私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
215 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

215、寝袋。

しおりを挟む




「ゼン……君は何を目指しているんだい?」

「寝袋……らしい、です」


眉間をおさえたり、頭を抱えたりして表情が忙しい父様とゼンナーシュタットの会話を見ている。
ルーク先生は、何かを紙に書き込み魔術師団員へと指示を出している。
レオンハルトは……落ち着いている。

ゼンナーシュタット…初対面ではレイと名乗ってセシリアの兄のように傍にいた。
『レイ』が仮初の姿だったと知っても、同年代だと疑わなかった。
……実際はこのメンバーの最年少だったわけだけど。


(まさか生まれたばかりとはね……)


それでもこのメンバーの中では、一番しっかりしているように見える。
セグシュ兄様『面白いやつ』だと言っていて、カイルザークは『バケモノ』だと言っていた。

僕から見たら……?
『めずらしい霊獣の赤ちゃん』とセシリアが言ってたし、魔力が確かに高いのもわかるし……でも、僕にとってはレオンハルトやシュトレイユ、セシリアやユージアを含めて、初めての友達だと思ってる。


「…ん?カイまで寝てるのか……見事に3歳児組は撃沈だな」

「カイは、意外ですか?」


父様は、ゼンナーシュタットの腹と前足の…ちょうど脇の下あたりからはみ出している足に気付き、長い毛をかき分けるように広げると、毛に埋もれて小さく丸まって寝ているカイルザークの頭が出てくると、優しく緩んだ笑顔になって頭を撫でている。


「あぁ…なんだろうな、初対面からずいぶん大人びた子だから。魔法も……教えなくても使えてるみたいだし……『大人びた』というよりは、大人…そうだな、この子達の成人した兄達を相手にしているような感覚になるんだよ」


熟睡だなぁ。と、呟くと小さくため息を吐く。

カイルザーク……本家筋の子だと思うのだけど、本当に何者なんだろう?
どうにも魔力の色においが微妙に違う気がする。
ルーク先生から、僕の種族の『上位種』は魔力特化型なのだと聞いたから、カイルザークも僕と同じような結果になるのだと思っていた。

実際そうだったのだけど…僕の値を全体的に上回っていた。
『覚醒』も関係しているのだろうけど、僕は水、カイルザークは土の他に光まで持っていた。
実際に土の魔法を使って見せていたし……魔法、どこで覚えたのか?
わからない事だらけだ。

一つだけ確実にわかっている事は、この調子だと今日も宿題山盛りで、授業は切り上げになるんじゃないかなというところかな。


「エルも大人びてると思う部分があるから、種族差なのかもしれないが……」


……人族よりは獣人は早熟らしい、という事は聞いたことがある。
5歳になれば簡単な狩りでは戦力にもなれる。
人間の5歳は、身体の発達が遅いから家事の手伝いがいいところだと。

なので僕は5歳を目安に、里から追い出されそうになってたわけだけど。


「さて、ゼン、申し訳ないんだが子供達を運ぶお手伝いをお願いできるかい?……」


父様の声に『やっぱり…』となる。
今日も宿題山盛りですか。

ルーク先生は書類やら、魔術師団員への指示が終わったのか、こちらへ歩いてきている。
セシリアとカイルザークがゼンナーシュタットのもとへ移動した後、ルナに続いてフレアまで数人の団員を何処かへ連れ去ってしまった。

一部騒然となったが、少しすると何事もなかったかのようにルーク先生が指示を出し始めて今に至る。
セシリアの杖は……フレアが回収したようだ、とルーク先生より伝えられた。


「暖かくなってきたとはいえ、そろそろ寒くなる時刻だからね。大人こちらの都合で勉強中断した上に、風邪までひかせたとあっては…ね」

「身体のサイズを大きくするので、背に乗せてもらえますか?…レイも」

「良いのかい?」


ゆっくりとゼンナーシュタットが立ち上がると、芝生にはセシリアとカイルザークが転がっていた。
父様に抱かれたままになっているシュトレイユを先に乗せるようにと、ゼンナーシュタットは伏せのような姿勢をとる。


「宰相、レイも任せたほうがいい……何か、来る」


王宮内でルーク先生が警戒する『何か』の正体を見極めようと、レオンハルトと一緒に周囲を警戒してみるけど僕達には、気づくことができなかった。
ただ、父様はルーク先生の言葉に従い、シュトレイユをゼンナーシュタットの背に乗せると、続いてセシリアとカイルザークを抱え上げては、乗せていった。


「『何か』とは、つれないわね」


女性の声が辺りに響いた。
聞いた事のない声で、しかも頭上から聞こえてくる。

びっくりして見上げると、気配は上ではなくて目の前にあり、ゆったりとしたドレス姿の美しい女性がルーク先生の隣に忽然と姿を現していた。

その女性の手はドレスの裾に隠れるようにしている、小さな子供と手が繋がれていた。
そのどちらも人族ではない容姿と気配を持っていた。
耳の特徴からするとエルフのようだけど……魔力においがそれを否定していた。



「……龍の離宮、及び王宮の王の居宅に、同時に騎士団の襲撃があったわ」


その女性の言葉に、あたりはしんと静まり返った。
ルーク先生も、先ほどはセシリアの杖を必死に探していた父様も、今回は静かだった。
襲撃の方が慌てるべきなのでは?と思ったのだけど……「思ってたより早いな」と父様の呟きを耳が拾って、襲撃があることを知っていたのだと理解した。


「王も王妃も無事よ。……守護龍ステアがほぼ全てを拘束したわ」


にこりと微笑むとレオンハルトの頭を撫でる。
撫でながら、少し悲しそうな顔になると父様とルーク先生へと視線をむけ、話を続けた。


「ただ……ごめんなさい。離宮を襲撃してきたあなた達の部下数名を、まだ加減の出来ない子が…喰ってしまったの」

「喰う…ですか」


父様がぎくりとしながら聞き返していた。
喰うって……どういう種族なんだ。


「えぇ……命はあるのだけど。傷つけてしまってごめんなさいね」


ごめんなさい。と女性に手を繋がれている子供も、小さく頭を下げていた。


「気にしなくて良いよ。王家に反旗を翻している時点で、私達の部下ではないんだよ。しかしまさか、龍の離宮にまで襲撃があるとは……こちらの想定不足だった。申し訳ない」


父様は女性に近寄るとひざまずき、女性が連れている子供と視線を合わせるようにして、優しく話しかけていた。
その様子に女性は目を細めると、手で口元を隠すようにふふっと笑い、とんでもないことを言った。


「そうね。それに……離宮の襲撃者は『隷属の首輪』を持っていたわ。ちょっと教えて・・・もらったのだけど、これなら龍の信頼を得られなくても加護を受けられるそうよ」



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...