石鹸の香り。

実はこのカゴ、脱いだ衣類を入れておくと、短時間で洗濯乾燥までしてくれる優れもの!
まぁ、実際起動させるには、結構な魔力がいるので、魔力供給源に龍脈を利用している学園内なら余裕だけど、外ではこのカゴは使えない。

使えるなら便利なんだけどねぇ。


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