私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

127、温もり。

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暖かい。
お腹が温かい……ん?

ん~……?

ユージアを抱えて寝ているから……これはユージアの足かな?
シャツが少し上へめくれている感覚があったので戻そうとして、妙な違和感に気づいて急激に意識が覚醒する。


(お腹に手がある!?)


……正確には、手が当てられている。

いやーちょっと待って?
えーっと、寝る時にベッドを2つ……そう、セミダブルのベッドを2つ並べてくっつけて、私は自分のベッド、ゲストルームに置いてあった方のベッドをルークが使って、その真ん中にユージアが寝てたはず。

ていうか、ユージアが毛布を蹴飛ばしたから、風邪を引かせたくもないので、そのまま抱いて寝てしまっているわけだから、この手はユージアではない。


(明らかにここは私のベッドだし……)


私から見て、ユージアのさらに隣に寝てるはずのルークも見当たらない。

ていうか、この手!
お腹にダイレクトにくっついてるんですけど!
少し上に添えられている方の手の親指が、下着を潜って微妙に胸下の部分まで届いてるんですけど……。


「随分、良い寝相してるわね……」


声が聞こえたのか、手が、びくっと反応し動いた。


「……キミだって、ユージアにしてるじゃないか」

「ユージアは子供でしょう?」


毛布蹴飛ばしちゃうから、抱えてるだけだよ?
風邪引かせたくないもん。


「私はユージアの服の中に手を突っ込んだ記憶はないなぁ」

「キミが、ユージアばかり気にかけるから……」


なにこれ、もしかしてユージアに妬いてる?ユージアに?
ユージアは子供だし、というか幼児だし、慈しむべき対象じゃないの?
できないことも多いから、手伝ってあげたりとか、注意して見ていなきゃいけないんじゃないの?


(ていうか、ユージアはお腹触ってきたりしません!)


抱えていたユージアをそーっと離して、毛布をかけ直すと、そのまま私に背を向けるように転がって寝直してしまった。

その様子を確認してから、背後にいるだろうルークに振り向こうとしていると、私を上に引き寄せるように手に力が入る。

どうやら私はルークに背後から抱きつかれた状態で、寝てたらしい。
夢の感触がやたらとリアルだなと思ったのは……これが理由だったのかな。
ま、夢と違って抱きついてたのはカイルザークじゃなくてルークだったわけだけど。

……じゃなくて。
痛い。猛烈に胸が痛い。
触られたとかそういうのじゃなくてね、上に引き上げられたときに、下からぐーっと圧迫されての激痛。


「痛っ!ルーク、手、胸の下、圧迫しないで……痛い……」

「すまん」


私の小さな悲鳴に近い声に、びくっとして手が緩む。
……緩むついでにお腹から手を離そうよ。


(あああー、激痛でした。息が止まるかと思った)


相変わらず、抱きつかれたままだけど、あまりの痛さに思わずうずくまるように背を丸める。
これはあれだなぁ……私も今気づいたけど。


「今のは……痼り?腫瘍?セシリアは、何か病気でもあるのか?」

「あー、ないない。全くの健康体ですよ~ふぁ……」


ルークの心配そうな声に、欠伸をしつつ、返事を返す。
腕の力が緩んだので、くるりとルークの方へ向きを変える。

……案の定だけど、目の前に胸がありました…ルークの。
この抱きつき魔めっ!
ちゃんと自分のベッドで寝なさいよねっ!

ていうかこれって、もしかして貞操の危機ってヤツですかね?
見た目はともかく『初体験が3歳でした』とか、シャレにならないからこれは回避しないと!

いや、そうじゃないな、この見た目自体でもアウトだった!

いつの間にかに、擬似窓からの月の淡い光が消されていて、ほとんど視界がなくなっていたので表情は見えないけれど、ルークを見上げるようにして話しかける。


「ねぇ……ルーク。この外見のセシリアわたしって、何歳くらいに見えてる?」

「17か8くらいだろう?……実際は幼児だからって言いたいのか?」


頭上から、ため息混じりにかかる息が熱い。
いつもより、低くて掠れ気味な声。また、色気たっぷりですね。
ぎゅっと自身を押し付けるように、腕に力を込められて抱き寄せられる。

ルークの胸にぺたりとくっつくような状態にされてしまった。
って、胸にぺたりはともかく、私のお腹辺りにナニカが当たってますよ……まぁそうか、押しつけるように抱き寄せられてるんだもんね。
そりゃ当たりますか。

これってやっぱり貞操の危機ってやつですかね?


(とりあえずパニックになって私まで固まってる場合じゃ無いから、思考の方向を変えてみよう)


……それにしても胸、硬いなぁ。細身なのに、しっかり筋肉あるのね……。
相変わらずの白檀の香りと、私より少し高めの体温で、温かくてほっとする。
うん、平常心、平常心。
ぎゃーとか頭の中で叫んでる場合じゃ無い。

さて、性教育のお勉強再開だ。


「あはは……違うのよ。どうもセシリアは身体の発達が早い子っぽくてね。背も胸もあるけど、多分12歳前後なのよね。証拠、という言い方をするのもどうかと思うけど、胸の痼りみたいなやつ。あれってね、女の子が思春期に女性らしく胸が大きくなり始めるときに、出来るものなのよ。ちなみに押されると……めちゃくちゃ痛い」


って事でやっぱり、こっちの世界での成人以上に見えてたっぽい。
でも、この身体でも未成年です。
まぁいろいろと成長が良いよ、セシリアは。
ただ、まだそういう体験は早いと思うのですよ。

私、今世も長生きしたいし、そう思うと、身体を壊すようなリスクをみすみす冒す気はない。
……ていうか、性教育の再開以前にこれくらいは知っておいて欲しいかなぁ。


「……ごめん」

「見た目はともかく、生理もまだ……なんじゃ、ないか…な?それでもっ……」


急激に視界が歪むと、なぜか涙がぽろぽろとこぼれていく。
なんとか説明をしたかったんだけど、震えまで出てきてしまった。
ん~やっぱ怖かったか。

私は怖くないつもりなんだけど、セシリアこころは怖かった。
まだ3歳だもんね……ごめんね。


「思考っ…と、精神こころは、別だかっら……っく……うぅ…」

「……悪かった」


説明したいのに、涙は止まらないし、しゃくり上げてしまって言葉が出ない。
ルークは私が泣いてることに気づいたのか、恐る恐るという風に、背を撫でてくれていた。


「おい、変態親父。自分のベッドに戻れ……紋が、痛い」


背後から、男の唸るような低い声がした。



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