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はじまりはじまり。小さな冒険?
256、遭遇と追っ手。
しおりを挟む今の王族には…いや、そもそもメアリローサ国内にあって、彼のような『精霊使い』という職が珍しい。
そこから精霊使いと名乗れる『人族』となると、さらに希少となる。
せっかくなのだから、セシリアも良き師に巡り合えるといいのだけど。
彼は精霊との関係性の方が大事だと言ってはいたが、やはり暴走させたままではもったいない気がした。
精霊が使える、という意味ではハンス先生が妥当なのかもしれないが……あくまで彼は王子達の特別講師を引き受けているだけで、本職は魔術師団の技術部の長。
公爵家といえど、国の騎士団の中枢にいる人物を個人講師として招く……というのは無理があるだろう。
……かの精霊使いは番探しの自由気ままな旅の途中だといっていたが、元気にしているのだろうか?
ふと気付くと風が止み、周囲を飲み込んでいた闇の妖精たちの姿もまばらとなってきていた。
視界が大分クリアになってきたところで、父さんはローブを脱ぐとフードを隠しに入れて、マントとして羽織り直す。
「……フードは視界が…苦手だな。クロウディアやヴィーは、フードのままの作業が多いようだが、よくできるな?」
そりゃ作業内容が違うから……。そう口を開こうとしたところで、黙るようにと目配せと問答無用で口元をおさえられる。
そのまま壁に押しつけられ、身動きが取れないでいると、直後、大通りを青い二足歩行のトカゲに騎乗した騎士の隊列が土埃を立てて通り過ぎていった。
「これは凄いな!……教会の緊急時には、王命でしか動かせないはずの竜騎まで出せるようだ」
「……っ!今のが、竜騎…?」
「そうだ、竜といっても低級すぎて、ほぼトカゲの巨大版みたいなものだが」
私たちが身を潜めている脇道を越えて、大通りの広場のようになっている方角から怒声が響く。
『宰相を王城へ入れるな!近くに潜んでいるはずだ!見つけ次第確保しろ!』
竜騎とはつまり、竜騎士団というやつだ。
機動力に優れ、移動は馬の4倍の速さ、そして戦闘時も馬のように怒号や大きな音、急な地形の変化にも怯むことなく、共に戦ってくれる。
低級とはいえ竜の末席に位置するだけあって、爪も装甲も硬い。
良いとこ尽くしで実戦はとても心強いのだが、いくつか問題があって……。
竜の絶対数が少ない。乗せる相手を選ぶ。
なので、騎士団内でも騎乗できる人員は少なく、竜の凶暴性からも過剰戦力となることが多く、長距離遠征や緊急時以外では基本的には運用されないはずの部隊となっていた。
「やっぱり、つけられてたかー」
「と…父さん、逃げないと……!」
父さんが狙いであることに気づき、慌てている私とは対照的に、なぜか楽しそうに肩を鳴らし、腕を伸ばし……運動前のウォーミングアップを始めている父さん。
「それがそうでもないんだ。竜騎士団は速いだけあって、動きは良いが視野がすこぶる狭くてね……鼻も悪いし。真正面に立たない限りは、バレないから。大丈夫」
にやりと悪戯っぽく笑って見せる。
まぁ確かに、フードをかぶっていない状態の父さんを、通りの影に隠れていたとはいえ、先ほどは思いっきり見落としていたようだし。
「さて……本題だ。見ての通り、教会が焦った挙句に、勝手に竜騎士団を動かすくらいには反乱は鎮まった。首謀者もほとんどの者を確保する事が出来ている。ただ、念のためということもある。ヴィーは王子達の護衛をしながら一晩あの避難所で過ごしてから帰還してもらう事になっている……それと。顔合わせがまだだったが、公爵家新しい家族……弟達も一緒だ。仲良くしてやってくれ」
「弟…達っ!?」
この緊急時に冗談?!
びくりとして、不自然に声が裏返りかける。
それに対し父さんは……私の反応を見て、楽しむようにニヤリと笑う。
「……セシリアが教会に拐われたのは聞いてるな?その時に一緒に助けた子と、もう一人。どちらも獣人で、身寄りがない。そして、公爵家と関わってしまった以上、今の孤児院には預けることもできない……それと『籠』の生き証人でもある」
とても良い子達だから。
なによりセシーが一緒にいると楽しそうだから。
何も問題はないよ。そう笑う父さん。
「それと、セシーには専属執事がつく事になる。と、話しただろ?その子も一緒だ。本当はその子も公爵家へ一緒に引き取るつもりだったんだが……」
「……いくら公爵家と言ったって、こんな子沢山じゃ利点がないから、断られたんでしょ」
思わずジト目になり、半ば呆れ口調で父さんを見る。
『子が女子ばかりで跡取りがいない』とか『子に恵まれなかった』とか。
そんな理由とも全く縁のない、男女混合で実子が6人もいる上に、さらに養子で子を求める必要がどこにあるのかと。思わずため息まで出てしまう。
すると父さんは『そうじゃないんだよ』と言わんばかりに首を横に振る。
「いやぁ……なんと辺境伯の…ハンスのご子息だった。しかもセシリアと奴隷契約を交わしている」
「……はっ?奴隷っ!?」
「ああ、セシリアの奴隷。という事になっている」
「3歳児に何てことをさせてるんですかっ……情操教育とか…考えないんですか?」
あまりに突拍子のない話を聞いてしまい、思わず声を荒げてしまう。
確かにメアリローサには奴隷が存在する。
存在はするが、しっかりと国の法で守って運用されており、奴隷の命を危険に晒すような扱いはできないことになっている。
それでも奴隷は奴隷だ。
「待て待て…それは誤解だよ。教会関連のごたごたでね、一時的に施したものだったのだが、本人が外したがらなくて……それ以上にセシーに懐いてるんだ」
「父さん……ちょっと情報の整理が追いつかない…」
そもそも施すことをこの人は許可してたのか……。
国で管理しているのだから、そうか、子供たちだけで勝手に契約を結べるものではなかったと今更ながら気づき、そして……でも、奴隷契約を外したがらないって何?どういうこと?
その上でセシリアに懐いているというのは……?
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本当にどういうことだ???
「ちょっと変わった子でね、セシリアと同じくらいの歳の子なんだが、セグシュくらいの背格好に変化する。……まぁどんなに背伸びしてても中身はセシリアと変わらないから、言動にびっくりするかもしれないが。優しくしてやってくれ」
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