私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

143、ダッシュ。

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「カイ、ユージアは悪い子じゃないからね?」

「わかってるよ……」


声こそ柔らかく聞こえていても、それでも、警戒の態度が解けないカイルザークの姿に悲しくなって、思わず声をかける。
また、さっきまでみたいな和気あいあいの関係に戻って欲しいんだけどな。

そう思いつつ、革のブーツの紐をキツく結き直す。
私はこのメンバーの中で1番移動が遅い上に、移動中に紐が解けてペースダウンとか、迷惑この上ないよね?

真剣に自分の脚まわりを整えている私に気づいたのか、ユージアがとんでもない提案をしてきた。


「最悪、遅くなりそうなら、誰かがセシリアを担げばすぐ帰宅できるから」

『なら、この精霊に運ばせたらいいと思うわ』


大丈夫だよ。と、笑いながらユージアが悪戯っぽく提案すると間髪置かずに、鈴が転がるような可愛らしい声で、反応があった。

びくりと飛び上がるようにして、声のした方向へユージアが振り返ると、そこには、小さな女の子が後ろにユージアと背格好が同じくらいの金髪の男の子を連れて立っていた。


風の乙女シルヴェストル!……うわぁ久しぶりだなぁ」

『カイルザーク、お久しぶりね?1000年ぶりくらいかしら?』


カイがにこりと笑うと、風の乙女シルヴェストルはカーテシーをして答える。

ていうか、風の乙女シルヴェストルの後ろの男の子って……まんまユージアの金髪版。
つまり、フレアですよね?君。
私に凝視されているのに気づいたのか、金髪のユージアが近付いてひざまずく。


『セシリア、ごめんなさい』

「……また、何かしてた?」


また、私の知らないうちに何か悪さをしでかしたのかと、背筋を冷気が駆け巡った。
しかも風の乙女シルヴェストルに連れられてるって事は、もしかして、王都でなにかやらかしたのではないだろうかと……。
聞くのが恐ろしい。


『何もしてないわよ~うふふ。守護龍にお説教されてたくらいかしら?』

「守護龍……」


風の乙女シルヴェストルがにこりと笑う。のだけど、その笑顔が何か力強くて、裏に明らかに何か意味があるような笑顔だった。
……どんなお説教されてたんだろう?

ていうか、本当に何も悪さしてないよね?ね?
冷や汗が……。


『さて、お迎えがね、この先の野営広場に向かって出発したわ。あなた達もそろそろ出発してちょうだいって伝えにきたのよ。あと、この精霊置いていくから、しっかり役立てつかってね』


楽しそうに微笑うと、金髪のユージア……フレアに近づくと、思いっきり背を叩いてから、姿を消した。


『ご、ごめんなさい。楽しくて、つい』

「ふっ……自業自得だな」


呆れた声色でルークが答える。
守護龍のお説教を風の乙女シルヴェストルが知っている、という事はルークも内容を知っているんだろうね。
自業自得って、本当に何があったのか何をしたのか……どんどん不安になるよっ!

悪寒でぞわぞわしている私と……はっと我に返ったユージア。


「……その前に、なんで僕の姿なのっ?!僕が怒られてるみたいじゃないかっ」

「双子ちゃんみたいだね」


実際2人が並んで立ってると、似せた姿だからそっくりなのは当たり前なんだけど、髪の色だけで雰囲気が微妙に変わるのか、コピーと言うよりは兄弟のように見える。
表情の有無も関係するのかな?

最近のユージアは感情がすぐに顔に出てる感じだから。


「面倒な……2人も要らん」


ボソリとルークの呟きが聞こえた。
2人……賑やかそうで良いかもだけど。
ルークの周囲をちょこまかと2人の子供が走り回るのを想像して、思わず笑ってしまった。
うん、可愛いから、良いと思う!


「あははっ。じゃあ丁度良いから、提案通りセシリアを抱えてもらったら?」

『では、失礼』


カイルザークの提案が聞こえたと同時に、フレアの声。
そして次の瞬間には、お姫様抱っこの要領でフレアに抱き抱えられていた。


「え…歩くっ……は?…えぇぇぇ」

『じゃあ、しゅっぱーつ!』


歩けるよ。と、言う間も無く、先頭をルークが走り出すと、追走するようにフレアが移動を始める。
フレアの肩越しから背後を見ると、ユージアとカイルザークがしっかりとついてきてた。
って、カイルザーク……3歳児の姿なのに、大人の走りに余裕でついてきてる。


「は、速すぎっ!…うわああああーっ!」

「せ…セシリア?口閉じたほうがいいよ~」


前を向いたら、猛スピードになってました。

私の叫びに心配そうなユージアの声を耳がなんとか拾った。
とにかく速くて、耳にあたる風の音がすごくて……ちょっとパニック。

これ、大人の全速力ってスピードじゃないし。
……人間じゃ無理だわ。

顔にあたる風も痛いくらい強くて、息が……と思ったら、ふわりと私の周囲の風が消える。
よくよく見れば、ルークやフレア達の髪も、風に強く煽られる事なくふわふわりと肩に落ちていた。


「風の抵抗を軽くした」


ぽつりとルークの声が聞こえた。
ありがたい。
まぁ、そう話しながらもみんなのペースは変わらずの高速移動中なんだけどね。
景色が流れていくのが早い早い。

というか、森の中を全速力で突っ切っているだけなので、実際は樹々を避けながらの移動だから、ジグザグ移動ってやつなんだよね。
しかも、左右の移動の他に、障害物を飛び越えたりの上下の移動付き。
なので、かなり揺れてる。

しかもお姫様抱っこって、前にガードしてくれるようなものが何もないから、目の前で、本当にすれすれで……樹々を避けていくという、この視界の暴力。
恐ろしすぎる。


「これなら魔物に遭う前に、街道まですぐなんじゃないかなぁ」


そんな状況にあっても、カイルザークは息も切らさずににこにこと話している。
このペースで走りながらにこにこと会話とか、普通に無理だからね?
ちなみに私はフレアに抱えられての移動にもかかわらず、すでにぐったりですよ。
激しい揺れと、視界が怖すぎて、無理。

ふと、フレアを見上げてみる。
そういえばユージアの姿をしてたんだっけ。
髪の色が違うだけでずいぶん雰囲気が違うなぁと見つめていると、フレアと目があった。


『姿、気になる?』

「髪の色が違うだけなのに、本人ユージアとはずいぶん雰囲気が違うように見えるなって思って」

『髪も揃えたほうがいい?』


無言だと思ったら、何故かしゅんとしながら話しかけられた。
守護龍のお説教が効いてるんだろうか?
……怒られるほど何をしちゃったのかが、1番気になるけどね!

とりあえず、フレアの提案には首を横に振る。


「フレアの金髪が消えちゃうのはイヤだなぁ。私はフレアの本当の姿が1番素敵だと思うのだけど、誰かの姿の方が好きなの?」

『セシリアが喜ぶかなって……』

「じゃあ次はちゃんと自分の姿で来てね?」

『うん……そうする。ごめんね』


フレアは、はにかむ様にふわりと微笑った。
ユージアのそっくりさんの顔なのにね、やっぱり印象が違った。


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