122 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
122、涙。
しおりを挟むやたらと照れまくるユージアをなだめるように、抱き上げてる腕でそっと背をさすりながら話を続けていく。
本当はもっとぎゅーっとしたいんだけどね!……怒られるよね?
「身体が大人の仲間入りをし始めて、それぞれが男の子っぽく、女の子っぽく、見た目も変化していくからね。その身体の変化にびっくりしないように、その変化から、知識も無いままに性被害に遭わないために、恥ずかしいかもしれないけど、お勉強するんだよ」
こっちの世界では、親が教えるのが基本。って事らしいんだよね。
私はそういう教育を受けたことがないから知らないけどね。
そもそも受ける機会がなかったので。
(……受ける機会というか、そもそもそんなお年頃になるまで、生きていた記憶がほとんどないのですよ。まぁ、そんな話をしたら、また悲しそうな顔をされそうなので言わないでおくけどさ)
ちなみに、シシリーは学園の授業で性教育を受けてたよ。
その時の余談として、貴族の子供がお年頃になると、特に男の子の場合は、閨事専門の家庭教師っていうのを雇うそうだ。
その事をシシリーは学生時代に耳にして『後継ぎ問題も絡むから、必死なんだなぁ』くらいにしか思っていなかったわけだけども。
「うん……僕は、『籠』では……」
「大丈夫だよ。ユージアもこれから覚えていくの。今は3歳くらいが本当の姿なんでしょう?これから、みんなと一緒に勉強していけば良いの」
『籠』での出来事が、ユージアにとっての、性教育の基本情報となってしまうのは絶対に避けたい。
ただ、ちゃんとした性教育をされない、知らないままでは、その避けたい環境になりかねない。
最悪のケースとなってしまうだろう。
そもそも、これからだと言っている今ですら、そんなのを基準に考える事はさせたくない。
これから、みんなで覚えていけばいいんだよ。
セシリアと同じように、お友達もできたばっかりなんだから、そこで一歩、自分から離れていくような劣等感なんて抱かなくていいんだよ。
そう、ちゃんと伝わってくれたらいいのに……。
「でも…僕はっ……」
「うん?」
「僕は……汚れてる」
ぎゅっと私の首に回された腕に力が入り、最後はぽつりと、小さく一言聞こえた。
先ほどの照れてる時との反応とは違い、首に回された腕はぎゅーっとされたまま、力が入りっぱなしになっている。
……ふよふよで気持ちが良いんだけど、腕が細いだけあって、そろそろ首が締まりそうです。
ユージアを抱き上げたまま、そっとベッドに座る。
座り抱っこの状態になってもなお、ユージアはがっしりとしがみ付いて離れない。
「汚れてるのは、教会の大人達でしょう?ユージアじゃないよ。汚れていたから粛清されるのでしょう?」
「それでも…汚れてるんだ……僕はっ」
途切れ途切れで、どうにか言葉を発したという様子のユージアが、顔を上げる。
顔を真っ赤にしたまま、金の瞳からはぽろぽろととめどなく涙がこぼれていた。
「セシリアに話せない事、いっぱいあるし……したんだよ」
「……私は、今のユージア、好きだよ」
被害を受けた側なのだから、自分を責めないでほしい。
責められるべきは教会、主にフィアや上層部の人間だよ。ユージアではないんだよ。
ていうか、私までユージアの心をえぐる言動をしてしまったようだ……ごめんなさい。
泣き声がもれるのも気にせずに、しゃくり上げて、言葉も発せないほどに泣き出してしまったユージアの背をただ撫でてあげることしか出来なかった。
50年だ。怖い事、嫌な事を50年も続けさせられてきた。
1日、一瞬だって相当な苦痛だろうに、50年。想像もつかない。
「……『隷属の首輪』をつけていた時のことが、どんどん…記憶に戻って、くるんだ……本当に、僕は、汚れて…るんだよ……」
「それでも、好きだよ。大好き」
……辛すぎて、でも相談できる相手も環境もなくて、爆発してしまったのだろうか?
それならばとベッドの毛布を手繰り寄せ、震えるように泣くユージアごと、包まる。
泣けるだけ泣いてしまえばいい。
こういう涙は、心の傷を癒すために流れる涙だって聞いたことがあるから、思いっきり泣いてスッキリ、そしてそのまま寝てしまえばいいんだ。
本当は精一杯慰めてあげたい、と思うのだけど、実はセシリアも限界だったりした。
眠いとかじゃなくてね、つられて泣きそうなんだ。
私が泣いたってしょうがないのにね。
「それに『言えない事』なんて、誰だってあるんだから、言いたいのなら、いつか大丈夫になったらその時にでも、教えてくれたら良いんだよ?」
本当は気になるんだけどね……。
聞いたらきっと、教会の上層部を呪う勢いで許せなくなるのでしょうけど。
というか、きっと本当に呪ってしまうと思う。
ま、そんな力はないけどね。
「あ……そういえばだけど…シシリーとルークもそういう被害に遭いかけたことがあったよ」
「っ…!」
感電でもしたかのようにびくりと身体を飛び上がるようにして、心配そうに私を見上げる。
あーあ、ユージアまで涙で可愛い顔に濡れた髪が張りついててぐちゃぐちゃになっちゃってる。
親子揃って、今日はよく泣くわね……。
「ん?そんなにびくっとしないでよ。大丈夫だったから……大丈夫すぎて先生に怒られちゃったけど」
ふふっと軽く笑みを浮かべて、ユージアのおでこに張りついてしまった髪を剥がしてみる。
ほっぺにも髪がぺたりとくっついてる。
まだしゃくり上げながらだけど、今の言葉で涙は止まったかな?
「……セシリアが怖い思い、しなくてよかった」
ユージアからほっとしたような優しい笑みが見えた気がしたんだけど、細めた瞳からは、またぽろりと涙の粒がこぼれ落ちていった。
「やっぱり、ユージアは優しいね。でも、ユージアも辛い時は辛いって、ちゃんと言ってね?言わなきゃダメだからね?」
辛かったって泣いてたはずなのに、もうシシリーの心配をし始めてしまっている様子がはっきりと見える。
誰かに弱みを見せるのって、やっぱり難しいのかな?
弱音を吐ける、聞いてくれる相手がいると実際心強いんだけどね。
そういう環境がユージアにもできると良んだけど。まだこれからかなぁ。
「うん…ねぇ……その、シシリーは本当に大丈夫だったの?」
「あぁ、あのね、ルークのことが好き過ぎた人達がね、シシリーとルークが使っている机に『催淫薬』を仕込んだのよ。でもね、シシリーとルークは特に影響を受けずに、同じ部屋にいた犯人達が影響をがっつり受けちゃってね……大変な事に」
「それ、大丈夫って言わないと……思うの」
「いや、本当に大丈夫だったんだよ。そもそもその周囲の乱交状態すら気づかずに、2人とも研究続けてたから……それで『気づかな過ぎ!』って先生に怒られちゃった」
あれ、なんかどんどんユージアが遠い目になっていく。
心配、は…どこいったの…かな?
「あの変態親父が好き過ぎな人達って……しかも、乱行って……」
「うん、なんか凄かったらしいよ?」
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる