私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

250、朝ご飯を食べよう。

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フレアは一瞬、嬉しそうに目を細めたが、少し困った表情になると首を小さく横に振る。


『いやぁ……お褒めに預かって光栄なんだけど、作ったのは僕じゃないんだよねぇ……』

「もう一人の、黒髪の子だって言いたいんでしょう?片割れなんだからどっちも一緒でしょう?」

『でも……』

「料理は味ももちろんだけど、給仕サービスまでが全て揃っての『食事』なのよ。貴方のその仕事も込みなのだから、ここは素直に喜んどきなさい」


……でも、シェフさせるために契約したわけじゃないからね?!
そう思ったけど、フィリー姉様の言葉に、はにかむと柔らかく笑う。


『はいっ!ありがとうございます』

「……やっぱり、羨ましいわ。セシリア、一人こっちに分けてくれない?」


はぁ。と、小さなため息を吐きながら、フィリー姉様がとんでもない事を言っていた。
分けられないからね?
必死に首をぶんぶんと横に振っていると、私の席に……あれ?ルークが座ってしまった。
抱っこされたままだったので、そのままルークの膝の上に、お姫様抱っこのような横座りにされる。
……えっと、1人で食べれますよ?


「自分で、食べれる…よ?」

「……遠慮しなくて良い、大変だろう?ふふっ…」


まさに満面の笑みといった風で。
端正な顔に浮かぶ、思わずはっと見惚れてしまう美しい笑みで返されてしまった。
あー、うん、色々大変ですね。

なんですかこれは、公開処刑か何かですか?
ヴィンセント兄様は紅茶を片手に持ったまま、こちらをみてポカンと固まってしまっているし、フィリー姉様は「はぁ?何……あれ?」とか言ってるのが聞こえてくるし。

とにかく大丈夫だから!と返したいのに、開きかけた口へ、次から次へと食事が運ばれてくるので、思わず口にした後はどうにも口を開くタイミングすら取れずに……うん、諦めた。
食べるのに徹することにする。
拒否というか反論すら、できそうな雰囲気じゃないし……。


「あれ、前もやってたよなぁ……」

「料理が飛んでたやつ!」


セグシュ兄様が不思議そうな声で証言をして、エルネストが次は何が起こるのか?とでも言いそうな、わくわくとした色を含んだ声で、話始める。


「前も、って……」

「あ、カイは初めてか。凄いよなぁ…あれ。なんであんなに気に入られてるんだろう?」


初めてって…なんの話よっ!?
呆れ声のカイルザークに、レオンハルト王子が不思議そうに返して、以前あった事を軽く説明している。
いや、そんな事、説明しなくて良いからね!?


(完全にこれは公開処刑だ……穴があったら入りたい!とかそう言うレベルじゃないな。むしろ自室に1週間くらい篭りたい!そっとしておいて欲しい!!)


……そんな私の願いとは裏腹に、ルークは相変わらずの上機嫌で、給仕をしてくれている。

時折、その動きに、身体の傾きに、後方で緩く結き上げてある髪の後毛が視界にさらさらとこぼれてきたりするわけですが……それはそれでまた素敵で、うっかり目で追ってしまい…。
はっと視線を戻すと、怪訝そうに覗き込むルークに、花が咲くようにふわりと微笑まれて、見惚れてしまう。

いやいやいや……そうじゃない、今は食事中だ!と自分に言い聞かせて意識を再度食事に戻すのだけど…こぼれる艶髪が、素敵な笑顔が…とエンドレスでよく分からない食事の行動パターンが続いていった。

1人でも食べれるんだけどなぁ。
幼児特有のぽよぽよ腕だからさ、そりゃ可動域が大人とは少し違って、動かしにくい部分も範囲もあるけど、頑張ればなんとかスプーンだってフォークだって、ちゃんと使えるんだよ?

ぐぬぬぬ……。
困ったことに、抱っこは嫌じゃない。
むしろ安心するのかな?なんか落ち着くのよね。

こうやって食べさせてもらうのも、なんだか嬉しい。

これは子供としての感情だろうなぁ……。
幼児ってやたらとくっ付きたがるもんね。だからしょうがない。

だけどさ、ヴィンセント兄様やフィリー姉様のあの反応を見れば、普段のルークとの反応の格差が酷いのだろうことは容易に理解できる。
周囲の空気と反応に、どうにも居た堪れなくなって、とにかく食事を完了させれば、この苦行は終わる!と自身を励ましながら必死に食事を進めていく。






******






「ごちそうさまでした……」


もうお腹いっぱいだよと、伝えると口元をささっと拭かれる。
なかなかに心地が良い中で、手際も良いんだけどさ、良いのだけれどっ!

そろそろ解放して欲しい……。

ふと、顔を上げて周囲を見渡す。
気になったことが一つあった。
シュトレイユ王子の姿を見ていない。


「ルーク、レイ王子は?」

「ああ、キミの兄上が解呪の施術を行った。その休憩中で……無事だ」


私の声にこちらを覗き込んでくるたびに、ふわりと白檀の香りが広がる。
シュトレイユ王子も、呪われてたんだ……。
スッと背筋が寒くなる。

あんな小さな子を呪うだなんて…あ、私も小さいけどさ!
3歳って言ったら可愛い盛りだよ?
しかも、呪った犯人って、シュトレイユ王子のメイドや側近、側仕えって言われる類の人たちなのでしょう?
そんなレイ王子と身近に接していくうちに、情はわかなかったのだろうか?


(しかもあんなに可愛らしい子なのに)


可愛い盛りといえば、活発に動き回る月齢だからね。
魔のイヤイヤ期がきている時期でもあるし、見た目が可愛らしくても、性格が思いっきりクソガキになっちゃう場合があるんだよね。
そんなスレた様子の無い、あの麦の穂のような、ふわっふわの淡い金髪のシュトレイユ王子は、ただひたすらに可愛い存在なのに。

ふわりと周囲の花が一斉に開いたかのように微笑む、素敵な笑顔のシュトレイユ王子。
呪いの事実もだけれど、信頼を寄せていた側仕えの人間達の顔ぶれが急激に変わってしまう事……乗り越えていけると良いなぁ…。


「さて……今日のこれからの予定だが……」


ルークの声に、みんなの視線がこちらに……って、やめてあげてっ!!
結局食事が終了しても、膝から降ろしてはもらえずに今に至ってるわけで、集まる視線がめちゃくちゃ恥ずかしい!
ただ、ここで騒ぐわけにもいかず、大人しくする。
…大人しく、大人しく、我慢我慢。


「まず、闇の眷族達の暴走…いや暴動か?これを食い止めるために、『監獄』へ向かう……。子供達を連れて歩くのはどうかと思うのだが、いくつか手伝ってもらいたいものがあってね」


あれ?まっすぐ帰宅じゃないんだなぁと、ぼんやりと聞く。
そもそもあの『監獄』開かなくなっちゃってるんでしょ?どうやって入ろうとチャレンジするつもりなんだろうね?

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