私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

249、目が醒めたら。

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「髪が……逆立っている」


優しい声とともに頭を撫でて、直される。

なんとか毛布とユージアの腕から這い出して抜けた先にはルークがいた……ってあれ?
私が寝ていたベットじゃ…無い?
あれ?

ベッドで上体を起こした私を、ベッド脇に置かれていたサイドチェアに腰掛けていたルークが向かい合うような位置で髪を撫で直されてるわけだけど。

寝る前にあった、男女で分けるように設置されていた壁が無くなっているようだなと、後は……私はなぜかユージアに抱えられて寝てた。
……うん、それくらいしか分からない!

ていうか、ルーク、手櫛で髪いじるの楽しそうだね?
鼻歌でも歌い出しそうに楽しげに、その優美な顔にふわりと、柔らかな笑みを浮かべている。

そこらの女性より美人さんだからなぁ…いまいち状況が掴めないままではあるのだけど、ルークに上機嫌で髪を手櫛で直されるままにしている。
私としては滅多に見かけないルークの、あまりにも素敵な表情だったからね、それを良い事にぼんやりと見つめていると……。


「おはよう」

「セシリア、大丈夫?」


エルネストにカイルザークにまで、何故か心配そうな顔で覗き込まれてしまった。
大丈夫ですよ?


「おはよう?何かあったにょ?」

「にょ、て……。呪い解けたんじゃなかったの…ぶっ」


エルネストまでレオンハルト王子みたいに、変な音を吹き出して笑っている。

うん、変な噛み方をしたなとは思ったんだけどさ…そこはスルーしてあげようよ?
レオン王子みたいに、ふるふると震えながらの変な我慢のされ方もムカつくけどさ、思いっきり笑われるのもなんだか傷つくわ……。


(……ていうか、やっぱり私の場合は、滑舌が悪いのが呪いの効果だったのかな?)


それにしても、寝起き一番に『大丈夫?』って言われるほどの内容じゃ無い気がするんだよなぁ。
ひとまず意味が分からなくて、小首を傾げていると、エルネストに『覚えていないのか?』と聞かれる。
覚えも何も寝て起きただけじゃんね?


「いや…ええと…」

「……夜泣き、だろうな、あれは。だから覚えていないのだろう」


本当に何を心配されているのかが分からなくて、キョトンとしていると、頭を軽くぽんぽんと摩られると、端正な顔をくしゃりと目を細めて笑っているルーク。
そのまま抱きあげられると、キッチンへと足を向けて歩き出した。


「夜泣き……?」

「ああ、キミは夜中に突然大きな声で半狂乱になって泣き喚いていた」

「はっ…?」

「見えるか……?」


キッチンへと向かい始めていた足をくるりと、ひるがえして私が寝ていたはずのベッドの辺りを指差した。
そこは……飾りカーテンが半分焼け落ちて、壁も天井まで大きく黒く焼けただれていた。


「なに…あれ……?」

「キミが、やったんだ。泣き喚きながら、魔法を…多分その身体での最大火力であろう火の魔法を放った」

「うそ…」

「嘘も何も。その騒ぎで全員が起きていたから、全員が目撃者だ。嘘のつきようも、無い」


そういえば、公爵邸改修工事中に間借りしていた王宮内の離宮屋根も寝ぼけて吹き飛ばしたんだっけ……あれも本当だったのかな?
「まぁこんなもの、すぐに直せるがね」ルークはそう言うと、その言葉が合図だったのか、焼けただれた部分が沈み込むように消えていき、元の綺麗な壁、そして飾りカーテンへと変わっていった。


(……どうやら私は、なんの前触れもなく突然激しく泣き出して、魔法を放っていたらしい?)


しかもあの壁を焼け焦がした火の魔法以外にも、幾つも放っていたと。
記憶に全く残っていないから、自覚が全く無いし、そもそもそんなにうなされて錯乱しなくちゃいけない衝撃的なこと、何かあったっけ?

うぐぐぐ…と唸りそうになったところで、おでこに柔らかいものが押し当てられる感触があり、思考が止まった。
瞬時に頭の中が真っ白に……視界は真っ黒だけどね。
少し俯く姿勢となって、さらさらとルークの漆黒の艶髪がこぼれてくる。


「ふふっ…なんて顔してるんだ」

「…いや、考えてたことが全部飛んでっちゃったよ…」


表情こそ見えないけれど、なんとなく口角が上がっているのは見えて、笑っているんだろうな、ということはわかる。


「キミだってユージアやカイに、同じ事をやってたじゃないか」

「あ、うん。そうなんだけどね」


そうなんだけどさ……なんか、自分がされるのは抵抗あるわ……。
至近距離で見ても、その端正な顔は、私が自信失くしそうなくらいに、頬がめちゃくちゃ柔らかいし、お肌スベスベなんだよね……。


「それに、常識的に・・・・幼児を愛でるのであれば、問題は無いと、キミも言っていたと記憶しているのだが?」

「うう……」


くすくすと楽しそうに笑われてしまっては、どうしようもない。
それをダメと言ってしまったら、ユージアを愛でられなくなってしまうっ!

ちなみに、私がユージアに抱えられていたわけは、夜泣き真っ只中でユージアが抱えると大人しくなるのだけど、ベッドに寝かせた途端に半狂乱になって泣き喚くのが再発してしまい、抱えざるを得なかった。と、言う事らしい。
ごめん、ユージア。

ユージアはその煽りを受けて寝坊中……というか、セシリアわたしが完全に落ち着くまで、1人あやしながらずっと抱っこをしていてくれたのだそうだ。
完全に私が悪い。本当にごめんね。






******






ルークに抱っこされて……道中やたらとぐりぐりうにうにされながらだったけど……キッチンへと到着すると、すでにみんな食事は終えてしまっていて、テーブルには食後のお茶が並べられていた。


『あっ!セシリアおはよう!』


いつのまにやら帰ってきていたのか、フレアがにこにこしながら、私の前にパンと目玉焼き、厚めのベーコンと温野菜のサラダがのせられたプレートが置かれる。


「フレア、おはよう。手際良いわね……」

「そうなのよね……シェフ並に動ける精霊とか……セシリアは、素敵な精霊と契約できて羨ましいわ。私もこんな美人さんで、可愛らしくて綺麗で有能な精霊が欲しいわ……」


フィリー姉様、本心が出まくってますよ!

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