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はじまりはじまり。小さな冒険?
120、静かに寝かせて欲しいんです。
しおりを挟む身を起こしかけたのだが、維持ができずにソファーにばたりと倒れ込む。
「湯当たり+強制視界共有で酔っちゃった……ルークって凄いよね……フレアの視界共有切ってくれたのルークでしょう?ありがとうね……あぁ世界がまわる…胸がむかむかする」
「あ、あぁ……」
執務室のソファーに横になりつつ、ぎこちない返答をするルークを見る。
目を合わせるどころか、あからさまにそらされるし。
あの後から、なんか挙動不審なんだよなぁ……。
ユージアに至っては私の私室に篭ったまま出てこないし。
ていうか、私が自分の部屋から追い出されてる事実。どういうこった。
******
あの後……。
ユージアがフレアを連れてシャワー室へと移動して行った直後、のぼせかけの私は湯から上がり、湯船のそばにある小休憩用のベンチのような場所へ腰掛けて……視界を失った。
急に視界だけ暗転し、何故か目の前にルークがいる。
視界の端に、見切れているけどユージアの頭が見えた。
(あれ、私、お風呂にいるんだよね?)
視界はともかく、身体は湯気に当たっている感覚がある。
グラグラと微妙に視界が揺れる……歩いて移動しているっぽい。
ルークと何か会話をしてるっぽい?
視界共有のみなので音声までは聞こえてこないのが残念。
(ルークがいて保安装置が作動していない時点で、シャワー室ではなくて男湯に移動したのかな……)
ふと、ルークの冷たく皮肉げな笑みを浮かべた琥珀色の双眸を捉えたかと思った瞬間、景色が風呂場に戻る。
その後はもう、散々だった。
視界を奪われてたことによる後遺症なのか何なのか、三半規管がおかしくなったようで、真っ直ぐ歩けない、というか立っていられない。
二日酔いや、ひどく酔った時のように、座っているだけでも頭は痛いし船の上にいるような、常に移動しているような変な感覚がつきまとうしで、何とか着替えて執務室までは、ほぼ這うようにして移動した。
廊下に出る直前の、浴場前の休憩スペースを這っているときに、子供の……というかユージアの悲鳴を聞いた気が、正直、這うので必死だし、ルークもついてるし大丈夫かなと、とにかく執務室へ急いでしまったのがまずかったのか?私より後から戻ってきたユージアとルークは、すでにその時点で私へ対する様子がおかしくなっていた。
ちなみにフレアの姿は見えなくなっていたので、確実にフレアが何かをやらかしたと思っててる……。
(何があったのか、聞き出したいのに2人ともこの状況じゃ聞きにくいんだけどな……ていうか、ユージアとか顔も合わせてくれないし)
さてどうしたものかと、酔いを覚ましつつ考えることにした。
……まぁ、全く思い当たることもないから、考えようもないんだけどさ。
「ねぇ、さっきからユージアもルークもどうしたの?何かあった?……フレアが何かやらかした?」
どうしようもないから直球ストレートで聞いて見ることにした。
すると、ルークはまたもやこちらを直視せずに、ぼそぼそと何かを呟き始める。
いや、聞こえてませんからっ!
「ユージアなんて部屋に篭っちゃってるしさ、そろそろ明日に備えて寝たほうが良いと思うんだけど、このままじゃ雑魚寝になっちゃうよ?」
相変わらず、ソファーに転がったまま聞く私も私なんだけどさ……気持ち悪すぎて立てないし。
「キミは……いや、キミの研究の専攻は理解していたつもりだったんだが……少し……」
「少し、何?ていうか専攻って何だと思われてるんだろう……」
お風呂の話題ではなかった。
フレア、君は何をやらかしたんだい?
ルークの顔がすごい勢いで上気していくわけですが。
目も合わせられないほど恥じらう感じで……見てるこっちが恥ずかしくなっちゃう。
「それは、フレアが浴場で何か言ったの?」
「キミの精霊が、キミは人体に詳しいということは言っていたが、その詳しさの方向が……」
「……へ?」
「……いや、いい」
ちょっと!そこで顔を真っ赤にして恥ずかしそうにして俯かないでくださいっ!
ものすごく嫌な予感しかしないわけなんですけど……。
本当に、フレア……何やらかしちゃったの?!
ルークの様子に、内心、冷や汗だらだらの状態なのですが……ルークがこれって事は、ユージアにはもっと…いや、恥ずかしがられるを通り過ぎて、嫌われてるんじゃないかな?と寒気が背筋を走り抜けて行った。
物理的にも精神的にも頭を抱えつつ、ふらふらと私室のドアの前までどうにか移動して、ドアをノックする。
「ユージア、ちょっと良い?」
「ダメっ!」
「ダメとか言ってる場合じゃないから。とりあえず状況を説明して欲しいんだけど、フレアが何かしたの?もし、何かやらかしてたのなら、ユージアは大丈夫?」
「ダメ……かも」
ちらりと後ろに振り向き、ソファーに座り読書に逃げたルークに視線をやると、顔を赤らめたまま、肩がふるふると震えていた。
あれは笑ってる。
一応ユージアに怪我等はなさそうな感じでいいのかな?
「心配だし、入るよ~?」
「ダメだってばっ!」
「状況が分からなきゃ、わかるように行動するしかないんだから、嫌なら説明してよね~」
「それもダメっ」
(いや、ダメダメ言われても、心配なものは心配だから、まずは無事の確認をさせなさいよね)
問答無用でドアを開ける。
鍵、閉まってても残念ながら、私が部屋の主なんで…開けられちゃうんですよ。
この執務室に関しては、私の手が、というか魔力なんだろうね、それがマスターキーのような扱いになってるから。
部屋は薄暗く、シャンデリア等の照明も落とされていて、私のベッドの真ん中にぽっこりと小さな膨らみができているのが見えた。
どうやらユージアはベットに潜り込んでいるようだった。
「怪我とかしてない?本当に大丈夫?……何があったか、説明できる?」
「怪我はしてないよ……」
もごもごと、ベッドの膨らみから返答があったので、毛布を一気にめくり上げて、ユージアを捕まえると、抱き上げる。
一瞬見えたユージアの顔は、ルークと同じく真っ赤で…涙ぐんでいるようだった。
抱かれることに少し抵抗されたけど、背中をさすって落ち着かせるようにしながら話しかけると、素直に抱かされてくれた。
「本当に大丈夫なの?急にどうしちゃったの?……廊下にいるときに、ユージアの悲鳴が聞こえた気がしたんだけど、怪我はないのね?」
「あれは……ちょっといろいろショックだっただけだよ、大丈夫…だと思う」
「こういう状態なのに、大丈夫には見えないけど?」
「それはセシリアが……」
「私が何かしたの?フレアが言ったの?」
……何か物凄く言いにくそうにされてしまった。
何やらかしたんだ?!
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