私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

109、良い事?。

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なぜか憮然とした顔のルーク。

……自分の種族の事を知られるのは、嫌なのかしら?
知っておいた方がいいから、こういう本があるんじゃないの?


「今は、いい。それより、食事が先だ」

「やった!いただきます」


今は、良いらしい。
まぁ、3歳児が知ることではないと思うし、良いよね。
……シシリーは知っていて当たり前レベルだったのだと思うけど。

ふわりと湯気があがる、ご馳走がテーブルに移動してくる。
こういう時、魔力の微妙な操作が上手にできるルークは本当に羨ましい。

あ、ちなみに私がやると……どうだろうなぁ。
多分、移動はできるけど、中身はこぼしまくるんじゃないかな?

シシリーも得意ではなかったし、今に至っては、調整が下手で、教会の壁を吹き飛ばしたりしてるし。

これに関しては、ユージアも面白そうに、お皿が移動してくるのを見つめている。


「ねね、ユージアもこうやってお皿とか移動できる?」

「無理かなぁ~。さっきやってみたけど、こんな感じ」


くしゃっと顔をしかめて、こんな感じ、と差し出されたのはフォーク。
フォークの先がタコの足のように、むしろ刺す部分で自立できるんじゃないかと思えるくらいに、ふにゃりとそれぞれの先があらぬ方向へ、向いていた。

その衝撃的な姿に、吹き出しかけながら状況を確認する。


「ど、どうして、こうなったの?」

「えっと……そこのカートから、僕の前へ移動させようとしたら、フォークの先っちょだけふにょふにょ動いて、こうなっちゃった」


ふにょふにょって……脳裏にテーブルの上でフォークの先が、海の中の昆布かワカメのように、揺れる様が浮かび笑いがこみ上げる。

でも、魔法使えないって言ってたユージアが、フォークを変形させられたのだから、すごい事なんだけどね。
自身の魔力を認識できて、なおかつ体外へ放出するというプロセスになるから、変形ができたのなら、魔法もすぐ使えるようになっちゃうんだろうね。


(魔法で一番最初に躓くところだからね……懐かしい)


まぁ、小学校のかけ算的な感じかな?
暗唱させられて覚えさせられるけど、結局は意味をちゃんと理解しないままに、わり算とか出てきちゃうと先に進めなくなっちゃうんだよね。
魔法の場合は、効果が出ないからすぐバレちゃうけど。


「え……移動はしなかったんだ?ふふ」

「うん。変形しただけ~……セシリアは?」


ユージアが期待の眼差しで見つめてくる。
……可愛すぎる。
幼児の眼ってどうしてこんなに丸くって黒目がちで、吸い込まれるようにキラキラするんだろうね。

よーし、頑張っちゃうぞ!


「できるかな?」

「やって見せて!」


えっと……目の前に置かれた、ユージアのふにょふにょワカメフォークを、まずは真っ直ぐに直して……。
ゆっくりとカートの上に戻そうかな?

よし、イメージは完了した。
さぁ、チャレンジ!

目の前のふにょふにょフォークに意識を集中すると、ぴしっと音をたてそうな勢いで、やる気のなさそうだったフォーク先が真っ直ぐ綺麗に復活した。


(次は、ゆっくり浮かせて、カートの上へ移動、浮かせて、移動……)


ふわりとフォークが浮かび上がる。
……フォーク1つでものすごい集中力が必要なんだけど、これを当たり前にやるってルーク、やっぱり凄いわ。


「おおっ!すごい!浮いた~」

「次は、移動、移動……」


カートの方へゆっくりゆっくり……と、移動を開始しようとした瞬間。
たん、と音がして視界からフォークが消えた。
凝視していたはずなのに。


「えっ?あれ?」

「あっ!セシリアっ!」


高速で横に振られるユージアのヤバイ!っていう顔と、ルークの、怒りに引きつった笑みが目に入る。
そして、少ししてから、からん、という音がテーブルの上で響いた。


「……この状況で、私を、殺したいほどの恨みでも?」

「ありません。滅相もございません……」


真っ直ぐに、高速で、ルーク目掛けて飛んで行ったようで……シャキッと元の姿に戻したはずのフォークは、先だけでなく、全身が蛇腹折りのようにくしゃっと折り畳まれていた。


「おとなしく食べなさい!」

「「はーい」」


怒られてしまった。
うん、なんか懐かしい。
学生時代のルークのよくしてた顔だ。
無表情か、こうやって怒るか。
……稀に見せてくれた、今の笑顔もこんな感じに引きつってたし。
まぁ、怒り混じりではなかったけど。


「キミまで、できないとは……」

「できないって……そんなに器用じゃないよ?道具作りは好きだったけど、魔力の微調整は苦手だったよ?」


だから、卒業後も学園に残ったんだもん。
ルークのように魔力の操作が上手な人材は、どこへ行っても即戦力になるからね。
逆に成績は良くても、無器用さんは、裏方で頑張ることになる。

実際、ルークは華々しく騎士団へ。
私も同じような成績だったけど、学園に残った。
そしてルークは騎士団内のトーナメント制の模擬戦で上位入賞をしたわけだけど。

では、同じ成績だったシシリーわたしも魔法だけなら好成績がおさめられるのでは?と思いそうなところだけど、ハンデを貰っても、実戦では咄嗟の魔力調整が肝となるわけだから、ルークには絶対に敵わない。


(才能なのか、努力の賜物なのか、どちらにしてもルークはすごいよ)


「道具って魔道具マジックアイテム?」


黙々とシチューを口に運びながら考えてると、ユージアが不思議そうな顔をしている。
そういえばそうか、魔道具マジックアイテムって、今は基本的には、ダンジョン出土品とか発掘品。
もしくは骨董がメインだもんね。

作れる人間もいるけど、ものすごく少ないから、滅多に出回らないし。
そんな話を、食卓の弾丸トークで父様と母様が話してたわ。


「うん、そうなるね。さっきの鈴とかも自作だよ~」

「……ねぇ、『隷属の首輪』も作れた?」


あああ……あれもそういえばマジックアイテムだった。
ざーっと血の気がひいていった。

返答に困ってユージアを見ると、表情が思いっきり暗い。
ユージアにつけられてた『隷属の首輪』もまさに、古代の魔道具アーティファクトと呼ばれる性能で、この時代に作られたやつだったのよね。
他の子たちにつけられていたのは、最近作られたものっぽかったけど。


シシリーわたしは作れた。でもね、作れる条件がすごく厳しくてね、ユージアに着けられていたのと同じタイプのは、ほとんど出回っていなかったはずだよ」


一般には。
周辺の王族や貴族の間ではそこそこ出回ってしまったらしいけど。
ただし、そのほとんどは使用記録を管理した上での事だったはずだから、悪用はほとんどなかったと聞いてる。
学園産のものは、ね。


「ユージア、魔道具マジックアイテム作成にも資格があって、取得試験の作成項目にあったんだ」

「私が知ってる歴代受験者の中で、成功したのはシシリーだけだったがね」

「そうみたいね。でも私が作った『隷属の首輪』はそれがちゃんと機能するかの機能テスト後に、目の前で再利用できないように破棄されたから……悪用はされていないはずだよ」

「機能テスト?」


ユージアの表情がさらに暗くなる。
ちなみに機能テストは『人を対象に』使うわけではない。
そもそもこの首輪は、人を対象に作られた物でもない。


「魔物の討伐隊に同行して、魔物に装着するんだ。そこで、魔物に『なぜ村を襲ったのか』を説明させる」


ルークがユージアを見て説明をしてくれた。
そういえば、あの試験は騎士団も同行するから、話題にあがってたのかな?


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