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はじまりはじまり。小さな冒険?
129、二度寝。
しおりを挟むさすがにユージアを捕まえっぱなしも可哀想なので、そっと腕の力を抜いて解放すると、ユージアの使っていた枕を移動させたのか、ふわりと風が顔に当たった。
「そこは、諦めたらダメだと思うの……」
「お前、元の姿に戻って、セシリアに抱きついて寝てたからな……知らん」
「は?……え?なに?」
ルークの呆れた声と、ユージアの上ずった声と、顔にふわりふわりとあたる風に、ぼんやりと目を開けると、目の前に小さな可愛らしいおしりが見えた。
オムツのCMに出てきそうな、ぷりぷりのおしり。
ユージアは私に背を向けて、自分が使っていた枕の下に着替えを置いてあったようで、そこから3歳児用の衣類を引っ張り出している最中だったらしい。
10代のサイズと幼児用と、さらには両方の着替えも準備しておいたからね。
薄暗い部屋では、探すのに手間取っているみたいだった。
(やっぱ、エルフの子は蒙古斑無いんだな……)
「……っ!ちょっと!セシリア!どこ触ってるの!」
「ん~。ユージアは蒙古斑無いんだねぇ」
思わずガン見、というか手が出てしまって怒られた。
指でおしりをふにふにと…つついただけなんだけど……うん、まぁ、めっちゃ柔らかかった!
まぁ、3歳児くらいの時の息子や孫が裸で部屋にいたなら『早く着替えなさいっ!』とか『さっさと風呂入れ!』とか怒るところなんだけどね。
あ『風邪をひくよ』っていう心配もあるんだけど、お漏らしの危険が高かったから。
……なんの開放感からか、普段は漏らさないのに、裸で部屋にいる時に限って、おしっこを盛大に漏らされた事があるから。
おしりが見えたときに変な危機感が出るようになった。
「蒙古斑って何?っていうか、触りに来ないでっ!」
「蒙古斑っていうのはねぇ~。赤ちゃんから幼児のおしりにある、痣みたいなやつなんだけど、ここら辺に出るんだよ~。5歳くらいから徐々に消えちゃうらしいね……」
ここ、と指で突くとまた怒られた。
ていうか、柔らか~い。
ユージアは目的の衣類を見つけたのか、ルークのベッドまで逃げると、頭から毛布を被って中でもぞもぞと動き出す。
毛布の中で着替えてるんだろうけど……それがまた可愛くて、えっと、毛布剥がして良いですかね?とか思っていると大きなあくびが出る。
ユージアと遊ぶのも楽しいんだけど、やっぱりまだ眠い。
「……2人とも、朝早いね。夜明けまでまだ時間あるならもう少し寝てたいんだけど、良いかな?」
「セシリアは、相変わらずの寝坊助さんだね。僕はお風呂行ってくるよ」
「はぁい…おやすみ……」
2人、と声をかけたのに、すでにルークの姿は無かった。
執務室に移動済みなのかな。
ユージアは、まだ毛布の中でもぞもぞしている。
「……着替え、手伝おうか?」
「自分でできるからっ!」
かなり難航してるみたいだけどね!
もぞもぞ動く毛布のスライムのような物体をしばらく眺めていると、着替えが完了したのか、毛布から脱皮のごとく、髪を毛布でもみくちゃにされ逆だてたようになったユージアが出てきた。
……結局、下着とズボンしかはけなかったらしく、着替えをつかむと執務室へ続くドアへと向かっていくのが見えた。
(まぁ、良いか。お風呂も行きたいけど、シャワーで良いし、今は二度寝しちゃおう……)
布団でだらだらしつつ、ふっと眠りに落ちる瞬間のなんとも言えない気持ち良さには勝てません。
……勝てないけど…ふと、違和感を感じて、ゆっくりと意識が覚醒していく。
多分寝てたのは数分程度だと思うのだけど、枕もと…ユージアの枕の近くへと、もぞもぞとベッドを移動してくる軽い揺れがあったので、ユージアがお風呂から上がって戻ってきたのだと思って声をかける。
「まだ寝る?おいで」
「うん」
ユージアの毛布を少し跳ね上げるようにしてめくると、そこにころりと子供が寝転がる衝撃でベッドが軽く揺れたので、毛布をかけ直す。
まだ眠くて、どうせ夜明け前で部屋は暗いしで、実は目を開けずにこの対応でした。
子守のあるあるだけどさ……。
子供って寝相悪いから、すぐどこかに転がっていくし、毛布蹴飛ばした上に寒さで凍えて、小さく縮こまって震えて寝てたりするから、抱えて寝る癖がつく。
そして、それでも脱走されると、目も開けずに手探りで子供を捕獲、抱きかかえて寝に戻る、という特技が身につくのですよ。
(というか、身につけないと睡眠時間足りないのですよ)
さっきはあんなに私から逃げようとしていたのに、ころりと私の真横まで転がってきたので、そのまま包み込むように抱えて寝る。
幼児特有の少し高めの体温と柔らかさと……あ~子ども湯たんぽ最高!
抱えて寝ると、ちょうどおでこが私の頰にあたるので、無意識にすりすりしつつ……ん?
お風呂上がりのユージアは、いつもと匂いが違う気がした。
******
ふにゃりと頰に柔らかい感触があり、また意識が浮上し始める。
(まだ眠いんだけどなぁ、そろそろ夜明けかなぁ)
ふにゃふにゃと、何か寝言っぽいのが耳元で聞こえてきたので、あやすように頭を撫でる。
ふわふわさらさらの髪が気持ち良いね。
「……だいすき」
寝言にしてはやけにはっきり喋ってるなぁ、とぼんやり思っていると、再び頰にふにゃりと柔らかい感触があり、目を開ける。
私を凝視するかのように見つめている、まん丸な赤い瞳が間近にあった。
……ていうか、私の腕の中にいるの、ユージアじゃ無い!?
「ん?ん~っ?!」
「ねえさま、だいすきっ」
状況の理解が全くできずに固まる私をみて、とても嬉しそうに首にぎゅっと抱きついてきた幼児。
そのままぎゅーっと頰にキスのように顔を押し付けられる。
それにしても……ユージアと勘違いするほどに体格は一緒だから、この子も3歳くらいかな……ていうか誰だろう?
どこから……と一つだけ思い当たるものがある事に気づき、なんとか首の向きを変えて背後にある1人がけのサイドチェアへ視線を向けると、そこには赤黒く染めあげられた布の小山のみが存在していた。
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